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サルノテ  作者: アリアリア
第三冊 『みーこちゃんの物語』
53/95

始まりは『王子様』

 頑張らないと頑張らないと、ウサギさんのリュックにお菓子とジュースを詰め込んで、元気いっぱい飛び出そう。ママを探して飛び出そう! まぁままぁま、私のまぁま。「待っててね」って言ってから、もう7回もお月様が登ったよ。美味しいカレーも凍ったシチューもヒヤヒヤご飯も全部ぜーんぶ無くなっちゃった。だからママを探しに行ってきます。ママのを見つけに行ってきます。大好きな大好きな私のママ、早く会えると嬉しいな!


 テクテクテク、ウサギさんリュックとお外を歩く、すれ違ったら元気に挨拶。おはようございます、こんにちは。みんな笑顔でお返事くれて、それがとっても嬉しくて、やっぱり挨拶って大事だなって私は改めて思いました。お空は青に染まってサンサンと、地面は真っ黒でアチチなアスファルト! 紫色の小さなお花、ほんの少しの隙間から、元気に元気にこんにちは! 青と黒の色紙に、紫色のクレヨンで、世界は神様の落書き帳。全部が綺麗に輝いて、お日様と同じくらいに輝いて、だからいつもは気づかない、何かに気づけたんだと思いました。ほんのり香る甘い甘いお砂糖さん。どうやら右の小道から漂うようです。その香りを嗅いだ途端に、お腹がくうくうなりました。香りはどんどん強くなって、お腹はどんどんくうくう鳴って鳴って、はちみつ色に染まっていきます。ケーキ屋さんでもあるのかなぁ? 


 私はくまさん小銭入れを取り出して、カチッと開けて見てみました。中身はキラキラ五百円、茶色の十円と銀色1円。無駄遣いはいけません。でもお腹が空いてるとお母さんを探せません。ちゃんと夜寝る前に歯磨きしたら、ケーキを食べても怒られないよね? うん、きっと怒られない! 安心して、美味しいケーキを探しましょう。匂いを辿って小道を右へ左へ。曲がって曲がってくるっと回ると、甘い香りの立ち込める不思議なお家がありました。すっごく大きなお家です。ケーキ屋さんには見えません。ケーキもどこにもありません。一体どこから来ているのかな、私は香りの元が気になって、だから自分自身にシーってして、ゆっくりそろりとお庭に入って行きました。


 くんくんしながらお庭を回って、やっと私は気付きました。どうやらこの木から甘い匂いが溢れているみたい。甘い甘い蜂蜜の香り。こんな香りがするのならこの木はお砂糖さんで出来ているのかな? ペロッとその木を舐めてみて、苦くてぺぺぺっと吐き出しました。お砂糖さんでは出来ていなかったみたいです。どちらかと言うとピーマンです。ベーベーしている私の後ろで、クスクス笑いが聞こえてきました。一体誰が笑っているのでしょう?びっくりした私は慌てて後ろを振り向いて……。


「小さな小さなお姫様。こんな所でどうしたの?」


 お星様みたいな笑顔とともに、金色の髪は太陽みたいで、青い瞳はお月様。それが『魔法使い』で『王子様』で『怪物』のトラルと私の最初で最後の出会いでした。



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