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第204話 やっぱもう、男はいっか~

 フランスは、ちょっと落ち着いてから、アミアンに聞いた。


「ダラム卿は、帝国に来て欲しいって言わなかったの?」


「そう言いたい気持ちはある、と言われました。でも……」


「でも?」


「わたしがお嬢様の側にいたいという気持ちを、今は邪魔したくないと」


 今は?

 じゃあ、もうちょっとしたら奪いに来る可能性が?


 フランスは、アミアンの顔を見て、眉をぎゅっとやりながら言った。


「アミアン、わたしに遠慮するのは、絶対にダメだからね?」


 アミアンが、優しい顔でうなずきながら言う。


「はい。それは、勿論です。それは、お嬢様がいちばん、嫌がることですからね。でも、今は……、先のことは考えないと決めたんです。すべて、主にまかせます」


「あら、そうなの?」


 フランスが首をかしげると、アミアンは、気楽な様子で言った。


「はい。だって、考え始めたら、随分複雑じゃないですか。身分や、住んでいる場所や、あまりに違う人間関係や、今までの生活環境ですよ? 現実的に考えると、お互いに気の迷いだと思った方が良いくらいです。いっそ、距離ができて落ち着いて、お互いの気持ちが自然的に消滅するほうが、ほっとするかもしれません」


 れ、冷静~。

 現実的~。


 さすがだわ、アミアン。


 アミアンが、フランスに向かって、にやっとしながら言った。


「それに、わたしは、まだ、お嬢様のこと以上に、ダラム様に心を傾けられていません」


 フランスは、感動してアミアンに抱きついて甘えた。


「アミアン~、もっと言って~、どのくらいわたしのこと好き~?」


「世界で一番、大好きです」


「わたしも、世界で一番、アミアンが大好き~」


 しばらく二人で好き好き言い合っていると、ふとアミアンが言った。


「お嬢様が、何もかも捨てて、陛下とともに行けないように、わたしもお嬢様を捨ててどこかには行けないんです。それは、お嬢様に気をつかうとか、そういうことではなくて、わたしの心がお嬢様のもとにあるからです」


「……」


「お嬢様のことは、アミアンが一番よく分かっています。教国の聖女であることを捨てられない気持ちもあるし、陛下の側にいたい気持ちもあるんですよね」


 フランスは、アミアンによしよしするように背中をぽんぽんとされて、思わず涙が出た。


 アミアンにはかなわない。


 フランスは、鼻をすすりながら言った。


「わたし、イギリスのこと好きになっちゃった。そうしちゃ、いけないのに……。思いを伝えるのも、しないほうが良かったかもしれない。イギリスにもつらい思いをさせるもの」


 アミアンが、うんうん、と優しい声で言いながら背をなでてくれる。



 なんだかもう、色々と言いたいことはあるけれど、とりあえず、これ。



 フランスは、泣きながら言った。


「わたしも、キスしたかったあ」


 アミアンが笑った。


「キスしなかったんですね」


「だってえ、キスしちゃったら、その先が気になるじゃない~」


 アミアンが笑いながら、なぐさめてくれる。


「お嬢様は好奇心旺盛ですもんね。よく、我慢しましたね」


「我慢したあ~。だって、男女のあれって気持ちいいんでしょ?」


 急にアミアンが、無表情になってフランスの両肩をつかみ、ひくい声で言った。


「どこのどいつが、お嬢様にそんなこと教えたんですか? 陛下ですか?」


 アミアンの、目がこわい。

 イギリスって言ったら、イギリスが出禁になりそう。


 フランスはかいつまんで、ヴラドと会った時のことを話した。


 アミアンが、ため息をついて言う。


「そんなことが……」


「そうなの、それで、ぴんと来たのよ。男女の営みって、なんかあぶない感じなんだって」


 アミアンが、フランスに言い聞かせるように言った。


「男女の行為が、気持ち良くなるのは、お互いに心をひらいていて、なおかつ、お互いが相手に尽くしてようやっと成り立つものです。全部が全部、そういうわけじゃないですからね」


「なんで、そんなに詳しいの」


「アリアンスに教えてもらいました」


 大人~。


 アミアンが、なんだか怖い顔で言う。


「男は、簡単にひとりで気持ちよくなろうとするゴミみたいなやつがたまにいます。ですから、決して男と軽々しくふたりになってはいけません」


「はい」


 フランスは、なんだかこわくなって、座り直し、黒イチゴ酒を自分の杯についで、ちょっと飲んだ。


 美味しい。


 聖女は黒イチゴ酒を飲んじゃだめ、みたいな事はなくって良かった。

 男女のことは、だめだけど。


 フランスは、ぽろっと言った。


「できないことばっかり考えたらつらくなっちゃうわね」


 アミアンが、黒イチゴ酒を飲みながら言った。


「陛下だけができると思いますけどね」


「何を?」


「教国から聖女を奪って守りきることです」


「停戦協定即破棄ものよ?」


「わたしは、どっちだっていいんです。お嬢様が教国で聖女として過ごすにしろ、帝国で陛下とすごしにしろ。大事なのは、お嬢様が幸せでいてくださることです」


 フランスは、心の底から言った。


「わたし、アミアンが一緒にいてくれるから、今しあわせ」


「わたしもお嬢様がいてくださるので、今しあわせです」


 嬉しい。


 フランスは、笑顔で言った。


「え~、やっぱもう、男はいっか。ややこしいし」


「そうですね」


 ふたりで笑う。


 しんどい面ばっかり見ちゃダメね、素敵な面を見なきゃ。

 フランスは肩の力をぬいて言った。


「考えたって、どうにもならないわね。もう、全部、主に祈りましょ」


「アーメン!」


 フランスは、楽しい気持ちに切り替えて言った。


「ねえ、イギリスって、ちょっとブールジュに似てると思う」


「嫌そうな顔をするとき、ちょっと似てるときありますね」


「でしょ!」


「ダラム様は、いじめ続けると、けっこうすぐ涙目になります」


「ええ、かわいい」


「かわいいですよね」



 ふたりで、好きな男のかわいいところを言い合う会になった。






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