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5、エリーザという女

最初から最後までエリーザが出ずっぱり……そろそろグレイスが恋しいです。

今回はラウルス城を飛び出します。


 翠の王国王太子ヴィルヘルムは側近1人を連れてラウルス城を訪れた。約2万人が暮らすこの城は、外から見ると物語のお城のような趣がある。白亜の城だ。だから、ヴィルヘルムはこの城を訪れるたびにおとぎ話の世界に紛れ込んでしまったような錯覚を感じる。

 もちろん、錯覚に決まっている。ラウルス城の住人は物語の中の人というには変人が多すぎた。すでに門はフリーパス。門番に顔を覚えられていた。


「ああ、殿下。お久しぶりです」


 エントランスから少しは言ったところで、ヴィルヘルムは両手に自分の子どもを抱えたリアムに遭遇した。その姿で平然と挨拶してくる時点で、自分が敬われていないことがわかる。自分がなじめているのはうれしいが、威厳がないのはどうかと思ったりもする。


「久しぶりだね、リアム。ローレルとエリスもこんにちは」


 ヴィルヘルムは笑顔であいさつしたが、リアムの娘と息子は父親の首にしがみついた。2人とも、人見知り中なのだ。リアムは子供たちを見て苦笑した。

「すみませんね。どうも妻に似てしまったみたいで」

「ああ……グレイスって人見知りだった?」

「臆病でしたね」

 さらりとリアムは言った。彼は飄々としていていまいち性格がつかめない。


「殿下、今日はどういったご用件で? エリーザなら城内のどこかにいますよ」

「……君たち、私がこの城に来るのはエリーザに会うためだけだと思ってるわけ?」

「違うんですか?」

「否定できないから困ってるんだよ」


 そう。エリーザに会いに来たことは否定できない。彼女にも用があるからだ。用があるのはエリーザとアウラの2人だ。

「アウラもなんですね。今『評議会』が会議中ですから、後で呼んできます」

 その言葉に、ヴィルヘルムは首をかしげた。『評議会』は『オーダー』の執行機関だ。ラウルス城の管理も兼ねる彼の組織は、15名で構成される。特に議員は決まっていないが、今のところ事実上、ラウルス城の最高責任者であるアウラが議長を兼ねていた。


 『評議会』議員は選挙で選ばれる。ラウルス城、つまり。通称『黒の王国』に暮らすすべての人が選挙権を持つ。被選挙権があるのは『オーダー』に籍があるものだけだが、選挙は2万人近い有権者が投票に来る。12月の1週間、投票箱が置かれて、そこに「彼こそは」と思う人の名前を書いて投票する。1人1票。投票率はそこそこ高く、80%以上をマークしている。

 任期は3年。1年ごとに五名が入れ替わる。最高責任者アウラはここ50年ほど『評議会』議員を外れたことがないらしい。エルフであり、寿命が長いことがいい方向に働いたと思われる。長く任されている人の方が安心できるのだ。


 それはともかくだ。


「リアム。『評議会』議員じゃなかったですか?」

 ヴィルヘルムが思わずという風に尋ねると、リアムは口元をひきつらせた。

「去年で任期が切れたんですよ。で、投票結果を見てみれば、僅差でグレイスに負けてたんですよね」

「あー……ご愁傷様です」

 それでリアムは子供たちの子守りをしているのか。何となく納得したヴィルヘルムは、どういう反応をすればいいのかわからず、少々途方に暮れた。リアム自身も感想に困る状況であることを理解しているらしく、肩をすくめて「まあいいんですけどね」と言った。

「じゃあ、俺は会議が終わったらアウラに殿下が来たことを知らせておきます。それまで城内でお待ちください」

 4歳になったばかりのエリスがぐずりだしたので、リアムはそう言って足早にその場を離れて行った。うん。何かやっぱり気を使われていない気がする。幼馴染を兼ねる側近はこの扱いにも慣れてくれたらしく、おとなしくヴィルヘルムの後をついてきた。


 この城の住人はどんどん増えていく。そのため、ヴィルヘルムが城内を歩いていても誰も気に留めない。時々、顔見知りが挨拶してくるくらいだ。この城に避難してきた人の中には貴族も多いから、どことなく気品のあるヴィルヘルムも微妙に溶け込めるから不思議だ。

 食堂付近で、ヴィルヘルムは黒髪の少女を発見した。何故か、手に楽譜を持った少女に声をかける。


「エリーザ!」


 少女が振り返った。切れ長気味の紅玉の瞳が驚いたようにヴィルヘルムの姿を映した。ヴィルヘルムはにこにこと話しかける。


「エリーザ、久しぶりだね。その髪型、よく似合ってるよ」

「……ありがとうございます……というか、よくわかりましたね? 後ろ姿だとわからないって言われるんですけど……」


 エリーザはそう言って結い上げた自分の髪に触れた。振り返ってからわかったが、前髪もきれいに切りそろえられており、怜悧な印象を与えている。今までのような長い髪を三つ編みにした髪形も、それはそれで似合っていたが、こちらの方が似合う。三つ編みの時はやさぐれた貴族の少年のような印象だった。

