厨二物が描きたかった。
とある高校の、3ーD組で二人の男が話していた。
「なぁ、田中。いつまでそれやってんの?」
「我が右手に宿し殺戮龍、全てを殺し尽くせ! スパーノヴァ!」
そう言いながら右手に巻かれた包帯と左手をクロスさせ、周囲の注目を集める男こそ、田中健一である。
見ての通り、手に負えないほどの厨二病だ。
そんな彼だが、何やかんや今の今までに仲良くさせてもらっている。
俺は休み時間の中、窓際と言う特等席を利用して思う存分、窓から見える雪景色を楽しみながら思い出す。
こいつの出会いは今から1年ほど前、桜が舞う季節のことだった。
俺は進級に心を躍らせながら、高校の敷地内に貼られているクラス分けの表をみた。
どうやら高校最後のクラス分けは、3ーD組でおっとり美人で噂の泉京子先生らしい。
当たりである。
俺のそんな嬉しい気持ちを心に必死に押し留めて、表情筋を鬼にした。
この階段を上がってすぐ場所に3ーD組はある。
ゆっくりと扉に手をかけた。
即に他のクラスメイトは席についているのだろうか、そんな心待ちにしていた俺を待ち受けていたの驚きの光景だった。
「俺名前はジェノサイド、ディスティニー、アルティメット、ダークネス。呼びずらかったら田中、と呼んでくれ。」
「は?」
そう、教室のど真ん中で、ヤバい奴がいた。
そしてよりによって、そんなヤバい奴の隣である。
俺がさっさと席に着くと奴も椅子に腰をかけた。
「さっき言った通り、俺はジェノサイド、ディスティニー、アルティメット、ダークネス。これからの運命を共に背負う中だ。呼びずらかったら田中と呼んでくれ。」
「お、おぅ。」
もはや通常のやり取りではない中、今回大目玉の先生が扉を優雅に開けて入ってきた。
ちょうど窓から覗く太陽がスポットライトのようになっていて、とても嬉しい神々しい……っ!
「女神だ……っ!」
そんなこんなで、色々コイツとは訳があって現在に至る。
「どうしたら碧。そんな顔をして。もしかして悪魔に取り憑かれたか? それならばこの俺が少し力を……」
「いや、大丈夫だから! 本当に。」
「ふん、そうか。」
たまに爆弾発言はある。それでも、やっぱり面白い。
改めて、コイツと縁があって本当に良かった。
するとトコトコと一人の女子生徒が俺たちに割り込んできた。
「何してるんですか?」
そう、スクールカースト上位。
そして学級員長の四ノ宮若葉さんである。
制服のスカート丈はいつも高速通りの膝下である。その膝下からたまに覗かされる神秘の絶対領域、たまにしか表さないのがポイントであり、旨みだ。
こんなヤバそうな俺たちにも話しかけてくれるし、何より接しやすい。
学級委員だから特別厳しいでもないし、何より超が着くほどの美人さんだ。
「序列2位の四ノ宮……か。ジェノサイド、ディスティニー、アルティメット、ダークネスだ。呼びずらかったら田中と呼んでくれ。それで何かあったか?」
するといつもの定型文を並べる田中。
それには流石の員長も顔が引き攣って仰られる。
「あー、何してんのかなぁ? と。うん。」
すると田中が顎の手を当てて思考を始めた。
10秒ほど経って、口を開く。
「これは今から4年前のことだ。中学2年生になった俺はいつものように席に座ったんだ。しかし、いきなり我が右手に殺戮龍が宿った。」
「お、ほぉ。」
「へ、へぇ」
お、おい。いきなりぶっ飛んでんなぁ?
俺に続いて四ノ宮さんが声を上げた。
奴は勢いを止まること知らないのか、そのままうるさい口を動かし続ける。
「そして俺は気づいた。この力は世界が俺に与えたのだと。世界は俺を中心に回っていると、な。」
「そ、そうか」
「ちょっと用事思い出したから、じゃぁ」
終わり。
おまけ
田中「我が右手に宿し殺戮龍よ、今その力を解き放て! 大地を凍り尽くし、世界を破壊しろ! 絶対零度」