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サルノテ  作者: アリアリア
第三冊 『みーこちゃんの物語』
59/95

赤い箱


「それ、なーに?」


 真っ赤な箱と真っ白な箱、トラルは2つの箱を持って現れて、みーこ達の向かい側に置きました。なんだかわからないけれど、ウキウキしてるトラルを見ていると私も嬉しくなってきて、楽しく楽しくなりました。


「これはね、ご飯だよ。片方には美味しいものを、もう片方にも美味しいものを。題して『ロシアン昼ごはん』! みーこちゃんはどっちがいい?」

「えっと。みーこは……」

「ちょっと待ちなさい、トラル。これ、どちらが『はずれ』何ですか?」

「外れなんてないさ、どちらも「お昼ごはん」なんだから」

「そうですか、ご飯なんですか。では質問を変えますね。どちらを私に食べて欲しいですか?」

「それなら白だね!」

「では、私は白い方を食べますね。みーこちゃんは赤い方で構いませんか?」

「うん、みーこは赤でいいよ!」

「ありがとうございます。良い子ですね、みーこちゃんは」

「僕もそれで構わないよ!」

「貴方は少しは構いなさい」

「ん、構ってほしいの? まふゆんまふゆん、いい子いい子」

「そっちじゃありません。やめてください、やめてください。……やめてって言ってるでしょ!」

「どうしたの、まふゆん、そんなに怒って……。辛いことがあるなら、僕の胸を貸してあげよう!」

「絶対に、何があっても借りません。だからじりじり寄らないでッ!」


 お姉ちゃんの頭を抱きしめていい子いい子。振り払って立ち上がるのはお姉ちゃん、お顔が真っ赤なお姉ちゃん。トラルはとっても楽しそうに、両手を広げてじりじりと。お姉ちゃんは両手で自分の肩をがっしり、じりじり逃げるよう。ゆっくりゆっくり追いかけっこで、二人はとっても仲良しさん。お姉ちゃんがキャーキャーキャーキャー、トラルはクスクス笑いで、とってもとっても仲良しさん。私も一緒に加わって三人仲良し、仲良しさん! いいないいな、楽しいなぁ。私はお姉ちゃんとお兄ちゃんがほしいと思っちゃいました。


「さてと、追いかけっこも楽しいけれど、せっかくの料理が冷めちゃうね。真冬は白の箱の前に、みーこちゃんは赤の箱だ。……ああ、みーこちゃんには椅子が少し高かったか。じゃあ、僕の膝の上に座って食べようか」

「うん、いいよ!」

「……まふゆんも僕の膝の上に座って食べようか」

「望んだ反応じゃないからって、私に振らないでもらえませんか、あと寝言は寝てから言ってください」

「うん、だから真冬は大好きだよ!」

「だから貴方が嫌いなんです」


 お姉ちゃんが座ると同時に、トラルは私を抱えて持ち上げました。お姉ちゃんは白の箱、トラルは赤い箱の前、私はトラルの膝の上。おねえちゃんと比べると本ちょっぴりお膝が硬くって、お父さんのお膝の上はこんな感じなのかなぁって思いました。


「よーし、それじゃあ開けるよ、みーこちゃん。驚く準備はできてるかな?」

「出来てるよ!」

「それではご一緒にお姫様。いち、にぃ……」

「「さん!」」


 箱を持ち上げると真っ白な煙が飛び出して、すっごいすっごい、姿を表しました。見ただけでカリカリしてそうなエビフライ、真っ赤でチュルチュル美味しいスパゲティ、花丸な目玉焼きさんが乗ったジュージューハンバーグ、ケチャップさんで染め上げられたケチャップライス、タコさんウインナーの三兄弟。お皿の上の夢の国、お子様ランチが現れました!


「トラル、すっっごい!」

「僕は『魔法使い』だからねぇ。どんなことでも出来るんだ」

「トラルはお料理が上手な『魔法使い』ね!」

「……そこかぁ。ま、いいんだけどね。そう僕は料理上手な『魔法使い』だ!」

「トラル、ひき肉やエビなんてありましたっけ?」

「なかったよ」

「……そうですか」


 なんだかおねえちゃんは私のご飯と、白い箱を見つめながら、梅干さんを食べたみたいな顔をしています。私は沢山お勉強しているので知ってます。こういうのって渋い顔って言うんだよね。こんなに美味しそうなのにどうしてそんな顔をしているんだろう? 私は全然わかりません。


「さて、次はまふゆんだ。安心して、ちゃんとおいしく食べられるものだから!」

「目をキラキラさせていっても説得力がないんですよ……」

「大丈夫だよ。僕は決して嘘はつかない。おいしく食べられるものだよ」

「嘘をつかないってトラルはよくいいますけど、嘘をつかなければ何をしてもいいってわけではないんですよ?」

「……そうなの?」

「……私、食べなくてもいいですか」

「ダメだよまふゆん、好き嫌いは。覚悟を決めて開けるんだ。それともみーこちゃんと交換する? こんなに嬉しそうにお子様ランチを見つめているみーこちゃんと交換する?」

「それはしませんよ……」

「じゃあ、勇気を出して、ご一緒に、お~ぷんせさみ~(開けゴマ)!」


 お姉ちゃんはすっごく嫌そうな顔をしながら、白い箱の上の部分を持ち上げました。まっしろで暖かい煙と、とってもとってもいい匂いきっと美味しいご飯あんだろうなぁって思いました。現れたのはやっぱり思った通りの美味しいご飯。お姉ちゃんもきっと嬉しそうにしてると思って見てみると、お姉ちゃんは渋い顔をしています。私はやっぱり何故だかわかりませんでした。


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