表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/60

1:春(一度目)(1)

 目覚ましが鳴る数分前。

 よからぬ気配に、近嵐明人ちからしあきとは目を覚ました。

 気だるい、月曜日の出勤前。隣の布団に、小学5年生の娘、ハナの姿はない。

 だが、気配がする。

 獣の気配。背筋に緊張が走る。何かが飛び掛かってくる。

 「おはようございます! それでは結婚してください!」

 「うわああああ!」

 目の前が金色の毛束に覆われる。

 「馬鹿! 離れろ! 降りろ!」

 馬乗りになった金色のライオンに向かって近嵐は怒鳴った。

 ふさふさとした毛に包まれた大きな肉球に抑えつけられ、近嵐の両腕は動かない。だが、絶妙に力加減をしているのか、案外柔らかく、痛みはない。

 「あ、この姿じゃダメでしたっけ。はい」

 ライオンの周りを光が包み、人間の形に変わっていく。と同時に近嵐は青ざめた。

 「お前! やめろ! なんだその恰好!」

 「え、「ねっと」で見ましたよ。人間の男はこれが好きなんでしょう? どうですか? 好きになりました? 結婚する気になりました?」

 「なるわけ……ないだろー‼」

 腹筋に全力を集中し、腕を抑えつけられたまま何とか身体を起こす。

 「変なもん検索してんじゃねぇ! ふ、服を着ろ!」

 裸にエプロン姿のウガルルムに対して、近嵐が怒鳴る。

 「ウガちゃん! お父さん! 早く起きて! もう7時過ぎたよ!」

 「うわああああ! 駄目! ハナちゃん! 開けちゃだめ!」

 近嵐は、ダイニングキッチンから襖を開けて顔を出したハナの姿に慌てる。

 「え? あれ? ウガちゃん、寒そう……」

 「あ、もう七時じゃないですか。近嵐さんが起きないから……」

 「お前が普通に起こさないからだ!」

 近嵐はひょいと布団から抜け出し、クローゼットに近づく。

 「ほら!着替えるから、出てけ!ハナちゃん、ごめんな。今行くから……」

 近嵐は、ベッドに裸エプロンのままぺたんと座り込んだウガルルムに対して、追い払うように手を振り、クローゼットの中からシャツとネクタイを出そうと背を向ける。

 その刹那、股間を涼やかな隙間風が吹き抜けていく。

 「おかしーなー。やっぱり、ダンセイキとやらが無いから駄目なんですかねぇ。コウフンしてヨクジョウして、好きになるって書いてあったのになぁ」

 パジャマのズボンとトランクスを一気にずりおろされた近嵐は、一瞬硬直する。

 すぐさまクローゼットの中から大型のポンプ式の水鉄砲を取り出し、振り返り様、照準をウガルルムに合わせた。

 それはマタタビを浸した水をたっぷりと充填した、近嵐の対ウガルルム用備え付け水鉄砲だった。

 「いい加減にしろーーーー‼」

 「きゃー‼止めてください‼ それ、ヒリヒリするんですってば! 雷よ!集まって刺され!」

 ウガルルムが虚空に指を走らせると、近嵐に向かって電撃の束が襲い掛かる。

 「ギャー‼痛ぇ‼ 電撃止めろ!」

 「ウガちゃん! お父さん! ご飯だってば! 遊んでないで! 遅刻するよ!」

 ハナの声が、古びた2LⅮKのアパートに響き渡った。


読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価・ブクマいただけたらとっても嬉しいです!


ここら辺だけ、コミカライズしてるので、エックスで探してみてもらえたらちょっと嬉しいです(みてみんで取り込め! という声が……許してください。そのうちやります、多分)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