 というか、彼女からこれだけの文章が返ってきたことにも驚きだ。彼女は大概無口である。反応が返ってきたことがうれしくて、ヴィルヘルムは笑みを深くする。


「私は君なら、どんな姿になっても見つけられる自信があるよ」

「…………」


 今度はすがすがしいまでの無反応だった。一応口説き文句だったのだが、そういった言葉では彼女の注意を引けないのはわかっている。言いたかっただけだ。

「……というか、殿下、どうなさったんですか? 何用で?」

 エリーザが話しを変えた。髪形が変わったことといい、彼女の中で何か心境の変化があったのだろうか。会話が成り立っている。

「ああ。君とアウラに話があるんだよ」

「……そうですか。……あ、グレーテル。ちょっといい?」

 エリーザが近くを通りかかった少女を呼んだ。金に近い亜麻色の髪に緑柱石の大きな瞳が印象的ななかなかの美少女だ。赤の帝国のクラウゼヴィッツ辺境伯クラウディアの妹のマルガレーテだ。愛称がグレーテルなのである。

「どうしたの? あ、殿下。こんにちは」

「こんにちは、グレーテル。今日もかわいらしいね」

 ヴィルヘルムの言葉をさらりと受け流し、マルガレーテはエリーザを見上げた。エリーザが彼女に楽譜を渡す。

「これをダニエルに渡してくれ。第2音楽室にいるから」

「ん。了解。エリーザは来れなくなったって伝えておく」

 マルガレーテはそう言って手を振ってから音楽室の方に走って行った。そう、この城には音楽室もあるのだ。オーケストラも形成されている。まあ、有志の、だが。エリーザはそれに時々参加しているらしい。


「……邪魔をしてしまいましたね」


 ヴィルヘルムが少し申し訳なく思って言うと、エリーザは首を左右に振った。大丈夫、気にしないで、ということだろう。それから、彼女は首をかしげた。

「……それで、殿下は私に何のご用でしょうか」

 そうだった。ヴィルヘルムは唐突に用件を思い出して、ぶしつけにならない程度にエリーザの全身をざっと見た。

「……うん。大丈夫だね」

「?」

 ヴィルヘルムの謎のつぶやきに、怪訝そうな表情になるエリーザ。ヴィルヘルムは彼女に尋ねた。


「エリーザ、マナーと教養は大丈夫だよね?」


 エリーザは首をかしげつつも答えてくれた。


「? ええ……たぶん」

「ダンスは踊れる? ワルツはわかる?」

「は? ええ、一応は……」


 うなずいて見せたエリーザに、ヴィルヘルムはぽん、と手をたたいて見せた。にっこり笑顔を見せる。


「じゃあエリーザ。私と一緒に紫の王国まで来てほしいんだ」

「……は?」


 意味が通じなかったのは失敗だったが、エリーザのぽかんとした可愛らしい顔が見られたのでよしとする。



間。



 『評議会』の会議が終わり、ヴィルヘルムはエリーザとともにラウンジに来ていた。リアムから伝言が伝わったらしく、アウラとグレイス、それにキリルがすでにそこで待っていた。この3人は『評議会』議員である。

「お待たせしました。3人とも、お疲れ様です」

 ヴィルヘルムはニコリと笑ってふかふかのソファに腰かける。エリーザに隣に座るように指示すると、すぐに本題に入った。


「早速ですが、エリーザをお借りしたいんです」


 アウラがエリーザをちらりと見て、ヴィルヘルムの方に向き直った。

「理由をお聞かせ願っても?」

「ええ。妹……フロレンツィアが紫の王国の王太子と結婚することになりました」

「お聞きいたしました」

 アウラがうなずいた。フロレンツィアは従妹のユーディットを連れて自分で言いに来たらしい。そこでひと騒動あったらしいのだが、とりあえず、それ以来ユーディットがエリーザになついている。


「私は父の名代として式に参加することになったのですが、その護衛兼パートナーとしてついてきてほしいんです」


 下心が全くないとは言えないが、パートナーとして参加すれば、一番近くで護衛ができるという利点がある。上流階級出身の『オーダー』の騎士がよく使う手だ。護衛対象のパートナーとして夜会に参加する、というのは。

