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サルノテ  作者: アリアリア
第三冊 『みーこちゃんの物語』
56/95

月と太陽

 「よし、お菓子ばかりでお腹が膨れちゃ大変だし、今から皆でご飯にしよう。ちゃんと食べないと大きくなれなくなっちゃうからね。みーこちゃんは大きくなりたい?」

「大きくなりたい!」

「うんうん、そうだよね。みーこちゃんならきっと可愛くて素敵な女の子になれるよ」

「ほんと!? みーこ素敵なお姉さんになれる?」

「なれるなれるよ。もしも『大きくなれたら』きっと可愛くて優しい素敵なお姉さんでお姫様になれるよ」

「やたー!」

「…………」

「どうしたのまふゆん、元気が無いね! ……ああ、君も素敵な女の子だよ。マイリトルプリンセス、僕の小さなお姫様ぁ!」

「手を広げないで、近づかないで、触れないでください、抱きつくなぁ!」


 トラルがお姉ちゃんに抱きついて、お姉ちゃんは子猫みたいに逆立ちました。お姉ちゃんがジタバタしようと動くよりもずーとずっと、トラルは早く離れました。お姉ちゃんのお顔は真っ赤で、とっても怒ってるんだなって私はふむふむと思いました。トラルはヨヨヨとめそめそと、床にペタンと座り込んで言いました。


「ううぅ……、まふゆんがいじめるよ、ひどいと思わないみーこちゃん?」

「ひどいの?」

「ひどいの!」

「……トラルをいじめちゃメーよ、おねえちゃん」

「え、私がいじめた側ですか?」

「いじめた側だよ、お姉ちゃん!」  

「もう喋らないでください、バカトラル」


 それを最後にむすーっと、お姉ちゃんはしています。やっぱりほっぺたは真っ赤っ赤で怒ってるみたいに見えるけど、不思議と怖くはありません。なんでなのかはわかりません。さらさら真っ白なお姉ちゃん。赤くなっても真っ白で。だから私は思いました。きっとお姉ちゃんは雪の国のお姫様に違いないって。私の髪の毛はおねえちゃんと違って真っ黒け。ママは私に言いました。女の子は皆お姫様なんだって。なら、私はどこの国のお姫様になれるんだろう?


「う~ん、真冬が雪の国のお姫様なら、みーこちゃんは太陽の国のお姫様だとぼくは思うよ?」


 いつの間にか床から立ち上がったトラルが私にそう言いました。私は全くわかりません。なんで太陽なんだろう? 太陽さんはいつもキラキラサンサンと、真っ赤で真っ白に輝いてるのに。真っ黒とぜんぜん違うと思う。だからトラルの言うことが全くわかりませんでした。


「……真っ黒なのに?」

「真っ黒だからだよ。黒は太陽さんの陽の光をたくさんたくさん受け止めてあげられる色なんだ。真っ白だったり、金色だったりすると、陽の光は弾かれて、たいようさんは悲しい思いをしてしまうけれど、真っ黒なら、受け止められる。するとね、太陽さんも嬉しくなって、もっともっと輝ける! 雲1つない青空で遊んでいたら、髪がアチチってなるのは、嬉しくなった太陽さんが頑張ってるからなんだよ?」

「そうなの?」

「そうなんだ!」


 トラルのお話に私はびっくりしました。だって今まで聞いたことがありません。真っ黒な私の髪を触りながら、太陽さんは喜んでくれてたのかなって考えます。だったらとっても嬉しいな。いつもぽかぽか暖かくて、優しい太陽さんは大好きだから。

 ……なら金色のトラルはどこの国なんだろう? 陽の光を反射してキラキラしているトラルはどこの国の王子様なんだろう? とっても素敵なことを教えてくれたトラルに、素敵な何かを返してあげたい。う~んとう~んと考えて、ずっと前ママと一緒に見たテレビをぱぁッと浮かんで、これだと私は思いました!


「みーこが太陽の国のお姫様なら、トラルは月の国の王子様ね!」

「月の国?」

「うん、そーよ! お月様はね、太陽さんの光を受けてあんなに綺麗に輝いてるの。トラルの金色の髪みたいに。だからトラルは素敵な素敵なお月様。お月様の国の王子様よ!」


 揺れる金色は月の色、さらさらしてて冷たそうで、それでもとっても暖かいの。陽の光とは違って、真っ暗な道を垂らしてくれて、見ていてくれるの。真っ暗な夜でも転ばないようにって。ママに会わせてくれるトラルは、私にとってのお月様。優しい優しいお月様! にっこり笑う私を見つめながら、トラルはとっても驚いた顔をして、その後悲しいのかな? 怒ってるのかな? 眉毛を一瞬ギュッと寄せて、その後お月様みたいに微笑みました。


「……君は『大きくなれたら』本当に素敵な女の子になるんだろうねぇ、残念だ」

「みーこが素敵な女の子になったら残念なの?」

「い~や、残念なのは今日キミに出会ったことと、君を助けてあげられることだ」

「……?」

「だって……、大きなったら、月の国に招待してあげられたかもしれないからね!」

「月の国!?」

「そうだよ、月の国に行くには大きくなって5人の男の人に可愛いねって言われないといけないんだ。だから本当に惜しかった。こんなに素敵な女の子なのに。」

「なら、大きくなったら連れてってくれるの?」

「その時、僕にあってくれるなら出来るかもしれないなぁ」

「なら、ママと一緒に遊びに来るね、大きくなってからだけじゃなくて、何度も何度も何度でも!」

「それはほんとにうれしいな、よし今日はいい日だ。腕によりをかけて美味しいご飯を作ってあげる」

「トラル、お料理できるの!」

「僕は王子様で魔法使いだからね、なんだって出来るんだ」

「トラルはすごいね!」

「そうだよ、僕はすごいんだ」


 手と手を結んで仲良く仲良く、右のお手手はトラルとしっかりと。左手のお手手はおねえちゃんに伸ばします。お姉ちゃんはなんだか怖い顔をしていました。真っ赤だった顔はそう、真っ白に染まってしまうくらいに。それでも怖くはありません。むしろとっても優しく感じました。なぜだか私はわかりませんでした。伸ばした手を優しくそっと繋いでくれて、とってもとっても嬉しいです。


 ずーとずっと欲しかったんだ、優しくて綺麗なお姉ちゃん!だから繋いだ手とお姉ちゃんを見てニッコリと。笑い返してはくれません。それでも優しく優しく、ほんのり強く、握ってくれた手のひらはとってもとっても暖かくて私はムフフと笑っちゃいました。今日は良いことばっかりです。王子様とお姉ちゃんと出会えました。美味しいご飯も楽しみです。私はとても幸せでした。

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