時を止めたシマウマ
完全に、シマウマになってしまった。シマウマなんて、嫌だ!
だけど、いくら、探しても見つからない。
時間を止める装置は。神様からもらった、ストップウォッチ。今どきなら、スマートフォンのアプリとかじゃないのって思うけど。
「時間を止める装置じゃ」って、お爺さんの神様からもらった。
「使い続けると、シマウマになるぞ」って、言われたけど。
好きな女の子に抱きつくのに、使った。
ある日、耳がシマウマになって。手が、足が。
神様に、『戻してほしいです』って、言おうと思って探したけど、見つからない。
そしたら、ある日、突然「よおっ」
振り向くと、神様。
神様に、「次、使うと、完全にシマウマになるぞ…」
だから、僕は、使うのをやめた。
でも、好きな女の子が転びそうなのを見て、思わず時間を止めた。
表面的に姿はシマウマでも、気持ちを入れると、人間のように、手足が使える。なんか、サナギから成虫になる感じだ。
しかし、軽い。シマウマになるんだぞ。
僕なんかに奇跡的に出来た、心優しい親友に、帽子と手袋を取って見せたら、驚かられた。
人間の生活、終わるのに……。もしかしたら、軽く生きてきた、つけを払わなくちゃいけなくなったとも、思えるけど。
僕は、シマウマに変わり始めた瞬間、時を止めた。
シマウマでも、二足歩行は出来ている。時を止めたら、僕が動けと思うもの以外は止まっている。
前に、自販機でジュースを買ったことがあった。
そんなことに、無駄づかいして、今は、シマウマだ。
僕は、人に見つからなさそうなとこまで、歩いた。
自然が、たっぷりなとこ。
そして、ストップウォッチを押そうとした。
ところが、ストップウォッチを探しても、見つからない。
僕は、弱った。
やっぱり、見つからなかった。
「探し物は、これかの?」
神様が、持っていた。
「あっ、それ、返して…。コホンッ。返してください」
「ダメじゃ、こんなもの無駄じゃ」神様は、首を振って、キッパリと言った。
「なっ、なんで…」
「お主は、時を止めて、何がしたい?」
「えっ?いや、今は、時が止まった状態…」
「まだ、真剣にならぬか…」
「………」
「なぜ、シマウマになったのに、話せておる?二本足で歩けておる?お主は、良き時へと直す男なのじゃ」
「と、言うと?」
「お主に真面目になってもらいたいので、シマウマに変わることを条件に、時を止めさせたのじゃ」
「真面目?」僕は、分からなかった。
「とにかく、お主が真面目にならないと、時は動かんからな」と、言われた。
真面目にって、言われても。僕は、ウロウロッ。二日間。町、街を。シマウマの姿で。なんで、僕だけ、時を止められるのだろう。こんなこと出来るなんて、悪魔みたいだ。
ああっ、でも、もう一回だけ、あの好きな女の子に抱きつきたいな。へへっ。
なんて、思ったけど。あの神様に、何されるか分からないからやめたのだ……。こういうところか?こういうところが、ふざけているのかな?
母親に、「時間は、有効に使わないといけないよ」って言われたことを思い出す。
僕が、時をストップさせている時間で人助け出来る人もいるんだよね。
「いらない……。時を止める力なんて、いらないです」僕は、神様に届けと思って、口に出した。
何も、起きなかった。
けれど、一時間程して、「偉い。どうやら、本気のようじゃのぅ」
「な、なんで、こんな力を僕に…?」
「悪魔が、喰っていた時間をワシはとりかえそうとした。しかし、それをストップウオッチの形に変えられ、人が使って放棄しないと良き時間に変えられないようにされた。悪魔は、悪く使わせて、その人間の魂を喰らって、また悪い時間に戻そうとしたのじゃ。
使う人間の悪設定を、なんとかお主程度のダメさをもつ人間に、出来た。
それと、ワシは、神の力で時を止めると、シマウマになるようにした。放棄させたいからのう。
まぁ、しかし、最終手段を使わないですんで、良かったわぃ」
「えっ、最終手段?」僕は、恐ろしい感じがした。
「フォッフォッ。何か、感じとったかのぅ。すまぬが、あまり悪い気が、ストップウオッチに移ると良くないのじゃ。
もし、後、一日、放棄をしなかったら……」
「放棄をしなかったら…」
「暴力的願望をもっている人間をライオンに変えて、お主を喰わせようと思っておったのじゃ。
三人ほど、ライオンに変えてな。そのライオンは、止まった時間の中でも、動けるようにする。そして、シマウマのお主が喰われたら、ライオンは記憶を消して、元の人間に戻す。
そして、時は、良き時間を使えるようになるのじゃ。ちょっと、血生臭くなるがのぅ」
終
神様、実は、怖ッ!!