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怖い話

作者: さば缶

 ある昼下がりの実話。

 部屋でTシャツ一枚、トランクス姿という、ほとんど寝巻きに近い恰好で昼下がりを過ごしていた。

あのときは気分もゆるみきっていて、床に寝っ転がりついうとうとしてしまった。

部屋の鍵はかけていなかったが、マンションの入り口がオートロックだし、そもそも昼間に誰かが訪ねてくるとも思えなかった。

その油断が、思いもよらない恐怖をもたらすなんて想像もしていなかった。


 突然、半裸で下は下着だけの男が、何の前触れもなく部屋に入ってきた。

呆気にとられるとはまさにこのことだと感じるくらい、身体が金縛りにあったように動かなかった。

声を出そうとしても喉が塞がれたみたいに苦しくて、どうにか「誰ですか?」と絞り出すのが精一杯だった。

相手も「あれ?」という感じでこちらの姿に驚いた様子だったが、それ以上に自分の恐怖心は大きく、頭の中は真っ白になっていた。


 男は部屋を間違えたと気づくと、足早に出ていった。

ぱたんとドアが閉まったあと、部屋には静けさが戻ったが、心臓の鼓動はまだうるさいほどに響いていた。

どうしようもなく、ただ震えが止まらなかった。

あんなに強い恐怖を覚えたのは初めてで、初めての感覚に少し混乱もしていた。


 それからしばらくしてようやく落ち着きを取り戻すと、自分が攻撃されていたらどうしたのかと、考えが頭をめぐった。

世間では女性が襲われる事件が起こると「もっと抵抗すればいい」「相手に一矢報いて逃げられるはずだ」などと軽く言う人がいるけれど、実際に恐怖が目の前に現れると、身体は凍りつき何もできなくなる。

あの瞬間、自分はただ布団の上で固まるしかなかった。

もし暴力的な目的で侵入してきた人物だったならと考えるだけで、思わず背筋が寒くなる。


 人間は想定外の事態に直面すると、本当に声も出ないし身動きも取れないものだと、今回の出来事で強く思い知らされた。

声を出すにしても、意外と喉が詰まってしまい、出したつもりの声がかすれるばかりで相手に伝わらないかもしれない。

ましてや逆襲しようという考えは、その場で浮かんだとしても身体がついていかないだろう。

日常の中であまりに安心していると、こんなふうに一瞬のうちに心を凍らせる出来事に出くわすのだと、あらためて実感した。

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― 新着の感想 ―
怖かったですね。 ご無事でなによりです。 年末に芸能人が部屋を間違えて謹慎になった事件がありましたよね。 あれに「隣人なのに警察呼ぶか?」「鍵を閉めなかったのが悪い」「そこまでする?」などなどの声が…
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