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サルノテ  作者: アリアリア
第一冊 『朝陽ちゃんの物語』
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少女の願い

「さてと、願いを叶える前にちゃんと説明しないとね、君どこまで噂を信じてるの?」

「……半信半疑」

「うん、全然信じてないね、そのダメで元々感、僕は好きだよ」


 願いが叶う館なんてそうそう簡単には信じられない、大体どうやって願いを叶えるというのだろう。


「ま、信じてもらえなくても別に構わないからいいんだけど、それじゃあ、叶うと仮定して何か聞きたいことはある?

 僕は嘘だけはつかないよ?」

「それじゃあ……」

「回りにいる人間は死なないよ、ちゃんと妹さんだけが死ぬ、パパさんママさんも一緒に……、とかそういうのはないから安心して。

 あ、妹さんを殺した対価に君の命をとかそういうのもないから、今時流行らないよね、そういうの。

 他には警察に捕まったり法的に裁かれたり、そういうのもノープロブレム、問題ナッシング!

 てか、君喋るの遅いね、先に答えちゃったけどこれでいい? 他に聞きたいことはあるかい、今思ってたことは全部答えたけど」


 薄気味悪さ以前にムカついてきた。


「なんかムカつかせちゃったみたいだね、いやー僕の悪い癖でさぁ、タイムイズマネー、時は金なり、お金なんてかけらもいらないけど

 長々と時間をかけるのって人生の浪費だよね、僕は出来れば今みたいに娯楽小説もどきと触れ合いながらゴロゴロしながら過ごしたいんだ。

 なので、ハイこれ」


そう言ってトラルは私に何かを投げてきた、とっさに手に取て見ると

それは四角い箱の上に赤いボタンが一つだけ、どこからどう見ても言い訳しようがないほど明確な機能性をもった物体だった。


「スイッチ……?」

「そうそう、名付けるならヒトコロスイッチ? 今テキトーにつけたからあれだけど、別にいいよね、センス悪くても僕が使うわけじゃないし」


 こんなものを渡されて一体どうしろと言うんだろう、やはりガセだったのだろうか。


「ほらすぐ疑う、全く信心が足りないね、信じる者は掬われる!

 ほらほら、一回騙されたと思ってさ、持って帰ってポチッと押して、結果を見つめてグッナイフィーバー、楽しんじゃいな!

 この屋敷な名前の通り、猿の手ってる未来が待ってる!」


「これで、殺せるの……?」


「うん、死ぬよ、君の望み通りにね、罪に問われたくないし、自分で殺す勇気もない、これなら簡単スイッチひとつで、妹さんはデッドエンド!

 どこぞの発射スイッチと違って数十万人とか殺せないけど、妹さん専用だしいいでしょ?

 あ、お代とかいらないから気軽に持って帰っていいよ、まぁ、噂通りに君が一番望まない形で願いは叶っちゃうんだけどね」


 トラルはここぞとばかりに笑う、私が望まない形、あの妹だけ死んでそれでも望まないような結末……?


「そんなのあるわけないじゃない」

「うん、そう応える人って僕は大好きだよ♪」


 トラルの言葉が終わるとトントンと、部屋に扉をノックする音が響き、トラルが応える前にガラッと引き戸を開いた。

現れたのは先程の赤いドレスの少女である。先ほどと変わらず不機嫌そうに眉を寄せ、手にはトレーを持っている


「あ~、返事も待たずに部屋に入っちゃいけないんだ!」

「知ってますよ、それよりも貴方と貴方のお客様に敬意を払う必要もないなと思ったんです」

「……相変わらずナチュラルにディスってくるね、君のそういうところ僕は好きだよ」

「どうせそれも嘘でしょう……?」

「うんそうだよ! ああ、流石だね、よくぞ僕の気持ちを見破った! そういうところも僕は好きだよ、ラブリープリティー真冬♪」


 ドレスの少女は真冬真冬と騒ぐトラルを無視して、トレーからカップを二つ私とトラルの前においてより一層不機嫌そうに出て行った。

 必要以上の力を込められ、ドンと鳴り響く引き戸を残して。


「さて、真冬が入れてくれたお茶でも飲もうか、綺麗なオレンジ色にとってもいい香りだろう、金木犀のブレンドティーなんだ!」

「確かにいい匂い……」


 ゆらゆらと湯気に揺られて独特な甘い匂いが鼻をくすぐる、庭での暴力的なまでの香り違って優しく包み込むようだ。


「うん、気に入ってくれたようで嬉しいよ、その香りをよぉくよぉく覚えておいてね♪」


 トラルは嬉しそうに香りを楽しもうともせず、一気に飲み干しカップを暖炉に投げ込んだ。

目を丸くしている私を見つめてトラルは言った。


「ああ、君はゆっくり飲んでいいよ。そのスイッチも言った通り、持って帰ってしっかり使ってね!

 対価なんて要求しないから! これはホントのほんとだよ! 君からなにかもらっても意味ないし、それに何より!!」


 大きく大きく手を広げ、見た目よりずっとずっと幼い少年のように微笑んで


無料タダより高いものなんてこの世のどこにもないんだからね!」


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