「わかりました。……エリーザ、いいですか?」

「……私は構いません」

 エリーザがうなずいた。やはり、信頼の問題だろうか。アウラにはすぐにうなずいて見せた。自分の聞き方が悪かったとは思わないヴィルヘルムである。

「振る舞い、ダンスは大丈夫ですね。そんな仏頂面ではいけませんよ」

「…………」

 アウラの指摘にエリーザがついっと視線を逸らした。まあ、エリーザなら少しうつむいてヴィルヘルムに寄り添っていてくれれば奥ゆかしい貴族令嬢に見えるだろう。容姿は貴族的なのだし。


「あと、1人か……できれば2人。護衛役が欲しいですね。できれば貴族がいいですが」


 そう言ってヴィルヘルムはキリルの方を見た。彼は紫の王国の貴族の血を引いているらしい。それ以上のことはわからない。紫の王国にハレヴィンスキー姓の貴族はいない。『黒の王国』の住人は本名を名乗らないものも多い。貴族で本名を名乗っているのはメアリやクラウディアくらいだ。2人は知名度が高すぎるのもある。


 例えばエリーザ。エリーザというのは本名ではない。本当はエリーザベトと言う。エリーザベト・シャルロッテ・マルティナ・グレッシェル=アイクシュテットというのが本名だ。長すぎるので、本名を名乗ることはほとんどないらしい。


 なぜヴィルヘルムが知っているかというと、彼女を連れて来たのはヴィルヘルムだからだ。正確には彼女に頼まれて連れて来た。7年ほど前、赤の帝国アイクシュテットはミュラー宮殿での出来事である。当時の彼女は赤の帝国の第12皇女だった。身分は放棄していないので、今もそうか。

 ヴィルヘルムは、その時に彼女が放った言葉が忘れられない。それが、彼女を気にかける理由だと言ってもいい。気にかけていたのが、いつの間にか恋情へと発展していた。


『わたくしはここにはいられない。みんな、わたくしを気味が悪いというわ。わたくしもこの力が制御できないという事実が恐ろしい。それでも、わたくしがこの力を持っている以上、わたくしにはこの力を使いこなす義務があると思う。宮殿には、わたくしに力の使い方を教えてくれる人はいないわ。わたくしのような日陰の身に、居場所はないの。だから、連れて行って。必ずあなたたちの役に立つわ』


 慇懃無礼ともとれる言葉は、妙にヴィルヘルムの心に残った。当時11歳のエリーザベト皇女は自分に力があることを自覚していた。何の変哲もないような言葉が、なぜ自分の心に残ったのか。ヴィルヘルムはいまだにわからない。しかし、彼女が自分の興味をそそる。それだけで十分な気がした。

 エリーザは……エリーザベトは皇女だ。つっこまれてもそう返事ができる。今の赤の帝国皇帝に子供が多いことは有名だし、わざわざ大国の諸事情に突っ込もうとする猛者はいないだろう。彼女自身の戦闘能力も大したものだし、美人だ。連れ歩くには最適と言える。


 ヴィルヘルムの視線を受けたキリルは笑顔で即答した。


「行きませんよ」

「……まあ、無理に行けとは言わないけどさ。キリルは紫の王国出身でしょ。都合がいいんじゃないの?」


 グレイスがズバリと言った。このずばずばと物を言う性格は彼女の利点でもあり、欠点でもある。ただ、グレイスの指摘はヴィルヘルムが考えていたことだった。他国の貴族がもぐりこむより、その国の貴族がもぐりこむ方が簡単だ。

 キリルもその点は理解しているようで、あいまいに微笑んだ。


「まあ、そうなんだけど。心情的に嫌なのはわかる? 自分を捨てた人たちと再会するかもしれないんだよ。思わず殴りたくなる衝動をおさえなくちゃいけないんだよ。わかる?」


 キリルの言葉にエリーザが猛烈にうなずいている。彼女はむしろ家族を捨ててきた側だが、あまり赤の帝国にいい思い出はないようだ。

「そう言うもんかねぇ」

「そう言うもんだよ。グレイスだって、自分の一族を皆殺しにした連中にあったら、そいつらと談笑なんてできないでしょ」

「ああ、なるほど。できないわ」

 聊か極論であったが、グレイスはキリルの言葉に納得したらしい。グレイスは白の王国に暮らす有翼人の最後の生き残りらしい。今から15年ほど前、謎の絶滅を遂げた有翼人は、グレイスの証言によると何者かに皆殺しにされたらしい。

 まあ、確かに時々、オークションで明らかに有翼人のものと思われる翼の剥製がセリにかけられていたりする。もともとの絶対数が限られている翼は高値で取引される。つまり、有翼人絶滅は金銭目的の犯行の可能性が高いということだ。その割にはスケールがでかいが。

