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第九十五章 餓鬼の島・赫骸、覚醒

 夜の太平洋。豪華貨客船「クイーンマザー号」が出港の汽笛を鳴らす。船内は異様な熱気と光に包まれている。


 クイーンマザー号、地下二階。アクションシアターホール。


 観客の歓声、スピーカーからの重低音、押し寄せる重圧感。


 リング正面のスクリーンに字幕が躍っている。


DSPN WORLDWIDE EXCLUSIVE LIVE!


THE LAST FLAME - RING.01


 映像が世界各地のパブリックビューイングへと切り替わる──上海、ニューヨーク、ドバイ、ナイロビ、サンパウロ……無数の観衆が歓声をあげる。


 今夜から、三日三晩行われる、クイーンマザー・アクションシアターのスペシャルイベントは、非公開競技ではなく、DSPNケーブルTVから全世界に配信される。


 クイーンマザー号の最下層。巨大な円形のアリーナを中心に、四方に組まれた観覧席には財界人、傭兵、地下組織、GSI、邪馬統の幹部はもちろん、世界一周のツーリストらが酒と薬と歓声に酔っている。


 モニター音声(男声・煽情的):「本日のThe Last Flame──その炎の幕開けだァッ!!!」


 DJ(電子音):

 ブォン……ズオォ……ズシン……(重低音が空気を歪ませる)


 MC(リングアナ・女声/エキセントリック)


「リングをご覧ください!青コーナー、鉄火場で血を浴び、裏社会で語られた伝説が──いま地獄から蘇るッ!!」


「さあ皆様お待ちかねッ!大日本帝国帝都最凶の“鉄砲玉”、血の復讐に名を刻んだ伝説の狂犬──ッ!伝説のジャパニーズマフィアのドン山内組三代目を“喉笛一閃”に沈め、報復に襲い掛かったたヒットマン10名を3分で瞬殺!!いまやリングでしか血を浴びられぬ、業火の逃亡者──」


(ライトが一点に集中、リング中央へ照射)


 MC「その名もッ……ッ!!種田守男たねだ・もりおーーーッ!!!」


(リング中央、無言で立つ筋肉質の男。傷跡だらけの裸上半身、左肩に入った「巖鉄堀田一家」の旧刺青が剥げかけている)


 観客(男たち)「うおおおおお!!」「殺せやッ種田ァ!!」「血ィ見せろォ!」


「対するは……、ロシア・PMC・ズルロイ・メドヴィーチが送り込んだ"赫骸"の死の実験体──骨が赫く、血が眠る……無音の戦場より蘇った、赫の亡霊ッ!!ウクライナの戦災孤児にして赫い細胞をその身に宿した、完造赫戦士001号―――ッ!!」


(深紅の光が天井から滴り、スモークがリング脇に吹き出す)


 BGMが流れる。


 モーツァルト交響曲第40番・第1楽章、激情と整然さの同居。


 モーツァルトの整った旋律は、緊張と混乱の中で“規則性”をもたらす安定剤、死の恐怖を「美学」に昇華させる冷徹な意図が見え隠れする。


 MC「“赫骸かくがい”ッ!!ワジキ・J・ストロゴフーーーッ!!!!」


(ワジキ登場。無表情のまま、ゆっくりと歩を進める。左腕の赫骨化《セラミクロナイゼ―ジョン》が進行し、関節がギチギチと軋む音が鳴る)


 ワジキは、ウクライナ紛争下の灰燼都市で発見された戦災孤児。両親は空爆により死亡し、重度の火傷と内臓損傷を負いながらも、数日間廃墟で生存していた。


 その異常な生命力に着目したズルロイは、当時密かに入手していた赫の一族の凍結骨髄、臍帯血由来を用い、彼に赫因子の移植手術を施した。


 手術は数度にわたり激しい拒絶反応と臓器破壊を繰り返したが、最終的に成功。


 結果、彼の肉体は赫の細胞とズルロイ式生体兵装技術の融合体と化し、制御困難な「異能兵」となった。


 彼の噂を聞いた、陣幕源治はこうも言い放ったという。


「奴は赫でもズルロイでもない。"中間"にして、最も美しい“矛盾”だ。…その刃で赫の魂を屠る、まさに赫の墓標となりうるだろう」


 客席の熱狂は、いやが上にも盛り上がってくる。



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