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第196話 占い、当たる

 フランスは、ヴラドと握手しながら言った。


「ヴラド、ありがとう。あなたのおかげで、さがしものが見つかったわ」


「ほんとに、それがウリムとトンミムなのか? ちょっと小ぎれいなただの石だぞ」


「なぜか分からないけれど、これだって気がするの」


「もう、帰るのか」


 ヴラドが、なんだか寂しそうにした。


 フランスは笑顔で言った。


「もし、来られそうなら、遊びに来て。わたし、教国の教会にいるから。場所は……」


 イギリスが割って入る。


「そんなの教える必要ない」


「イギリス、おともだちでしょ。いじわるしちゃだめよ」


 すると、ヴラドが、フランスをひきよせてぎゅっとやった。

 フランスも、ちょっと戸惑いつつ、ヴラドの背をぽんぽんとする。


 ちょっと、肩のあたりで、妙に息を吸い込んでいる感じがするのが気になるけれど。


 なんて思いつつ、身を任せていたら、ヴラドが急にフランスの尻をなでたので、フランスは固まった。


 ひいい。

 何するのよ!


 ひっぱたいてやろうと思ったが、ぎゅっと抱きしめられるような形になっていて、それもできない。


 すると、ヴラドが叫びながら離れた。


 イギリスが、また思いっきりヴラドの髪をつかんでひっぱっている。


「痛いぞ! やめろ!」


「おまえこそ、いいかげんにしろ!」


 また、二人がつかみ合って、暴れようとする。

 フランスは、ため息をついた。


 もう、ほっといて、ひとりで帰りたい気がしてきた。


 フランスは、またふたりを落ち着かせた後、ヴラドに教会の場所を教えた。


「それじゃあね、ヴラド。また」


「ああ。またな、フランス。と、竜もどき」


「……」


 フランスとイギリスは、階段を上って、アロンの墓から出た。

 午後の陽射しがまぶしい。


 フランスは、分厚い石の板がもどされてから、その扉とも言えない扉を見て言った。


「ヴラドは、全然外には出ないのかしら……?」


「さあな」


 あたりには、今は誰もいないようだった。

 荒涼とした景色が広がっている。渇いた風と、どこまでも広がる空。


 ヴラドは、見送りにも、外に出ようとはしなかった。


 遊びに……来られるかしら。

 なんだか、心配ね。


 フランスが扉を見つめていると、イギリスが言った。


「また、おせっかいか」


「だって、こんなところにひとりでひきこもっていちゃ、気になるわ」


「放っておけ」


 フランスは手に入れた白い石を、陽にかざして見た。


 不思議な輝きがある。

 異なるふたつの輝き。


 片方がウリムで、片方がトンミムということかしら。


 ふたつの石だと思っていたけれど、ひとつの石なのね。


 イギリスが、ぽつりと言った。


「どうする?」


「ん? どうするって?」


「このまま、教会に戻ってもいいが、まだ一日の猶予がある」


「そうね」


「もし、きみが望むなら……」


「わたしが望むなら?」


「……アキテーヌに、行くこともできる」


 フランスが驚いてイギリスを見ると、彼は居心地悪そうに、すぐ言った。


「きみが望まないなら」


「行きたいわ」


 イギリスと目が合う。

 フランスは、笑顔で言った。


「わたし、あなたと、アキテーヌに行きたい」


 イギリスがうなずく。


 そんなこと、考えていてくれたのね。



 優しい人。




     *




 アキテーヌに着いたのは、もう夕暮れ時だった。


 いくつかの宿屋をまわって、ようやっと空きを見つけたが、一部屋しか空いていないようだった。


「わたしは、別にいいわ」


 もはや、本当に、いつものことだし。


 食堂で軽く食事をして、部屋に湯を用意してもらった。

 フランスはすぐに湯を使って、すっきりとした身体で窓辺に立って、夜風を楽しんだ。


 はあ、さっぱりね。


 アロンの墓がある場所って、風にも砂がまじるのかしら。

 身体も髪も砂だらけだったわ。


 フランスは、自分の濡れた髪をふきながら、窓の外を見た。


 となりの部屋でイギリスが湯を使っている音がする。


 一部屋しかなくても十分なくらい広いし、まあまあ高そうな宿屋よね。

 湯を使うのに、別の部屋がちゃんとついているし。


 イギリスが普段使う超高級宿屋のことを考えたら、下の下だろうけれど。

 馬車泊を考えると、天国だわ。


 イギリスのおかげで色んなところに行くのも、何も心配することがなくて、ほんと……。


 感謝しかないわね。



 ん?



 フランスは不穏な空気を感じて、勢いよくふりむいた。


 いま、何か……。


 部屋の中をあちこち見回す。


 いた!

 見つけてしまった。


 すごく、大きい、黒々とした虫……。


 壁にくっついている。

 フランスは、まばたきもせず、その虫をにらみつけた。


 う、動かないわよね。

 と、飛んだり……。


 その瞬間、黒い大きな虫が飛んだ。


「キャー―ッ‼」


 すぐに、イギリスが隣の部屋から飛び出してきた。

 腰に布をまいただけの状態で。


 しかし、今はイギリスのその姿に動揺している場合ではない。


 フランスは、飛んだ虫から、できるだけ離れようと、イギリスとドアの間をぬけて、隣の部屋にとびこもうとした。


 あせりすぎてイギリスとぶつかる。


 ぶつかった勢いのまま隣の部屋に踏み込みつつ、ふりむいた時、イギリスの腰の布が。



 はらりと落ちた。



 キャー―ッ‼





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