 ただ、問題は有翼人が戦闘民族でもあったという点だ。優秀な戦士でもあった彼らを、密猟者たちはどうやって皆殺しにしたのだろうか。


 グレイスが不穏な空気を醸し出しはじめたところで、アウラが締めくくるように言った。

「殿下の依頼、確かに承りました。こちらからはエリーザと、それとメアリを派遣しましょう。2人しか派遣できず、申し訳ありませんが」

「いえ、構いませんよ」

 ヴィルヘルムは笑顔でアウラにそう言った。赤の帝国の選帝侯であるクラウディアと、戦闘力の乏しい黄の皇国前皇帝の娘シャンランを護衛にするわけには行かない。他にも貴族出身者は何名かいるが、みんな戦闘力に不安があるか、そうでないものは各国に諜報員として派遣されているらしい。


 という取り決めのはずだったのだが、ふたを開けてみればキリルがついてきていた。


「来てくれてうれしいけど、どうして来る気になったんだい?」


 ヴィルヘルムは翠の王国の宮殿、イェレミース宮殿に向かう馬車の中で切りるに尋ねてみた。彼は苦笑する。

「メアリに目の色は変えられるから、目立たないって言われまして。それに、何となく心配だったものですから」

 そう言ってキリルは肩を寄せ合って眠るエリーザとメアリを見た。一瞬、何が心配なのだろうと思ったが、すぐに気が付いた。暴走か。メアリもエリーザもキレたら手におえないことは知っていた。確かに、ヴィルヘルム1人では荷が重かったかもしれない。ここは素直に感謝しておく。


「ありがとう、キリル」

「いえ。こちらこそ、断ってしまってすみません。考えてみれば、殿下のような方のおかげで『黒の王国』は成り立ってるんですよね」


 オッドアイが眼を引くが、十分整った顔立ちをしているキリルは邪気なさそうに笑った。邪気はなさそうなのに、腹黒く見える笑みだった。不思議だ。

 イェレミース宮殿につくころには、すでに夜になっていた。しかし、馬車の到着を待っていたかのごとく、エントランスには言ったところで銀髪の少女が駆け寄ってきた。


「エリーザ!」


 抱き着かれたエリーザは、起き抜けだったのもあり、よろめいた。ヴィルヘルムとキリルが両側から彼女を支えた。

「ユディ。むやみに人に飛びつくものではないよ」

「……わかりました」

 ヴィルヘルムの従妹であるところのユーディットはしぶしぶと言う風にエリーザから離れた。ユーディットは従妹だが、同時に妹でもある。彼女の両親が亡くなったため、ヴィルヘルムの父である国王が引き取ったのだ。


「でも、殿下もユーディット様もよくエリーザだってわかりますね~。だいぶ雰囲気変わってません? 私、最初この子だってわからなかったんですよ」


 とメアリがエリーザの肩をたたく。エリーザの方が少し背が高いな、と現実逃避気味に見ていると、エリーザはシークレットブーツを履いていることが判明した。

 現実逃避気味の兄とは違い、人見知りを発動してびくりと震えたユーディットの方が発言した。


「え……だって、髪を切っただけでしょう? エリーザはエリーザだもの」


 ヴィルヘルムは、ああ、この子は確かに自分と血がつながっているな、と思った。

 とりあえず、何故か意気投合している女性陣は放っておく。ヴィルヘルムはキリルと側近であるハインリヒ・ローゼンクランツに向かって言った。

「明日の昼ごろ、宮殿にある転送魔法陣で一度、空の公国に行ってから紫の王国に向かうからね」

「わかりました」

 キリルは笑顔で、ハインリヒはまじめにうなずいた。やっぱり、キリルについてきてもらってよかったと思った。



――*+○+*――



 ユーディット・クロイツェルは王族だが、王族ではない。


 腰まで届くストレートのシルバーブロンド、少し釣り目気味の瑠璃色の瞳、白い肌、ほっそりした体格。少しおどおどとしたふるまいから、かわいらしいと言われることが多い。ちなみに、顔は文句なしの美人だ。月の女神とたとえられることもある。

 そのユーディットはちらりと隣のエリーザを見た。

 初めにあった時、彼女は腰よりも長い黒髪を三つ編みにしていた。それもそれで似合っていたが、ちゃんと髪を切りそろえて身なりを整えた彼女は格別に美しかった。兄のヴィルヘルムは彼女にご執心らしく、もしかしたらヴィルヘルムとユーディットは好みが似ているのかもしれない。

 2人が並んでいるのは2人のパートナーであるヴィルヘルムとその側近ハインリヒがあいさつ回りに行ってしまったからだ。人見知りのユーディットは同行する気になれず、エリーザも行く気はさらさらなさそうだ。

