第五十六章 餓鬼の島・死亡遊戯
に、強力な結界が張られてる。中から出るのはできる。けど、外から入るのは、貴方の波で裂くしかない」
綾乃は、静かに頷いた。
「"無双響波"なら、氷艶妃・晶華の氷結界には干渉できる。でも、"感情のエナジー"で共鳴増幅しなければここからは、届かない」
遥は、そっと綾乃の肩に手を置いた。
「私たちは、力で壊すためにここにいるんじゃない。灯を、戻すために来たの。届かせましょう、"無双響波"を」
綾乃は目を閉じ、掌を前に差し出す。
その指先から、微かな波動が広がっていく。
「……あったかい……彼女、心の中でまだ祈ってる」
遥は、その波動に合わせるように、自らの"赫の律動"を開放する。
赤い気配が、淡く彼女の背に灯る。
ふたりの律動が重なる。
波と、風と、赫の気配が交錯し、
桃幻苑の開門の氷結界が――わずかに、音を立てて、揺れて隙が生じた。
「この結界の隙に、私が入る。綾乃、あなたはここで"音"を送り続けて。灯の心を縛るものを、緩めてあげて」
綾乃の声が震える。
「一緒に行きます!」
遥は、静かに首を振った。
「私は"剣"。あなたは"響き"。灯を救うには、両方必要。でも、同じ場所にいる必要はない。だから、私は"斬る"。あなたは、"響かせて"。あなたは闘いの場に向かう必要はない……」
「いえ、私はお姉様を護ります。一緒に行かせてください!」
「……わかったわ、じゃあ、一緒に参りましょう」
3
仁斗呂は、彼女に声をかける。
「きみ、名前は?」
灯は一瞬、戸惑い、それでも答える。
「……も、ももやま……あかり、です」
仁斗呂は、名刺を差し出した。
それは、"教育者としての矜持"で刷られたもの。
> 神宮寺学院 生徒指導主任
> 仁斗呂 爆
灯の瞳が、大きく見開かれる。
「……に、とろ……せんせい……?」
その声には、怯えと、微かな希望が、交わっていた。




