第五話 俺と同じぐらい強そうな男
何者かが斬りかかって来たーー
俺は瞬時に「時間停止」と叫ぶ。
やっべぇ、死ぬところだった。
この範囲の時間停止だと四分が限界だろう。合計で四分だ。
ここは時間停止を分割して使うべきなのだろうか。
とりあえず、困った時はエリシアに聞けばなんとかなる!
「助けて〜エリエモ〜ン!!!」
「はい、エリシアです。恐らくは敵ではないと思います。少し距離をおいて相手と話し合うのが良いと思います。あと、時間停止は複数回に分けて使用するべきです」
なるほど。恐らく敵ではないというのはどういうことだろうか。まあ、エリシアの言葉だ。信じるとしよう。
「ありがとう、エリシア!」
俺はエリシアの指示通りに動き、時間停止を解除する。
狙いすました攻撃を避けられた男は、瞬時にこちらを見て不思議そうな表情をしている。
男の外見は大剣を持ったお兄さんといった感じだろう。
「あなたは誰ですか?」
男はふっと肩を落として名乗った。状況を理解したのだろう。
「俺の名は轟天流聖級のヴィンセント・クロフォード。君の父親の護衛だよ」
なぬ?! 轟天流はこの世界の三大剣術流派の一つだ。聖級は流派の中で二番目の地位だ。
ってなんで世界の最強クラスの人がラウルの護衛なんてやってるんだよ〜!
「はっ、はじめまして。エ、エドガー・レイモンドですぅ」
緊張してやばい。こうして見てみると、あの変態魔王ガロムよりも強そう......
「よろしく! 君はその歳で瞬間移動ができるのか。これ程速い人は今まで見たことないよ。誇ると良い」
よくわからない解釈をしているみたいだけど、褒められた!
世界最強の人間に褒められたのだ。これは嬉しい。
「ありがとうごさいます。ところでこの部屋は一体何ですか?それに、ヴィンセントさんはなぜこの部屋で留守番してるんですか?」
なんでラウルの護衛をしていのか、とかも聞きたいけど、とりあえずはこの二つさえ教えてもらえれば、俺は満足だ。
「この部屋は君の父親の職場だ」
なるほど。確かに思い返せば、ラウルは家から出ることが少ない気がする。
「この部屋で留守番している理由は話すと長くなるが、いいか?」
「はい、大丈夫です!」
「もうすぐラウルさんが帰ってくるはずだ。それまでじっくり話してやろう!」
ヴィンセントの話を要約すると、どうやら父は昔、北の大国、フローディア王国で、若き地方領主にして、外交の責任者も兼ね、時期宰相の最有力候補だったらしい。
だが、父の勢力を恐れた当時の宰相が国王に謀反を企んでいると讒言し、父は家督を親戚に譲り、国外追放された。
刺客から逃げている際にヴィンセントと出会った。
その後、ここの領主トマス・ベネットに召し抱えられて今に至る。ここまでがヴィンセントが話してくれた内容だ。
大量の金貨は逃亡資金なのだろうか。それにしては多すぎると思うが。
そして、この部屋の書類の大半はは職務関係のものだろう。
「おっと、ラウルさんが帰って来たみたいだ!」