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7:秋(二度目)/こっち見てくださいよ。

 紅葉をバックにしたツムギとハナに向けて、ウガルルムはシャッターを切る。


 「紅葉を見に行きましょう」


 ツムギの提案で、繁華街の先にある市民公園に、現地集合となった。


 ハナとツムギは、大量に散って絨毯のようになった紅葉の葉を掴んで空にまき散らして遊んでいる。

 前髪が目にかからないよう、四葉のクローバーをあしらったヘアピンで髪を止め、グレーのパーカーに黒のスカートとスニーカーを履いたラフなハナの格好に対して、ツムギは茶色のチェックのワンピースに、白のソックス、黒いラウンドトゥの革靴で、いつも遊ぶ時よりも少し正装をしている雰囲気だった。


 ハナの楽しそうな笑顔を見つめているうち、近嵐は、ウガルルムにちゃんと聞かなければいけないという思いを強くした。


 「ルル、あのさ」 

 「?」


 近嵐は、ウガルルムに話しかけて、急に不安になり、口を閉ざした。


 「何ですか?」


 強い風が吹いて、紅葉が、銀杏が、赤と黄色の雨になって、降りてくる。


 「次の春も、ルルはここに居てくれるのか?」


 ウガルルムの頬を、風が撫でる。


 私は、ひどいな。

 今、近嵐さんの不安そうな顔を見て、すごく喜んでる。

 そんな不安そうな顔をされたら、もうどうにかなっちゃいますよ。

 春っていうのが、どんな意味かも、今は良く分かる。


 「居ても良いんですか? 賭けが終わっても?」


 多分、聞かなくても良いんだと思っていても、聞かずにはおれなかった。


 「……言わせるのかよ」

 「ちゃんと言ってくれないと、分からないですよ。私、ライオンだから」

 「……何だよそれ……まったく……」

 

 近嵐はため息をついた。

 「ルルが、居たいと思ってくれるなら……」

 「思ってくれるなら?」

 「あーもう、何だよ。分かるだろ?」

 「駄目です、ちゃんと言ってくれないと嫌です」

 「……くそ……」

 近嵐は、ポケットに手を突っ込み、斜め下を見つめる。

 「俺は、ルルに、ここに居て欲しい。だから……賭けとか関係なく……ここに居てくれ」

 「……」

 ウガルルムは、近嵐をじっと見つめた。

 視線を逸らす近嵐。

 

 「こっち見てくださいよ。」

 「恥ずかしいから、やだ」

 「大事な話をさせてください」

 「……大事な話?」

 近嵐の緊張が一気に高まる。

 

 「次のクリスマスに、神様が私を殺しに来ます」

 

 「……えーと……。」

 「戦っても、絶対勝てないんです。何か、そういう次元じゃないんですよね。あれは。だから、結果として私は、死んじゃうことになります」

 

 ルルの目は、真剣そのものだ。

 「正直、話に付いていけないが……。それが本当なら、俺はそいつを許さないぜ? 何とかして食い止めて……」

 「ありがとうございます……でも、それこそ、人間だと一息吹かれただけで、多分風圧で死んじゃうと思います……」

 「……」

 冗談を言っている感じでもない。


 「じゃあ、逃げようぜ。そいつが来ないところまで、一緒に行こう」

 「どこに居ても、私の場所は特定されてしまうので……。なるべく迷惑の掛からない場所で対峙するつもりです」

 「そんな……じゃあ俺は……」

 あまりの自分の無力さに、頭が真っ白になる。

 「えーと、ですね。それで、あの、改めてなんですけど」

 「?」

 何で、この話の流れで、恥ずかしそうにしてるんだ?

 「その……プ、ププ……」

 「んん?何だって?」

 ププ?

 「プ、プロポーズは、どうするのかなー。と」

 風が吹いて、がさがさと紅葉と銀杏をまき散らす。


 「……俺、今結構真面目な気持ちで聞いてたんだけど……」


 「私も、ものすごく真面目です! だから、賭けの話です!」

 あ。そうか。

 「もしかして、さ」

 「はい、何ていうか、ちょっとこういう流れはいかがなものかな、とは思いますけど、近嵐さんがプロポーズしてくれて、私が賭けに勝ったら、その、私、神を超える力が得られる契約になってるんです。そしたら、多分私は、引き分けるか勝つかして、死なずに済むので……その、終わったらとんずらして帰ってこようかな~。という話なんですが」

 「……」

 とんずら……?

「まぁ、その、そうすると近嵐さんは賭けに負けちゃうので、お金が手に入らないということになっちゃうので……。近嵐さんが、お金が欲しければ……っ!」

 感情がぐちゃぐちゃになった近嵐は、ウガルルムに近づいて、抱き寄せた。

 「金はもういい」

 「ひ、ひゃい……。」

 近嵐の腕の中で、ウガルルムは目をぐるぐるにして硬直した。


 「準備するからさ、少しだけ待ってくれ」


 どこからかけたたましい笛の音が響き、ツムギの付き添いで来ていた金沢が悲鳴のような怒鳴り声を上げた。

  「ちょっっと!近嵐さん!宇賀さん! 昼時の子供の前!! 夜に家でやってください!」

 「お、お父さん……」

 「ハナ、ここはアダルトだわ。あっちで遊びましょう……」

 「ち、違うんだ、これは諸事情で……」

 「何が違うんですか! 離れてください! 宇賀さんも駄目!」

 「えー、もうちょっと……」

 「駄目です。子供のいないところでやってください」

 金沢が鬼の形相で二人を引き離した。

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