男「クールさんの昔話」
男「昔、男性から裏切りを受けたからだよね。クールさんはそのことを許せないし、乗り切れていないんだと思う」
クールに確認のように告げることを申し訳なく思うが、クールに話を聞いてもらうにはこれしかないと思った。
クールの肩がびくんと揺れる。
それと同時に口をぎゅっと結んで固まってしまった。
そんなクールの姿をみて男の胸はずきっと痛んだ。
――友から聞いたクールの話というのはこういうものだった。
友とクールが中学校の時の話である。
同じクラスで積が隣同士だった友とクールはそれなりに話しをして仲良くなったそうだ。
中学生という異性に不安定な時期もあって、まわりから囃し立てられたりすることもあったが、相手にせず無視していたらしい。
そんな友はクールのことが異性として好きになってしまったが、その心の機微を察知したのかクールは友に恋愛相談をもちかけた。
そこで友は失恋してしまったのだが、その相手というのが友の部活の部長。
クールが必死に頼み込むので断ることもできずに、友は部長を紹介した。
次の日には、学校でクールとその部長が付き合ったという話で持ちきりだったらしい。
ここで終わればハッピーエンドなのだが、現実というものは非常だった。
二人が付き合うことになって一ヶ月ほどたったあとにその事件は起きた。
部長とその仲間の数人でクールに性的に迫ったのだという。
そのときは偶然近くに正義感をもった人がいて助けたためになんとかなったらしいが、一つ間違っていれば危ないところだったらしい。
その危なかったらしい、というのもうわさなので、真実とは違っている可能性もある。
部長とその仲間は法的な処置を受けて、そのあとどこかへと越していったそうだ。
……クールの心に深い傷跡を残して。
男はクールへと向きなおす。
ひどいことを言ってしまった。
でも、このままこの問題を放っておいてもクールは傷ついたままだと思うのだ。
だから、例え自分が悪役になったとしてもクールの心を囲んでいる鎖から開放するのだ。