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5.フォーリー


『温和で豪傑な城の柱』





5.フォーリー・エンデラス Lv.――


特徴:女官長 女傑 温和


バルデロの後宮を管理する初老の女官長。元々はギルベルトの乳母だった。ユサという息子が一人いて、ギルベルトの乳兄弟にあたる。側近の一人で今は王都にいない。ギルベルトはフォーリーの意見なら耳を傾けることもあるので、女傑の二つ名を持つが、気性は至って温和な貴婦人。レイディアの正体を知っている。後宮におけるレイディアの後見人も務めている。表で後宮の指揮をとっている事を見ても、影で動くレイディアを補佐する意味でも、名実共に後宮を支える一柱。ただし、蔭の存在を何となく知っている程度で深くは知らない。







~女傑の由来~


ある晴れた日のエンデラス家屋敷にて、休暇をとったフォーリー女官長とレイディアは、庭でお茶をすることにした。


良い香りのする茶の香りと、香ばしい焼き菓子のに臭いが庭にゆったりと漂う。レイディア達はいつもは自分でやることを、屋敷では使用人に任せ、二人はのんびりと庭を眺めた。


「久しぶりの休暇ですね」

フォーリーが穏やかに呟いた。レイディアも何となく和やかな気分になり、ゆっくりと頷いた。

「ええ」

「実は(わたくし)、ここ数年、休暇を取ったことがありませんでしたの」

「本当ですか? 大変でしたね」

「……まあ、これまでおちおち休んでもいられなかったものですから」

レイディアはその言葉に納得した。これまでレイディアが来るまでは、女官達を総べていたのはフォーリーである。

「あら、そういう意味ではありませんよ。女官達は私が一日二日いなくてもしっかり役目をこなせるよう躾けてありますもの」

…躾け?

「ええ、それは勿論、フォーリー女官長は後宮の者達をしっかり教育しているのは存じておりますが…」

「うふふ…私が手を焼いていたのは陛下と不肖の息子ですわ」

レイディアは彼女の息子を知っている。あまり会話を交わしたことはないが、活発で、如何にも武人といった出で立ちだったのが印象に残っている。そういえば彼らは乳兄弟だった筈だ。そしてその二人を育てたのは他でもない、城で女傑と敬われているフォーリー。レイディアは彼女がどのように彼らを育てたのか、俄かに興味が湧いた。

「王達は、どんな子供だったのですか?」

「ええ、そうですね…一言で言えば、くそがき、でしょうか」

…くそがき?

「………」

「あの二人が可愛かった時期は本当にはいはいするまでの赤子の頃までで、一人で歩けるようになってからは悪戯ばかりで。それが二人、いえ、三人いたものですから、一体私が何度雷を落としたか…」

「三人?」

「ああ、ええ、もう一人はダイダス大将軍ですわ。彼もそれはそれは手に負えない子供の様な方で…」

「………」

「図体が大きい分、ダイダス様を諫めるのは並大抵ではありませんでしたわ。何度剣の指南役をダイダスから外すよう先王陛下方に訴えたことか」

だんだん、ダイダス将軍の敬称が…

「………」

「それでも、何とかやって来れたのは、王妃様…ああ、今の王太后様が寛大な方で、私が陛下に対しても容赦なく叱り飛ばすのを微笑んで見守って下さったからですわ」

「……何だか、フォーリー女官長が大きな声で叱り飛ばす姿が思い浮かびません」

今のフォーリー女官長は女官達を叱る時は静かに諭すように説教をする。悪ガキ三人を追いかけて叱り飛ばしていたなんて、想像がつかない。

「あら、喉が枯れますから、無闇に大声を出してはおりませんでしたよ」

「今のように腰を据えて注意していたのですか?」

聞かん坊が三人いては、それは効果があったのだろうか。レイディアが尚も催促すると、フォーリーは照れたように微笑んだ。

「ふふ、さて、どうだったでしょうか。自分の昔話は恥ずかしいものですね」

フォーリーが誤魔化した時、間が良くお茶が入ったと使用人の声が二人の間に割って入って来た為、その話はうやむやになった。




後日、その日の会話を思い出したレイディアは、何気なくギルベルトとダイダスに直接過去のフォーリーについて訊ねると、二人とも一口同音に深くは聞くなと言って、それきり口を貝のように閉ざしてしまった。





別サイトでも、小説書いてます。詳しくは活動報告にて。

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