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エピローグ/私の好きなライオン

 「1番かどうかは分からんけど、3番目までなら入ってるかと思って」

 近嵐は、コーヒーをゆっくりと飲んだ。


 「大した自信ね」

 ギルタブリルは、不満げな表情で、コーヒーを飲む近嵐を睨みつけた。


 「そういえば、結局、ギルタブリルは何をお願いしたんだ?」

 「……別に、何でもいいでしょう」

 「え。あ~、お前もしかして……」

 「うるさいなぁ……。やっぱり死んじゃえば良かったのに。はい、婚姻届けの印鑑、押しといたわよ。結婚式のスピーチは、何分くれるの? あ、余興はどうする? 魔法使ってイリュージョンする? 派手なやつ。特別に500円で良いわ」

 「……いや、こぢんまりとした式なんで……。まぁ、やってくれるなら見たいけど……え、ほんと?」


 ***


 「ライオンのお姫様は、三つの願いのうち、一つは王子様を生き返らせるために使いました。一つは、王子様と同じだけ、齢を取りながら生きられるようにお願いしました。そしてもう一つは、自分のことをずっと助けてくれていた親友のサソリのお姫様にあげました。ライオンのお姫様と王子さまは、幸せに暮らしたそうです。めでたしめでたし」


 ハナは、高校のボランティアの一環で、毎週土曜日の午前中に、児童館の子供たちに自作の紙芝居を読み聞かせをしていた。


 「サソリのお姫様はどうなったの?ずっと生きていなくちゃいけない呪いは?」

 「サソリのお姫様はね、ライオンのお姫様と一緒に齢を取りますようにって、お願いしたんですって。ほんと、仲が良いのね」


***


 アメリカに来るのは2回目。

 1回目は中学校の海外派遣に応募して、何とか選ばれた。

 今回は高校の夏休みをパン屋さんのアルバイトに費やしてため込んだお金で、純粋に遊びに来た。

 

 ハナはシカゴ空港内のカフェでツムギとコーヒーを飲みながら、離発着する飛行機を眺めていた。

 

 もうすぐ、羽田から到着する飛行機を待ちながら。

 

 合流したら、夕方の便でニューオリンズに飛ぶ。

 お母さんは、ミュージカルより、本場のストリートミュージックが聞きたいそうで。 

 

 「自分で飛んでくれば早いのに。お金もかからないし」

 「人間の乗り物が好きなのよ。それに、飛行機の中でお父さんとゆっくり映画でも見ながら食事して、寝て、一緒に過ごしたかったんじゃないかな」

 「はぁ。仲のよろしいことで」

 「そっちはどうなの?」

 「それがね、金沢ったら……。あ、来たわよ。行きましょ。この話はまた後で」

 「うん!」

 羽田からの飛行機から、たくさんの人々が降りてくる。

 その中で、遠目からも分かる、お母さんの姿。

 

 「ハナちゃん!」

 

 お父さんの隣で。 

 手を振って、夏の日差しに向日葵よりも明るく、黄金色に輝く、艶やかな毛並み。

 私を呼ぶ声は。

 わたしの好きなライオン。


                                        【おわり】

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