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異世界からの帰還を目指して!  作者: 沢松 宏伸
第一章 異世界
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第六話 迫られる決断

 今回も宏美ひろみ視点です。


ーーーーーーーーーー宏美視点ーーーーーーーーー


 裕樹ゆうきさんの手からあがる火はかがり火程度だったが、全員を驚かせるには十分だった。いつも落ち着いているアリアさんまで驚愕の表情を隠せませんでした。んっ! アリアさん! すっかり忘れていたけど、今までの話をアリアさんに聞かれてしまって良かったのでしょうか?


「あの。今さらですが。今までの話をアリアさんも聞いてましたよね? 良いんですか?」

「ああ、構わない。話しの後にはお世話になったアリアさんのそばに残りたいという人も出るだろうからな。俺たちの事情を知っておいてもらうことはマイナスにはならないだろう。大丈夫。この数日を共に過ごして解かるだろう。俺達が異世界人だと知っても掌を返すような器の小さな人じゃないさ。」


 視線を向けられたアリアさんは微笑んでいた。いいえ、あれは苦笑いです。そんなアリアさんから疑問が投げかけられました。


「ところで、裕樹さんは詠唱をしませんでしたよね。どうやって魔術を?」

「それもアリアさんに同席してもらった理由の一つです。魔術を知らないみんなは俺が詠唱せずに魔術を使うことに疑問を持ちませんからね。」

「アリアさん。魔術を使うのに詠唱をしないのは珍しいことなんですか?」


 私はアリアさんに質問します。


「珍しいというか聞いたことが有りません。魔術を行使する際には、イメージが重要なのです。そのイメージを補強する為に詠唱を行います。魔術師の力量によっては同じ魔術でも少ない詠唱で行使することは出来ますが、全く詠唱無しでというのは聞いたことが有りません。」

「では、何故俺が詠唱無しで魔術を行使出来るかだが...。」

「チート能力ってやつか?」

章吾しょうご。チート能力なんて都合の良いものは無い!」

「じゃあ、何だって言うんだ?」

「俺たちが異世界人だからだ。」


 それはチート能力ってことでは?


「原因は元の世界で培った俺達の知識だよ。こちらの世界では魔術師達が一生をかけて研究し解明している化学や物理の基本原理を、俺達は先人の知恵として既に知っているからだ。」

「成程。つまり、僕等が魔術を習得するのに必要なのは魔力の扱い方だけということだね。」

「さすが先生! 理解が早くて助かるよ。」


 的確なフォローを入れる和雄(かずお)さん。なんか胡散臭いですね。示し合わせてないですか?


「近代魔術で現在理論化出来ている属性は、火・水・風・土の属性だ。偶然にもヒィフスエレメントと同じだな。ただ、最近の研究では新たな属性の存在も予想されている。四種以外の属性を修得出来る可能性も有るわけだ。」


 ここで恭子(きょうこ)さんから質問が、


「アリアさんの治癒魔術はどの属性に入るんですか?」


 職業柄か興味津々のようです。

 この質問に答えるのは何故か裕樹さん。


「アリアさんの治癒魔術は古代魔術に属しているんだ。この世界でも修得出来る人は珍しいらしい。普通に接しているけど、凄い人なんですよ。」


 感嘆の声が上がる。照れ笑いをするアリアさん。ここにきて、アリアさんへのヨイショが半端じゃない。読めましたよ。この町に残る人達を全員押し付ける気ですね。悪い人です。


「ちなみにアリアさんは『マジックアイテム製造』なんかは出来るんですか?」

「はい。出来ますが『ポーション』ぐらいですよ。」

「試しに聴いてみただけなんですが、凄いですね!」

「いえ。それ程でも...。」


 益々照れてしまい顔を真っ赤にするアリアさん。可愛いです。


「今話に出た便利アイテムの製造も古代魔術の一種なんだ。古代魔術だけあって修得している人は珍しい。高ランクのアイテムなんかは、重傷者を一瞬で完治させるなんて物も有るらしいが、出回る数が少なく高価だ。余り当てにしない方が良いだろう。」

「さて。話が逸れてしまったが、さっきも話した通り古代魔術には俺達には理解しずらい現象を引き起こすものが有る。俺は元の世界に帰る為のヒントは古代魔術の中に有ると考えている。」


 ここからが一番重要な話ですね。何を言い出すのでしょう?