 まあ、フロレンツィアお姉様の結婚披露宴だから、行った方がいんだろうけど……。

 そう。これは紫の王国ゼレノフの王太子ルスランと翠の王国第1王女フロレンツィアの結婚披露宴だった。紫の王国王都・サヴェリエフの北に位置するカレーリン宮殿は、100万人の血の上に築かれた城と言われているらしい。本当かどうかは知らないが、寒い土地だから、城を築くのは大変だったとは思う。

 北方にある紫の王国は寒い。大陸の最北端に位置するのだと教えてくれたのは、お嫁に行く姉のフロレンツィアだった。現在、帝暦1840年3月初め。この国はまだ、ちらちらと雪が降っている。


 兄、姉、と連呼しているが、ヴィルヘルムとフロレンツィアはユーディットの実の兄姉ではなかった。二人はいとこだ。ユーディットの母が翠の王国のヨハネス国王、つまり2人の父親の妹だった。らしい。

 らしい、というのは、両親はユーディットが物心つくころにはすでに亡くなっていたからだ。詳しい事情は知らないが、ユーディットの父は王位を簒奪しようとしたらしい。そして、当時の翠の王国女王に処刑された。ユーディットにとっては祖母に、父にとっては母にあたる人だ。


 故女王エレオノーレは、慈悲深いことで知られた女王だ。実際には『オーダー』の力を借りつつも、地方で起こる動乱や自然災害などをあっさり解決してしまうような才覚の持ち主だったらしい。いや、ユーディット自身にも何が言いたいのかわからないが、とにかく才能あふれ、毅然として、有能な女王だったらしい。


 女王、つまりユーディットの祖母は、その手で自分の次男を斬り殺したらしい。


 らしいが、ユーディットはあまりこの噂を信じていない。噂は噂だし、黄の皇国に自分の親と兄とその寵姫を斬り殺した女帝がいるから、その流れから派生したのだと思う。

 それはともかく、当時3つか4つだったユーディットはその後、祖母に引き取られた。祖母が亡くなってからは伯父に養育されている。伯父もその王妃もユーディットを自分の子どものように扱ってくれるし、彼女自身も不満はない。

 だが、自分は翠の王国に反逆を企てた人の娘である事実に変わりはない。みんな気にするなというけど、気にならないわけがない。

 ため息が漏れる。


「退屈ね」


 不意にそう言ったのはエリーザだった。彼女は赤の帝国第12皇女らしく、その気になれは姫君の振る舞いができるらしい。今は魔術で目の色を濃い紫に変えており、化粧のせいか鋭い目つきもなりをひそめている。でも無表情。

「エリーザはよく夜会とかに参加するの?」

「仕事があればね。わたくしは帝国皇女だから。……忌々しいことに」

 エリーザが眼を細めた。その笑みが恐ろしく見え、ユーディットは思わず震えた。ユーディットもそうだが、強い魔力と魔法を持つエリーザは感情によって魔法が簡易的に発動することがある。怒った時が最も顕著に表れる。エリーザの目が死んでいるのは、意識的に感情を殺しているからだとユーディットは見ていた。


 ユーディットの情緒不安定さも、強い魔力に起因しているからだ。暴走したら、自分では止められない。今まで止めることができたのは、祖母とエリーザだけだ。

「エリーザ。ガラスにひびが入りそうだよ。やめよう」

「あら」

 ツッコミを入れられてエリーザの魔力放出が納まった。ユーディットは相殺魔法が使えないので、どうしようか迷っていたところで、いいタイミングだった。料理を取りに行っていたキリルとメアリが戻ってきたのだ。ちなみに、キリルはオッドアイをブルーにそろえている。


「そうしてると、エリーザもちゃんと皇女様ね……っていうか、さっきあんたの所の皇太子を見たわよ」

「わたくしの祖国には皇太子はいないわ。第1皇子のジークハルトの事?」

「ああ、その人。そうか。赤の帝国は選帝侯制度を取ってるんだったわね」


 メアリが納得したようにうなずいた。ユーディットも赤の帝国の独特な体制のことは知っていた。今度、兄にでも詳しく聞いてみよう。

「エリーザ。少し踊らないかい?」

 挨拶を終えてきたのか、声をかけたのはヴィルヘルムだった。そして、エリーザが微笑んで彼の手を取った!

