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サルノテ  作者: アリアリア
第二冊小冊子 『榛名ちゃんの恋物語』 
30/95

榛名ちゃんの恋物語


授業は終わり放課後へ、いつもの様にさあ、行こう。今日は普段通りの一日で、私にとっては特別な日、いつもと同じで同じじゃない日。


「榛名、頑張ってね!」

「うん、ありがとう!」


 とっても仲良しクラスメイト、私の大切なお友達、ずっとずっとちょっとずつ、私の相談を聞いてくれた貴方には本当に感謝しています。自分でもわからなかった自分のこと、無自覚だった自分のことを、貴方は気づかせてくれた。私の大切なお友達、優香ゆうかちゃん、ありがとう。貴方と友達になれてよかった!


 教室から廊下へと、ギイと響く私の足元、いつもと同じで普段は全く気にしない、木製独特のそんな音。ほんのり香る木の香り一歩踏み出すごとにそう、漂う漂う木の香り、気のせいなのかな? きっとそう、だって普段は思わないもの、でも今日は違う、特別な日。いつもどおりで違ってるそんなそんな特別な日。


 廊下を進み、木製階段をゆっくりゆっくり踏みしめながら、一歩一歩降りていく、中央がすり減ったそんな階段が愛おしい。心なしかみずみずしく、太陽の光は燦々と、いつもと同じ光景なのにいつもよりずっと素敵に見えてしまう。


 半分降りて折り返し、降りる前に立ち止まり、大きな大きな姿見に全身を映して最終チェック! 気づいてくれるかな、気づかないかな、気づかなかったらちょっと嫌だな。今日はいつもの私と違って欲しい、ほんのちょっと、ほんの少し、いつもより可愛い私で居たい。


 髪型は大丈夫? 制服は変に曲がってたりしないだろうか、少し前に顔を突き出して、鏡でしっかり確認中。そのまま軽く一回転、うん、制服もちゃんと綺麗で変じゃない! これならきっと大丈夫! これならきっと大丈夫? どうだろうどうだろう、でも大丈夫と信じて進もう。


 最後に笑顔の練習を、ニコっと笑ってキメぽー……ずは恥ずかしいのでしないけど、うん、可愛いよね、可愛くない? 彼はどう思うんだろう、彼はどう思っているんだろう? 今、気にしても始まらないけど、それでもそれでも気になっちゃう。でもでも勇気を出さないと、今日だと決めたのは私なんだから。


 大きな鏡を後にして、階段の続きをゆっくりゆっくり、最後の一歩は一段飛ばしで、怖いと思う、そんな心を置き去りに。着地と同時に右向きへ、まっすぐまっすぐ進んでいくと、いつもの図書室がそこにある、最後に一度深呼吸、大丈夫かなんてわからない、うまくいくなんてわからない、それでも一歩踏み出して、私の答えを見つけよう。


 ガラッと、扉を開いたその先に、いつもの場所にいつもの彼がいつもの顔で勉強中、ゆっくりゆっくり近づいて、そしていつものとおりに私に気づいて目があって、たったそれだけのことでそう、私の心臓は早鐘のよう。


 ドクンドクンからドクドクへ、更に鼓動は加速して、体が跳ねているみたい。それでもなんでもないように、私はいつもの席で椅子を引いて、いつもの様に座ります。少しぎこちなかったかな、大丈夫だよね? 大丈夫!


 カリカリカリカリ、シャーペンの音、一段落まで一休み、時間にして5分くらい、私の心臓は加速中、最後の数式を書き終えて、ゆっくり私を見つめる彼、いつもと変わらないそんな彼、とっても特別なそんな彼。


「勉強好きだね、楽しいの?」

「楽しくはないけど必要だからな。ん、その髪留め……」


 気づいた気づいた、気づいてくれた。そうですそうですそうなのです、今日の私はちょっと違う、今日はとっても大事な日だから特別な髪留めをつけてきた。先月半ばの誕生日、貴方がくれた猫さん髪留め、嬉しくて嬉しくて宝物で、大事にしまってつけられなくて、だからこそ今日はつけてみた。もらった時は簡単に、髪留めの位置に当てただけ。


 ちゃんとつけたのは今日が初めて、ちゃんと見せたのは今日が初めて、どうかなどうかなどうかなぁ、似合ってるかな、似合わないかな、とにかく可愛いと思って欲しい。


「俺が上げたやつじゃないか、ずっとつけてなかったから気に入らなかったのかと思ってた」

「そ、そんなことないよ!」

「そうか、それなら良かった。うん、似合ってる」


 なんでもないことのようにたった一言、嬉しそうに言ってくれたその一言。それが何より嬉しくて、私の鼓動は一週回ってゆっくりと、肩の力も抜けちゃって、こわばった体も緊張も、全部が全部溶けちゃった。だから尚更、強く強く、貴方のことを強く強く、私の大切な大切な、一番大切な言葉を伝えよう。


「ねぇ、海斗、聞いてくれる?」

「なんだ、相談事か?」

「うん、そんなところかな、えっとね、海斗。私ね……」


 大事な大事な私の言葉、怖くもあるし、不安もあるし、どうなるのかさえわからない。それでも伝えたい私の言葉、世界を変える魔法の言葉、私にできる最高の笑顔とともに、私が貴方が大好きです……って。

























































「うん、感動的だね、素敵だね、甘酸っぱいね、僕は好きだよ、こういうの。 だから、晴明くんのお願いをちゃんと叶えてあげないと!」



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