変わらない1日
チュンチュンチュン、窓から暖かい日差しが降り注ぐ、
「ふぁ……」
頭がグラグラして働かない、外が明るい、帰った時には日が沈んでいたなら今は朝なんだろうか、クマのヘンゼルは元の位置に、下着のままだったはずなのにパジャマに着せ替えられている、お母さんのしわざだろう。それなら起こしてくれればよかったのに、晩ごはんを食べそこねてしまったじゃないか。
時計を見ると朝6時起きる時間には速いけどたまにはこういう時間に起きるのもいいよね!
「ああ、でもやっと……♪」
今日から私一人だけ、全然似てなくて優秀な妹はもういない、トラルにはほんとに感謝しないと、貴方のおかげで私の願いは叶ったと、机の上に転がっているスイッチはもういらないし、今日にも返しに行くとしよう。
パジャマを脱いで、洋服棚の三番目、お気に入りの靴下を履き、いつもの場所にかけてある制服に手を伸ばす、スカートは今日はちょっと短くしよう、
たまにはいいよね! こういうのも♪ シャツのボタンを上から順番に一つ一つ、赤いリボンもしっかりと、これでいつもの私の完成?
スカートが短い分だけおめかしした私の完成!
足取りも軽やかに階段を降りて廊下を進んで、リビングの扉を開けて、世界はバラ色、幸せ色だ♪ 私は誰より幸せだ。
「あ、おはようお姉ちゃん!」
────美味しそうに朝ごはんを食べている死んだ妹と会うまでは。
「なんッッ、でッッッ!?!?」
「ん、どうしたの、お姉ちゃん……?」
ありえないありえないありえないありえない、死んだ死んだ死んだはずだ、だって見ただって見た、だって確かに見たんだもの!!!!
辺りに血を吹き散らして、グシャッと潰れて真っ赤に染まって、可愛い顔は潰れた蛙みたいにグシャグシャで!!!
あんなに速かった足だって、綺麗に飛んでネジ曲がっていたんだもの!!
なんでなんで、何でどうして、なんで私は一人になってないの!!
驚愕に目を見開き、妹に詰め寄ろうとしたその瞬間
「あら、起きてきたの、なら早くご飯を食べちゃいなさい、いつも夕陽ちゃんみたいに早く起きてくれれば助かるんだけど」
お母さんの声を聞いて我に返った、私は今何をしようとした? 掴みかかって「何で死んでないのよ」と声でも荒げるつもりだろうか。
妹は今生きている、そんなことを言った日には私の居場所こそ無くなっちゃう、私こそ一人になってしまう。
「はは、夕陽は毎朝、練習を本当に偉いよ。それで成績もちゃんと維持してるんだから。お姉ちゃんも見習いなさい」
お父さんが新聞を見ながら、なにか言っている、聞き飽きるほど聞いたセリフだろう、そんなことは今はどうでもいい、なんで、どうして、だってだって……。
受け入れられない現実はそのままにいつもの席につく、朝のニュースは普段見ているものよりずっと早い時間のものだ、とにかく整理する時間がほしい、そんな私の心情を無視してニュースは流れる、ニュースのおじさんが姿を消して、お姉さんが今日の天気を語り始め、語り始め……? え、今日?
今日今日今日、今なんて言ったこの女、今日は何月何日だといった!?違うよね、違うよね、だってそんなのありえない!!!
「お父さん、今日って何日だったっけ……?」
「ん、今日は────」
言った、聞こえた、耳に入った、だから私は飛び出した、玄関を出る直前、ちらりと階段が目に入り、スイッチのことを思い出す、勢いのままに階段を駆け上がり、ボタンをひっつかんで飛び出した。
制服だからととっさにはいた革靴が思いの外走りにくくて腹立たしい、それでも駆ける駆ける駆ける、昨日のように軽やかに、今日のように暗い気持ちで、私はただ、ただただ走る。
トラルは一体何をした!!それだけを胸にいだいて。
四十通りを四度めぐり、七番街を逆向きに、九つ通りを三度駆けて、一三番目の角を曲がる。昨日と変わらない庭を突っ切ってドアを壊さんばかりに殴りつける、都合4回これでいいはずだ、だから早くドアを開けろ!!
一向に待ってもドアは開かない、痺れを切らした私はドアをひねり開け放つ!! するとそこには────