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5:春(二度目)(4)もう完全に

「金堂先輩、資料のコピー終わりました! 後何か準備するものありますか?」

 ほんと、元気が良いなぁ。

「佐藤君、ありがとう」

 金堂はコーヒーを一口飲みながら、この春に入社した新人の佐藤から書類を受け取った。

 陸上の長距離を長いことやっていたとかで、すらっとした体育会系で、かつ、さわやかな笑顔。

 今の時代にも、こんな若者がいるんだな。ああ、若者が……とか、思ってる時点で若さがない。まだ自分だって20代なんだから、これではいかん。

 子犬の様なきらきらした目で、佐藤君が指示を待っている。私も1年目は、こんな純粋な目をしててたっけか……。

 「じゃ、ちょっと処理して欲しいデータあるから、共有ドライブに入れておくね。指示のメッセージも送っておくから。席で待ってて」

 金堂にそう言われると、佐藤は心底嬉しそうに「はいっ!ありがとうございます! 金堂先輩の役に立てたら嬉しいです!」とお礼を言って、自席へ戻っていった。

 ええ~。もう、そんな前向きな……眩しい。

 金堂はコーヒーをもう一口啜って、近嵐の方に視線を送った。

 こっちは、全然純粋じゃないな。

 ため息をつく。


 クリスマスに、金髪美人をお姫様抱っこ。

 という、凄まじい光景は、春が来た今でも金堂の脳裏に焼き付いていた。

 いや、そうなんだ。モテないはずはないんだよね。ていうか、あれだけ女性に対して何にも動じないっていうのは、それだけ女性に免疫があるってことよね。

 上司としては相変わらず頼りにする気持ちはあった。ただ、以前のような恋心は、少しずつ、少しずつ薄らいでいっているのを感じていた。

 実際、その方が楽、というのもあった。一方で、ちゃんと顛末をつけたい、という思いもあった。 

 「近嵐係長、そういえば、その後、姪っ子さんは元気ですか」

 金堂は遠回しにさぐりをいれる。

 「ん? ああ、元気だよ。」

 「大学行きながら、いろいろお手伝いしてくれてるの、偉いですね。クリスマスは実家に帰られたりしたんですか?」

 「あ、いや。みんなで過ごしたよ。ハナの友達も呼んでさ」

 「へー。素敵ですね。みんなでケーキとか食べて?」

 「そうそう、あいつ、食いしん坊だからなぁ。子供たちと同じくらい食べてたよ。まったく。しかもさ……」

 私、みんなでケーキとか食べた話を聞いたんですけど。

 もう完全に好きでしょ、あの子のこと。

 別にいいんだけどさ。

 

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