4 冬(1度目)7/第一印象
昨晩のクリスマスイブのパーティの喧騒が嘘のように、近嵐とウガルルムとハナは、穏やかで静かな、3人のクリスマスを過ごしていた。
ハナは、自分の枕もとに、数年前に100均で買ってもらった、大きな真っ赤な靴下を横たえた。
近嵐が、夜中にやってきて、プレゼントのお菓子を入れてくれるのは、小学2年生の時から知っていた。
近嵐がお菓子を入れに来た時に床で転び、目を覚ましたからだ。
ハナは、赤い靴下の底に入った紙片に気が付き、それが何だったか、何を書いていたか思い出して赤面した。
1年前の、お父さんと二人きりのクリスマスイブ、クリスマスとは、すっかり変わった。
不思議な1年だった。でも、楽しかった。
ハナは、枕元の、くたくたになったライオンのぬいぐるみを抱き抱えた。
***
「あれ、ハナちゃんは?」
「あ、多分寝室。靴下の準備してるんじゃないかな」
「靴下?」
「……うん。世の中的には、子どもは寝るときに枕元に靴下を置いておくと、起きた時にプレゼントが入っている日なんだ。クリスマスって」
「はぁ。独特の習慣ですね」
「何か、ルルに言われるとほんとにそうだなと思うわ」
近嵐は昨日少しだけ残ったブッシュドノエルの切れ端をフォークで摘んだ。
そういや、1年前、ルルが来たときも、ケーキを直してもらったっけな。
「痛てて……」
僧侶に殴られた右肩が、角度によって痛む。
「大丈夫ですか?」
「……ダメもとで念のため聞くけど、人間の体は治せないんだよな……ルルが大好きな、美味しいケーキは直せるけど……」
「む? 何やら言葉に若干のトゲを感じますが、気のせいでしょうか」
「ああ、気のせいだ」
だいぶ、日本語の読解能力が上がったな、この1年で……。
「まぁ、前も言いましたが、人間っていうか、生き物カテゴリは治せないんですよね。生きてるって、複雑な現象ですよ。あ、だから、えっと、その……」
「ん? なんだよ……?」
ウガルルムは急にもごもごし始める。
「……昨日はありがとうございます。でも、私、怪我とか病気とか治せないし、あんまり無茶しないでください。その……近嵐さんに何かあったら困るし、怪我とかしないように、次からは私が守りますから……」
「え……、あ、ああ。そりゃ、ありがとう……」
急に優しい言葉で心配をされ、不意を突かれた近嵐は、照れくさくなり、ほうじ茶を一口啜る。
言った方のウガルルムも赤くなったまま黙り込んだ。
テレビのクリスマス特番の音が、ぼんやりと部屋に流れていた。
1年前の、ちょうど今頃。この賭が始まった時は、まさかこんな風に、炬燵でルルと、ケーキの残りを食べながら、こんな話をして、こんな気持ちになっているとは思わなかった。
ふと、近嵐はウガルルムの方に視線を送った
思い起こせば、ルルが来てから、良いことの方がずっと多いじゃないか。
テレビでは、街を行くカップルや夫婦に、第一印象を聞いて回るという、クリスマスの夜の企画としては少なからず人の神経を逆撫でするようなインタビューが行われていた。
第一印象、か。
「近嵐さんて……私に最初会った時、その……どう思いました?」
「え?初めて会ったとき?」
近嵐は斜め上を見つめた。




