魔物の写真、動画買い取ります②
第二弾です。
私は、魔物や幻想的な風景の写真、動画を売り買いする店を営んでいる。
前回来た客の写真は、孫に好評だった。
「可愛い魔物が見れて嬉しい! おじいちゃんありがとう」と抱きついてきた孫はとても可愛かった。
カランカラン
おっと、今日も客がきた。
「ごめんください」
若い女性だ。冒険者にはみえない。はて、魔物の写真、動画など、撮る機会なんてあるのだろうか?
「いらっしゃい。どんなご用件かな?」
「魔物の動画を買い取って貰いたいんです……」
おや、予想に反して魔物の動画ときたか。
「みさせて貰おう」
「お願いします。これなんですが……」
女性はカバンから魔導具を取り出した。少し元気が無いようだ。
私は目を閉じ、魔導具を起動させる。
脳裏にある動画が再生されはじめた。
台所のテーブルに、花が飾られた花瓶が置かれている。
薬瓶を持った女性の腕が、花瓶の花に薬瓶の中身をかけようとして、誤って滑り落とした。
薬瓶が落ちた先には、スライムがいる。
薬瓶の中身がスライムにかかり、徐々にスライムが増殖し始めた。
スライムの増殖は止まらず、終いには台所を飛び出し、家の中全体に増えて、動画はそこで途切れる。
「……っ、面白いね。なんでこんなにスライムが増殖したんだい?」
「増殖薬をスライムにかけてしまったからです……」
増殖薬かあ。魔物にも効果があるんだね。
後で調薬学協会に注意喚起をしにいこう。
「この動画の後、幼い娘は怯えるし、仕事から帰ってきた夫には笑われて、散々だったんです……。急いで冒険者協会に駆除の依頼をして、今は落ち着きましたが、家に棲みついたスライムを放置するべきではありませんね……」
女性はせつせつと訴えてきた。
「それは大変だったね」
私は慰めの言葉をかけ、魔導具の代金を渡す。
「あら、思った以上にいただけるのね?」
「面白い動画だったから奮発したよ」
「嬉しいわ。ありがとう」
女性は笑顔になり、代金を受け取った。
「一つ聞きたいんだが、いいかね?」
「はい、どんなことですか?」
「なぜ、増殖薬を花にかけようとしたのかな?」
聞くと女性は恥ずかしそうに俯く。
「あの花、夫から贈られた花だったんです。嬉しくて思わず増やしたくなってしまったんです」
「旦那さんは、貴女を大切にしているんだね」
「そうでしょうか……? そうであれば幸せです」
女性はそう言うと、明るい表情で店から出て行った。
さて、行かないといけない場所もあることだ。
今日の営業は終了とさせてもらおう。
店の扉に閉店の看板をかけると、私は調薬学協会へ転移した。
増殖薬の危険性を伝えないといけないからね。
お読みいただきありがとうございました( ..)"