「うわぁ。何か衝撃的……」

「そうだね……あの子が子供のころから見てるけど、笑顔なんて数えるくらいしか見たことがないよ」

「女優になれるわね、あの子」

 好き放題言うメアリとキリルだが、その口調は感心していた。確かに、ユーディットにはできない芸当だ。

 ああ、でも、エリーザの顔が『目立ちたくないのに』と言っている。ヴィルヘルムが何かささやいているから、話しをしようとしただけかもしれないけど。


「あ、ユディ様。食べます?」

「あ、うん」


 ユーディットはキリルに差し出されたデザートの皿を受け取る。兄とエリーザを眺めながらそれを食べる。

 実のところ、はかなげな銀髪美少女であるユーディットにはかなりの視線が注がれていたが、それはもう、気にしないことにした。ちょっと開き直ったユーディットである。


 紫の王国は政情不安だ。翠の王国国王の養女であるとはいえ、直径王族ではないユーディットが連れてこられたのは、一重に彼女の魔法ゆえだ。少々制御方面に不安があるものの、威力としては申し分ない。効果範囲だけならエリーザの『セイレーンの祈り』の方が広いが、効力自体はユーディットの氷魔法の方が強い。


 ……そう言えば、あの魔法、名前がない。


 そのことに気付いた時、少々疲れたような表情のエリーザが返ってきた。でもやっぱり目が死んでる。

「じゃあ、メアリ、キリル。もう少し2人を頼んだよ。ハインリヒ、行こう」

 ヴィルヘルムは微笑んでエリーザの手の甲にキスを送ると、ハインリヒを伴ってもう一度人ごみに紛れた。

「何言われたの?」

「『第2夫人とその後ろ盾であるヴァシレフ公爵家に気を付けて。できるだけ絡まれないように。メアリとキリルにも伝えてほしい。愛しているよ、エリーザ』だ、そうだよ」

「………………………そう」

 沈黙の末、メアリはうなずいた。納得したらしい。気を付けてって言われても、顔がわからないんですけど。

 それより、ヴィルヘルムの『愛している』宣言はエリーザの心に響かなかったらしい。なるほど。フロレンツィアが言っていたのはこれか……頑張れ、お兄様。たぶん、引いたら負けだと思う。よくわからないけど。


 そして、ヴィルヘルムの言う『気を付けて』の出来事は、夜会も終盤になってから遭遇した。運悪く、その時はエリーザと2人きりだった。

 キリルが会場の見回り、メアリが少し席を外している間、ユーディットとエリーザは庭に出ていた。ここから動かない、という条件で。外套を着ていても外は寒かった。


 そして、そこで目撃した。そう。誘拐現場を。


 ユーディットは思わずエリーザの方を見た。彼女もユーディットの方を見ており、数度瞬きをした。抵抗せずについて行こう、と言われている気がした。

 こういう経験は、エリーザの方がしているはずだ。ユーディットは彼女の判断を信じることにし、おとなしく気絶させられた。


「あの、大丈夫ですか?」


 聞き覚えのない声に語りかけられ、ユーディットは目を覚ました。起き上がろうとしたが、手足が縄で縛られていて起きられなかった。横たわったまま声をかけてきた人物を見る。

 ユーディットと同じか、いくらか年下の少年だった。北方生まれらしい金髪に、抜けるような青の瞳。かわいらしい、と称したくなるその顔立ちに何故か見覚えがあったが、どこで見たのか思い出せない。


 というか、この子は縛られてないのに、なんで私は縛られてるの?


 ユーディットがふいに気が付いた時、背後で声がした。

「……あまり動かないでほしいんだけど」

「え、エリーザ?」

 どうやら、縄をほどいてくれているらしい。というより、ユーディットが縛られていたということはエリーザも縛られていたのだろう。どうやって縄を解いたのだろうか。

「……エリーザ、脱出師なの?」

「…………君は時々面白いことを言うね」

 そのとき、縄が外れてユーディットの手が自由になった。若干手首が痛いが、まあ我慢できなくはない。エリーザは足の縄も外してくれた。とりあえず、『オーダー』の騎士だから、で納得しておくことにする。それから起き上がり、改めて周囲を見渡す。

 どっかそのへんの倉庫、などではなかった。質素だが、清潔な部屋である。ユーディットが転がされていたのはマットレスの上だし、部屋は暖かい。とりあえず、凍死の心配はなさそうだ。


「ここ、どこ?」

「知らない。殿下、わかります?」

「え? いいえ……というか、僕、名乗りましたか?」


 エリーザが話しを振ると、少年は不思議そうに首をかしげた。エリーザは首を左右に振る。

「いいえ。ただ、あの場所で拉致されるなんて、王子ですと言っているようなものです」

 いつも寡黙なくせに言いたいことははっきり言う女、エリーザ。彼女の言葉に、少年は顔を赤くした。

「えっと。すみません。女性の方を巻き込んでしまって」

 小さくてもちゃんと紳士だ。ユーディットは少し感心しながら言った。


「いえ。私、不幸体質なんです。気にしなくていいですよ」


 人見知りなユーディットだが、彼相手なら普通に話せた。不思議。エリーザも似たようなことを言う。


「ええ。私も周囲から運がないと言われ続けているので」


 ……なんだろう。魔力が多いと、不幸体質になるんだろうか。だから、ラウルス城には魔力持ちばかりが集まってくるのか?

