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サルノテ  作者: アリアリア
第二冊小冊子 『榛名ちゃんの恋物語』 
27/95

いつか終わる今

「ねぇ、海斗はどうして勉強するの?」

「目標があるからだよ」

「へんしゅうさん?」

「……そうだよ」



 あ、私にはわかります、今、海斗は嘘をつきました。わっかりやすい嘘をつきました。海斗はウソを付くのが下手です、それはもう、ド下手です。口ごもるし、スラスラ言葉は出なくなるし、挙動もちょっとおかしくなります、初めてあった人にさえ嘘がバレてしまうくらい。


 それは海斗の良いところだし、海斗も自覚はあるはずだ。なのに嘘をついたということはどうしてもいいたくないということ、だから私の選択肢は二つ、海斗の嘘に乗っかって騙されてあげるか、うそをつくなー、とガオーとなって聞き出すか。簡単な選択、単純な二択、その先に続く道がどう変わるのかも知らずにです。私は海斗に、微妙に僅かに非難の視線と言葉を送りました。


「海斗のうそつき~……」

「嘘はついてないよ」

「うそつきうそつき~!」

「…………」


 呆れ顔をされました。でも、気になるものは気になるのです。夢を追いかけるのなら私だって理解できる、でもそれが違ったら彼はなんのために頑張っているんだろう? 知らないことは怖くない、教えてもらえないのも気にしない、でも『わからない』のは少し怖い。


 あと二年もしないうちに、離れ離れになってしまう。そうしたら数えるほどしか会えなくなってしまうかも。もしかしたら会いたいとすら思わなくなってしまうかも。だからせめてその日まで私に理解できる貴方でいて欲しい、本人たちには絶対絶対言えないけれど、わがままだって思うけど、私はどうしてもそう願う。


 ああ、だんだん悲しくなってきてしまった。嫌だな嫌だな、いやだなぁ、この学生生活がずっと終わらなければいいのに。


「どうしてもだめ?」

「……なんでそんなに知りたがるんだ」

「だって、なんか寂しいもん」


 うん、そうだ、私は寂しいのだ。こうやって何気ない日々は、いつか必ず終わってしまう、それが何より寂しいのだ。だから知りたいと思った。親友が前を目指す、理由が何かあるのならそれを知りたいと思ったのです。もしかしたらなにか助けになるかもしれないから。


 私は晴明みたいに何でもできるわけじゃないし、海斗みたいに頑張り屋さんでもないけれど。そんな私でも友達のためにできることは、きっとあると思うから。悩み事を聞いてあげたり、その背中をほんの少しでも楽にしてあげたり。


 友人だから、幼なじみだからこそできることはあるはずだ。でも、これで断られたら諦めよう。流石にこれ以上はしつこいし、何より何より、変にこじれてしまったら、そっちのほうがずっと寂しい。


 う~ん、断られたらどう話題を変えようか、あれかな、『晴明に彼女を作ろう計画』の続きでも話そうか、以前にバレて、しばらく口も利いてもらえないほど怒らせちゃって、もうやめようと海斗と封印した禁断のあの計画を。でも晴明も悪いよね、なんで彼女作らないんだろう、前に晴明に聞いたら「何でだと思う?」と笑顔で返された。それが分かったら苦労しないのに、晴明の理想は高過ぎるんじゃないかなと私は思う。


 あんなに可愛い後輩に、あんなに綺麗な先輩に、告白だってされたのに、何の躊躇いもなく振っちゃうなんてもったいない。私が男だったら付き合ってる、多分二秒で速攻で! よし、この話題にしよう。きっと海斗も乗ってくれるはず! うん、なんだか楽しくなってきた! 


 そんな私に気づいているのかいないのか、海斗はため息混じりにこう言った。


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