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第三十六章 餓鬼の島・脅迫

   1


 その頃、ロムルス・デスコバルは、砂漠の熱風が吹きすさぶ中東国際空港に降り立っていた。彼の額には汗が滲み、心には不安が渦巻いていた。


 ミア農業相と共に、サン・ディオス共和国の食糧危機を救うための交渉に挑む彼の胸中には、使命感と焦燥が入り混じっていた。


 もっとも、正確に言うならば、先日来、突然、連絡が途絶えた妹の行方を案じての焦燥もあった。


 深夜のホテルの部屋で、ロムルスのスマホが鳴った。


 画面には見知らぬ番号が表示されている。彼が通話ボタンを押すと、低く冷たい声が耳に飛び込んできた。


「ロムルス・デスコバル。妹の行方が気になるか」


「何ッ!」


「まあ、心配だろうな。いいことを教えてやる。お前の妹のエスメラルダは我々の手中にある」


 その言葉に、ロムルスの心臓は凍りついた。


 妹、エスメラルダが拉致されたというのか。


 信じがたい現実が、彼の目の前に突きつけられた。


「お前の妹は、我ら、ハーヴェスターが管理するGSI実験農場に侵入して、逮捕された。このまま、彼女を密殺処分するのは簡単だ。しかし、兄の貴様が、サン・ディオスの高官であることをお知りになった、ゲーレン・ダストCEO様が、実に慈悲深い裁定を下された。我々の提示する条件を呑めば、彼女に生きるチャンスをくださるというのだ。今から、その条件を伝える。ミア・マリエッタ・ミズキの動きを逐一報告しろ、そして、ミアには忠誠を尽くす振りをして、裏で密かに徹底的に交渉を妨害しろ。さもなくば、妹の命はない」


 GSIは独立した研究機関、というのは表向きで、実際は、ハーヴェスター傘下の研究所の一つだったのだ。


 電話の向こうの声は、容赦なく命令を下した。


「……わかった。条件は呑む。いつ、妹を返してくれる?」


「賢い選択だ。来春、我々は、大型クルーズ船クイーンマザー号で、ベトナムのカイメップ・チーバイ港を出港し、全世界征服の旅に出発する、ゲーレン様と、タロット米大統領をお連れして、東京に寄港する。そこで、ミア大臣は妻子ある男を追いかけて『失踪』を遂げる予定だ。もちろん『失踪』する手伝いはお前にやってもらうがね、エスメラルダの返還はそのあとだ、ミアの身柄をいただいたあと、引き換えにお前に渡す」


「……了解だ、それまで、妹には指一本も手を出すな」


「ふっ、努力はするが……。それでは、東京で逢えることを楽しみにしている」


 ロムルスは、妹の命と引き換えに、ミアを裏切るという選択を迫られた。


 彼の心は激しく揺れ動いた。


 妹を救いたいという思いと、ミアへの忠誠心が交錯する。


 しかし、彼には選択の余地はなかった。


 妹の命を守るため、彼はハーヴェスターの命令に従うことを決意した。


 ロムルスは、ミアに気づかれぬよう、密かに彼女の行動を監視し、ハーヴェスターに情報を流した。


 そして、東京での交渉の際、ハーヴェスターに宿泊するホテルを教え、ミアがホテルの部屋で拉致される手引きをした。


 彼の心には、深い罪悪感が渦巻いていた。


 されど、ロムルスは完全にハーヴェスターに従ったわけではなかった。


 彼は、ミアの救出を恩師お花茶屋博士と、その仲間たちに託して、彼女の救出を願っていたのだっ

 彼の行動は、裏切りと忠誠の狭間で揺れ動く、苦悩の選択だった。


 XYZを、一気に呷った、ロムルスの肩に、孟谷が手をまわした。


 固い握手――。


 しかし、ロムルスは、未だ、孟谷に語っていない、怖ろしい秘密をはらに隠し持っていたのだった……。



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