第二話 遭遇
状況が呑み込めた主人公。
これからどうなるのでしょう?
裕樹は二つの月を観て愕然としていた。そんな彼に和樹は、
「ご愁傷様。遂に頭が膿んでしまったか...。」
酷い! 事実を口にしているだけなのに! 俺の親友のツッコミは時々辛辣です。
「だいたい異世界に居るなら、電話越しで会話出来ること自体がおかしいだろ。」
「それはそうだけど、事実なんだよ。月が二つ有るんだぜ。」
「眼鏡の度が合ってないんじゃねぇ。」
「いや、今は眼鏡を掛けてないから。」
「ますます信用出来ん!」
緊張感の欠片もない会話だった。しかし、俺はこの時はまだ気付いていなかった。こうやって親友とバカ話が出来たことが奇跡に近い出来事だったことに。
「どうすれば信用出来るんだよ。」
「写メを送ってくれ!」
「月の写メか? 二つ同時に写すのは難しいぞ。」
「いや。獣耳の美少女とかエルフのお姉さんの写メだ! 居るだろう異世界なら。」
「お前の頭の方が膿んでるわ!」
こうしてバカ話をしていると、和樹が不安をあおる言葉を口にしてきた。
「それがダメなら、モンスターの写メとか? 出来ればドラゴンが良いな。」
「おいっ! やめろよ! 嫌なフラグを立てようとするな! 命の危険を伴うぞ!」
「あはははっ。無い無いって。」
その時、裕樹の背後から悲鳴が上がる。
「キャアアッ!」
「うわああっ!」
「来るなぁ! 化け物!」
そこには裕樹の胸元ほどの背丈の人型の何かがいた。しかし、それが人では無いのは明らかだった。
赤く鈍い光を放つ瞳、灰色の皮膚、引き締まった身体、そして小さな角と牙の有る醜悪な顔。例えるなら、ゴブリン!
剣や斧、棍棒などで武装したゴブリンらしき怪物が六体も森の中から現れたのだ。
低い唸り声を上げるそれは、とても友好的とは思えなかった。
「冗談だろ?」
恐怖に一瞬顔が強張るが、すぐに持ち直す。剣を手にした怪物が動き出したからだ。狙われたのはまだ名前も聞いていないあの女の子だ。
スマホを放り投げ走り出す裕樹。自分自身でも驚くほどのスピードだったが、今は気にしてられない。
「間に合え!」
怪物が剣を振りかぶったとき。不意打ち気味に裕樹の跳び蹴りが決まる。
メキッ!
嫌な音が鳴り響く。怪物の首が砕けた音だ。
自分が強いのか、怪物が弱いのか、裕樹は一撃で一体を殺してしまった。しかし油断出来ない。まだ怪物は五体もいる。幼い頃より武道に励んでいた裕樹は、直ぐに不利な状況を理解し警戒心を強める。
「丸腰じゃキツイ!」
視界に入る剣。怪物が落としたものだ。剣を手に取り構える裕樹。その後の裕樹の戦いぶりは圧巻の一言だった。怪物の攻撃を掻い潜り、逆袈裟・切り上げ・真向・横薙ぎ、瞬く間に四体の怪物を切り捨てた。
「いける!」
勝利を確信した裕樹。だが、そこに油断が生まれる。
ドスン!
最後の一体の棍棒が裕樹の腹を捉える。衝撃で剣を手放し倒れる裕樹。さらに追い打ち、棍棒が裕樹の頭に狙いを定めた。
グシャ!
鈍い音が鳴り響く。怪物の頭が割れた音だ。崩れ落ちる怪物の後ろに見えたのは、あの子だった。
「ハアッ! ハアッ! ハアッ!」
荒い息遣いで斧を手にした彼女は、その場にへたり込んでしまった。
痛む腹を押さえて裕樹は彼女に礼を言う。
「有難う。助かったよ。」
「ハアッ!... いえ。先に助けてもらったのは私の方ですし... 有難う御座いました。」
礼を言い合う二人。荒い息を整える少しの間の後、裕樹は彼女の名前も知らないことを思い出す。
「そういえば自己紹介もしてなっかったね。俺は裕樹23歳。職業は... フリーターかな。」
「私は松沢宏美18歳。高校生です。」
黒髪の真直ぐなロングヘアの女の子はそう答えた。
怪物との初戦闘!
あれ! これって異世界転移に有りがちなチート能力?
いいえ。チート能力では有りません。
後々不都合が生じてきそうですが、このまま進んでみます。
しかし、他の作者の方々は凄いですね。書いてみて自分の文才の無さ、表現力の乏しさに驚いています。
なにより一話一話が短い! 毎日更新してる方々は尊敬です。
読んで頂いた方、こんなショボイ話で楽しんで頂けたでしょうか?
宜しければ次話もお願いいたします。