 まあ、それはともかく、だ。

「本名は長いので端折りますが、赤の帝国第12皇女エリーザベトです。彼女はユーディット」

「ユーディットです」

 エリーザの紹介でユーディットは頭を下げた。少年もあわてて頭を下げる。


「ご丁寧にどうも。紫の王国第2王子エフィムです。エリーザベト様と、ユーディットさんですね。赤の帝国の方を巻き込んでしまってすみません」

「いいえ。私は現在、『オーダー』に参加していますから」

「私は翠の王国人です。一応」


 エリーザとユーディットがそれぞれ言った。というか。

「エリーザ、今日はよくしゃべるのね」

「しゃべらなければ、意志疎通が難しいからね」

 まあ、それはそうだ。ユーディットはひとまず納得し、これからのことを相談することにした。とりあえず、年長者のエリーザに指示を請うと。


「助けを待ちましょう」


 と言われた。ユーディットは首をかしげる。


「なんで? 私とエリーザなら、エフィム殿下を連れてここから逃げ出せるよ」


 ユーディットの氷魔法とエリーザも精神感応能力を使えば、抜け出すことは他愛ない。それを指摘したが、エリーザは首を左右に振る。


「ダメだよ。私と君の魔法は、周囲への被害が大きすぎる」


 まあ、確かにそうだ。ユーディットが本気を出せば、町一つ凍らせることができる。まさに沈黙の世界。

 人を永遠の眠りにつかせるユーディットと、人の精神や神経に干渉するエリーザ。どちらがより恐ろしいのだろうか? 二人とも、自分の力の方を恐れている。だからこそ、二人はこんなにも仲がいいのかもしれない。

「『オーダー』は優秀ですよ。殿下……ヴィルヘルム様も頭がキレますし、あそこにはうちのお兄様がいたらしいですから」

「ああ。ジークハルト殿下ですね?」

 エフィムの確認にエリーザがうなずく。夜会の会場でも聞いたが、ユーディットは顔がわからない。エリーザに似ているのだろうか?


「エリーザのお兄様の……ジークハルト殿下? は、どんな人?」

「腹黒い」

「……うちのお兄様も腹黒いよ?」

「ああ……ちょっとヴィルヘルム殿下に似てるかも。でも、うちの兄はうざい上に変態だ」

「………」


 そんなこと、聞きたくなかったよ。天下の赤の帝国の第1皇子が変態なの? ユーディットもエフィムも微妙な表情で固まった。

 妙な沈黙が続いた後、そんな空気にしたエリーザが口を開く。

「……ユディ、君って探査系の魔術は使えたっけ?」

「え? ううん。私、ほとんど魔術は使えないんだけど……」

 魔力はあるが、魔術はほとんど使えない。今は、氷魔法の制御に魔力をまわしているからだ。未熟なので、効率が悪く、ユーディットは基本的な自己強化魔法や回復魔法しか使えない。むしろ、対物系のユーディットより、対精神系のエリーザの方が、探査系の魔術は得意そうだけど。だが。


「専門外」


 じゃあ、むしろ何ができるのさ。そう言いたくなったが、その言葉はそのままユーディットに返ってくるので、言わなかった。せめて愛用の剣があれば違うのだが、あれはメアリに預けたままだ。と思ったとき、扉の外で話し声が聞こえた。


「くそっ。もう嗅ぎ付けてきやがった」

「『オーダー』はわからんではないが、赤の帝国の皇子もいるらしいぜ。俺ら、なんかしたか?」

「まあ、聞いてみればいいだろ」


 鍵が開く音がして、扉が開いた。エリーザは彼らに指さした。


「眠れ」


 男たちはその場でばったりと倒れた。

「え? え? 何したんですか?」

 エフィムが眼を白黒させている。エリーザが自分たちが縛られていた縄で男たちを縛り始めたので、代わりにユーディットが説明する。

「えーっと。強力な精神感応系魔法です」

「? そうですか……」

 実の所、ユーディットにもよくわからないのだ。ユーディットの魔法に比べ、エリーザの『セイレーンの祈り』は応用範囲が広い気がする。効果範囲も広いのに、ねらい撃ちもできるのか。