「俺はこの世界を旅して、帰る方法を探そうと思う。命懸け(・・・)の旅になるが、やる価値は有るだろう。」


 命懸け!? ちょっと待って!? 突然話がヤバい方向に...。


「えっと。あの。命懸けってどういう事ですか?」

「んっ!? ああ。それは旅の資金の調達方法だ。旅にはお金がかかるのは異世界でも同じだろ?」

「それはそうてすが...。」

「この世界には、『冒険者ギルド』なんてものが有るんだ。魔物を討伐したり、マジックアイテムの素材を収集したりで稼ぐ事が出来る。しかもギルトは殆どの町に支部を持っているから、旅の資金の調達にはうってつけだ。この町にも有るぞ。ほら、厳つい兄ちゃん達がたむろしてたあそこだよ。」


 あそこですか...。あまり出入りしたくないんですが。


「でも、そんな危ない事をしなくても良いんじゃないですか?」

「有るかどうかも解らないものを探しに行くんだぜ。悠長な旅をしていたら、ジジイになっちまうよ。」


 ごもっともです。


「それに冒険者って職業は俺達に適してるしな。」

「そのことを詳しく聴いてもいい? 私達は裕樹さんとは違うと思うんだけど?」


 恭子さんも気になるようです。


「同じですよ。先に話した通りに元の世界とこの世界には環境に違いが有ります。二つの月が形成された理由と同じで、元の世界より重力が弱いんですよ。」

「地球本体の質量が少なくなった分重力が弱いって事だね。」

「その結果、重力の強い世界で生まれ育った俺達はこちらの世界の人々よりも、若干身体能力が高いんです。」

「私達も元の世界に居たときよりも、見かけ上身体能力が上がっているってことね。」

「そう言うことです。ただし、身体は使わなければ衰えますからね。決断は急がないと。」


 悩み所です。確かに価値は有ると思いますが、当てが無いのはちょっと...。


「勿論目的地の当ては有るんだよね。」

「有りますよ。この世界には人間側|(獣人、亜人を含む)の治める国が七つ有り・・・ました。全て神魔大戦の英雄の子孫達が治める国です。」

「何で過去形なんですか?」

「七年ほど前から始まった、魔族との戦争・・・で一つの国が滅んだらしいよ。だから、今は六つだね。」


 戦争ですか...。また、重大事実をアッサリと。あれっ? アリアさんの表情が曇ったような? 気のせいでしょうか?


「というわけで、例の天才の子孫が治める魔術大国イリスが目的地です。まあ、そこに辿り着いたとしてもすんなり見つかるとは思えませんが、足がかりぐらいにはなるでしょう。」

「その為の仲間を募るということですね。」

「そういうこと。まあ、言語の問題も有るけど、この世界で一番普及してるのはエルグ語っていう英語と良く似た言語らしい。問題にするほどじゃないね。旅をするにしてもこの町に残るにしても学んで損は無いよ。」

「アリアさんは、えっと... ニーベル語でしたっけ? 日本語に良く似た言語を話してますが?」

「魔術師の多くはニーベル語を話せますよ。表現力豊かなこの言語は魔術の詠唱に適してると昔から言われていますので。」

「言語の酷似性も過去に行き来が有った可能性を示すものの一つだね。」


 ここで話を纏めに入る裕樹さん。


「長くなったがここまでで話は以上だ。旅は命懸けだ。その上目的は有るかどうか解らないもの。俺の考えを押し付けるつもりは無い。各自自己責任・・・で決めて欲しい。」

「元の世界に帰りたい人は、二週間後に町の中央広場に集まってくれ。但し勘違いしないで欲しい。俺は全員を代表して探しに行くわけじゃ無い。帰る方法を見つけても此処に戻ってこない。元の世界に帰りたいなら共に命を懸けて貰う。」


 そう言い残して、裕樹さんは礼拝堂を後にしました。暫くの沈黙が流れます。

 最初に動き出したのは和雄さんでした。


「僕は彼の考えに賛同するよ。皆さんも自分の意志で決めて下さい。」

「上等だ! やってやろうじゃねぇか!」


 章吾も続きます。ただ、私は見ました。和雄さんが礼拝堂を出るときに一瞬ニヤリと笑ったのを...。あの二人グルです。

 私はというと、考えを整理してます。元の世界には帰りたいです。しかし、命懸けとなるとちょっと...。尻込みしてしまいます。

 今までの話を纏めると、

 『元の世界に帰る方法を探す旅 ○○ 異世界!』

 やりますか? やりませんか?

 考える猶予を与えてくれるのは、良心的ですよね。えっ!? パクリ!? 何のことですか? 私には解りません。そんな現実逃避をしていた私は、恭子さんと目が合いました。

 恭子さんが仲間になりたそうな目でこちらを見ています。いいえ、仲間になりたそうな目で見ているのは私です。無言で微笑む恭子さん。そして、私は恭子さんと共に礼拝堂を後にするのでした。





 やっとお話が終わりました。

 これでザックリですが世界観が観えてきたと思います。

 次回こそ旅立ちまで、頑張ります。


 

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