表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

第7章:「失われた調味料と異世界の扉」

 味変食堂の厨房は、今や日々のように賑わい、さまざまなアイデアが交錯する場所となっていた。しかし、その日はいつもと少し違っていた。何もないはずの壁の隙間から、まるで魔法のように「ひょこっと」現れた、古びた瓶が目を引いたのだ。

「菜々美、これ見て!こんな瓶、どこから……?」

 はるかが厨房の棚に埋もれていた瓶を取り出し、その蓋を開けてみた。瓶の中身は、見慣れないスパイスが詰まっているようで、全員の視線がその瓶に釘付けになった。

「……これは、どこから出てきたの?」

  菜々美が目を細めて瓶を見つめる。

  瓶の底には、古いラベルが貼られており、そこには「異世界・スパイスの扉」と記されていた。

「異世界……スパイス?」

  健太がその言葉に反応し、やや不安そうな表情を浮かべる。

「まさか、本当に異世界から持ち込んだスパイスがあるのか?」

  龍也が眉をひそめた。

「確かに、異世界の食材や調味料って、以前も聞いたことがあるわ。でも、こんな瓶、初めて見た……」

 菜々美は瓶を手に取り、何かしらの考えを巡らせるようにじっと見つめた。その時、突然、瓶の中から小さな光が漏れ始め、まるで目に見えない扉が開くような感覚が全員を包み込んだ。

「わわっ!何、これ!」

 はるかが驚きの声をあげると、瓶からふわりと現れたのは、透明な煙のようなものだった。煙はゆっくりと空中に漂い、やがて誰かの手のひらに落ちると、静かに消えていった。

「……何が起きたんだ?」

 菜々美がその後、ゆっくりと空気を読みながら、瓶の内容物を慎重に確認し始めた。

「この瓶……何か、古代の調味料に関する“鍵”みたいなものだわ。これを使えば、“スパイスの扉”を開けられるかもしれない」

 その言葉に、みんなが静まり返る。

「スパイスの扉……って、どういう意味?」

 菜々美は瓶を両手で大切に持ち上げ、ゆっくりとその蓋を再び閉めた。

「“スパイスの扉”って、伝説にもあるわ。異世界の料理に使われている“失われたスパイス”を手に入れることで、異世界のレシピや料理法が解ける、という……でも、この瓶はその鍵なのかもしれない」

 その言葉を聞いて、みんなの目が一斉に輝いた。

「異世界のレシピ!?それ、めっちゃ面白そう!」

「それって、もしかして……本当に異世界の料理を食べられるかも?」

「よし、早速調べてみよう!」

 みんなが一斉に動き出す中、ただひとり、冷静に状況を見守っている者がいた。

「……でも、こういうのって、実際にはあまりうまくいかないことが多いよな」

 それは、優月だった。いつも理論派で、料理においても絶対的な信念を持つ彼は、この異世界のスパイスが本当に役立つのか疑問を感じていた。

「確かに、理論的には面白い。でも、こういうのは慎重に進めるべきだ」

 菜々美は微笑みながらも、その言葉に耳を傾けた。

「もちろん、慎重にやるわ。だけど、このチャンスを逃したくないの。新しい味を追い求めることが、私たちの目標でもあるんだから」

「……わかった。それなら、俺もサポートする。でも、最終的には味がすべてだからな」

 優月が納得した様子で答え、みんなの視線が再びその瓶に注がれた。

「じゃあ、これを使って、まずはレシピを見てみよう!」

  菜々美が意気込みを見せ、瓶を開けた。

 すると──瓶の中から、次々に浮かび上がる古代のレシピと、異世界の料理法が描かれたカードが現れた。

「これ、何かのメニュー表みたいだ!」

 はるかが手を伸ばし、そのカードを取り出すと、そこには「火焰スープ」や「月の花のスパイシーサラダ」といった、異世界らしい名前が並んでいた。

「この料理……本当に作れるのか?」

「うーん、ちょっと自信はないけど、まずは試してみる価値はありそうよ」

 菜々美はレシピカードを手にし、みんなに向かって微笑んだ。

「新しい味、発見してみよう!異世界の料理を、私たちの味に変えてみせるわ」

 その瞬間、食堂の空気が一変した。異世界のスパイスとレシピが、味変食堂の新たな挑戦を引き寄せ、すべてが未知の領域へと進んでいくような予感を感じさせた。


 次の日──食堂には新たな異世界料理が並び、客たちの好奇心を引きつけていた。

「これが、異世界の味……」

 菜々美は料理を前にして、慎重にその味を確認する。異世界のスパイスがどんな風に食材と絡み合い、食べる人にどんな影響を与えるのか──それを確かめる瞬間が訪れていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