 遠くで、名前が呼ばれた気がした。エリーザが部屋の外をのぞいて、2人を手招きする。

「迎えが来たようだよ」

 早い! ユーディットがエフィムを手招きして部屋から出ると、ちょうど金髪の男性が走ってきた。彼は叫ぶ。


「エリーザ!」


 その瞬間、エリーザの目が死んだ。金髪の男性に肩をつかまれるが、エリーザはその場に突っ立っていた。


「ああっ。無事でよかったよ、エリーザ! 久しぶりだね! とても美しくなった。さすがは私の妹だ!」


 この人がエリーザ曰く「変態」のジークハルト殿下か。ユーディットは確かに変な人だな、と思う。後からこちらも金髪の男性、ヴィルヘルムとキリル、それにメアリとハインリヒも駆けつけてきた。ユーディットはとりあえず兄に話しかける。


「お兄様、早かったね」

「早かったねって、もう真夜中近いんだよ。メアリがいなかったら見つからなかったよ」


 ヴィルヘルムが少し呆れたように言った。ユーディットはメアリに礼を言った。

「ありがとう、メアリ」

「んー」

 メアリは微笑んでユーディットの頭をなでた。


「まあ、私の探査魔法に引っかかったのも、あんたたちの魔力容量が大きいからなんだけどね。っていうか、なんで誘拐されたの」

「ええっと。エリーザが……」

「あの子か」

 メアリがジークハルトに掴まっているエリーザを見た。つられてユーディットもそちらを見るが、相変わらずエリーザの目が死んでいる。さすがに赤の帝国に帰国させられそうになったときは抵抗した。


「いやです! 帰りません!」

「そんな! 私といるのが嫌なのか!?」

「わが身を振り返れ、この変態!」


 うむ。母親が違うとはいえ、実の兄に言う言葉とは思えないひどさだ。さしものメアリも苦笑している。

「というか、何故、ジークハルト殿下が?」

「ああ……エリーザは帝国皇女だからね。ジークハルト殿下に協力を要請するのが一番いいと思ったんだ。赤の帝国と荒事を起こしたくないからね」

 ヴィルヘルムが困惑気味の笑顔で言った。協力を要請するのはいいけど、それでエリーザを連れてかれたら、意味ないんじゃないだろうか。


「紫の王国側はエフィム殿下が誘拐されたこと、知ってるの?」


 とりあえず、エリーザは放っておく。自分で何とかするだろう。たぶん。ユーディットはエフィムをちらっと振り返って尋ねた。これにはハインリヒが答える。

「大丈夫。ルスラン殿下とフロレンツィア様に、エフィム殿下がいないことに気付かれないようにしてもらっている」

 っていうことは、みんなが気づかない間に帰らなきゃいけないんだね。よくわかった。

 にしても、何故にエフィムは誘拐されたのか。そして、何故ユーディットたちは殺されなかったのか。謎は残るが、とりあえず。

「エリーザ。帰るよ」

 メアリがエリーザに声をかけた。エリーザはすぐさまジークハルトを振り払い、ユーディットの隣まで来た。


「エリーザベト! こんなにも君を思って言っているのに、君は聞いてくれないのかい!?」

「ふざけたこと言ってないで、ついてこないと置いて行きますよ」


 エリーザが薄情にも言った。ジークハルトがしぶしぶと言った感じでついて来る。もしかして彼は、この異母妹に弱いのだろうか。


 さて。みんながこちらの不在に気づかないうちに、会場に帰らなければ。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。相変わらずわかりづらくて済みません。


この話はどんどんキャラと国が増えますね。ラウルス城に集まってくる奴らは複雑な事情を抱えてるやつが多いですね。住人ではないけれど、ユーディットもそうですね。


ここで軽く背景説明。

紫の王国には王妃(故人)、第1夫人、第2夫人がいます。ルスランは第1夫人、エフィムは第2夫人の子ども。王妃は王女を1人生んでお亡くなりになりました。

というわけで、ルスランが王太子。そして、第2夫人の実家がエフィムを王太子にしようとたくらむ。まあ、普通のお家騒動ですね。

その一環として起こったのが今回の事件。ルスラン派に所属している(と自分たちは思っている)一派がエフィムを誘拐。殺すのではなく、のちにルスランが助けに来ることで、彼の名声をあげて、第2夫人の実家がルスランに感謝するように仕向けよう、というちょっとずれた考えから。よって、間の悪いユディもエリーザも連れ去られただけ。殺してしまっては好感度が下がりますからね。という設定ということにしています。


ちなみに、エリーザが自分たちの力を使わなかったのは、2人の魔法の効果範囲が広すぎること、影響力が強すぎることを考えて、エリーザは使用することをやめました。まあ、その気になれば、素手でも倒せたと思います。たぶん。でも、めんどくさかったので、助けてもらえることを信じて捕まったんですね。巻き込まれたユディ、憐れ。


ちなみに、カレーリン宮殿はエカテリーナ宮殿をイメージしています。

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