第八十四章 餓鬼の島・私刑
「止めろ……!」
瀬尾が呻く。
だが芦名の手は、感情を持たぬ機械のように躊躇いなく動いた。
ジュッ!
灼熱の金属が、皮膚に触れた瞬間――。
瀬尾の身体が仰け反り、悲鳴が炸裂した。
「ぐああああああああッ!!」
背中が跳ね、拘束具が軋む。
鉄と肉の焼ける匂いが、工場の空気を満たしていく。
芦名は目を伏せることなく、釘を引いた。
皮膚が焦げ、焼き切られた神経が痙攣する。
瀬尾の全身が泡立つように汗に濡れていた。
痛みに顔を歪めたまま、歯を食いしばる。
「……てめぇらの……言いなりに……なるくらいなら……死んだほうが……マシだ……」
その言葉に、黒田の目が細くなった。
次の瞬間、彼の手が動いた。
ナイフの柄が、瀬尾の胸にめり込む。
ただし、刺してはいない。
骨の隙間を狙った"圧迫"だった。
肋骨が音を立て、気管が閉じ、瀬尾は咳き込むように血を吐いた。
「神崎はな……お前らだけじゃない。俺たちも探してる」
瀬尾の口角がわずかに吊り上がる。
芦名が、次の道具を手に取った。
ペンチの先に挟まれたのは、錆びた細い針金。
息が詰まっていた。
もはや、呼吸ではなかった。
喉の奥で呻く音が血と混じり、気管に逆流してくる。
瀬尾の指は既に数本が折れていた。
手の甲は暗紫色に腫れあがり、足の爪は何枚か剥がれていた。
顔の皮膚は焼け、耳の後ろには焼け焦げた痕。
それでもまだ、彼の口は閉じていた。
「……やるね」
黒田が低く呟いた。
「だが、どこまで持つかね……」
芦名は無言で、新たな器具――神経針を取り出す。
眼球に刺入、視神経を直接焼き切ることも可能。
瀬尾のまぶたが、わずかに痙攣した。
工場の天井から吊るされた鎖が、かすかに鳴った。
――粛々と拷問は、続いた。
呻き、血の飛沫、骨を砕く金属音。
それらが、まるで生き物のように、闇に響きわたっていった。




