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エルピスの甕

作者: 晦彌生

初投稿です。超短編です。

曰く、それは残り物だとか。

曰く、それは宝物だとか。

曰く、それは厄災を招く悪の根源だとか。

曰く、それは最後に残った希望だとか。


私はエルピス。

それらの表現はどれも間違ってはいない。

私は神々からの贈り物。それも悪意の。


神々より人の世に齎された一人の女と一つの甕。

女により甕は覗かれ、詰められた者達は嬉々として飛び去り、人の世に蔓延った。

しかし私は甕から出なかった。

出られなかったのではない、出なかった。

天より火を盗んだ彼らをさらなる奈落へ叩き落とすために私はあった。

この甕から散って行ったエリスの子たちを何度でもおびき寄せる餌として。

その為にあったのに彼らは私に縋らず、窮地を乗り越えた。

私は彼らから忘れ去られてしまった。


時は流れ、彼らの子孫が私を見つけ、私に縋る時が来た。

私が仕事できる時がようやくやってきたのだ。

私は張り切った。張り切りすぎてしまうほどに放置されてしまっていたのだ。私は悪くない。


私を見つけてくれた彼らに多少多めに手助けをした。

彼らは思いの外喜び、笑い、感謝をした。甕一つには大袈裟な社もでき、人々が賑やかしに来るようにもなった。


さて、私は仕事をしたのだ。エリスの子らよ、早く来るのだ。

皆が出て行った甕の中は少々寂しいのだ。

ポノスよ、元気にしているか。

プセウドスよ、君のでまかせが懐かしい。


私の仕事が足りないのか。ならばエリスの子らに届くようもっと仕事をしなければ。

人々よ、エリスの子を連れてくるのだ。


そして幾つかの年月を経た後、ようやくエリスの子の一人ホルコスがやってきた。

待ち兼ねたぞ、ホルコスよ。人々の世は如何であったか。

どれほどの厄災を齎したのだ。

そうか、君には向かない仕事であったか。

私も寂しかったのだ。丁度よい。ここでゆっくりしていくといい。

ところで君の兄弟たちの様子は知っているだろうか。

私も知らないのだ。


どうやらレーテーが頑張りすぎたようだな。

我々のことなどもう忘れて二度と帰らないのかもしれない。

それほどにこの人々の世は仕事のし甲斐があるのだろう。


そうだホルコスよ。知っているだろうか。

そうか誓いを立てたならば君の知らぬ所ではないか。

彼らは私を神と呼び、崇め、信仰の誓いを立てている。

我々の神を差し置いて我が身が信仰を受けようなど、私は神に顔向けできぬ。

…そうか。我々は神に誓いを立ててはおらぬな。そうであった。

ならば少しでも神へ信仰を還せるよう努力をしよう。



私はどこで道を誤ってしまったのか。

私はただ、甕に閉じ籠もって時々人の望みを少しばかり叶えただけだったのに。

私の仕事はただ、人々が縋る最後の僅かな望みを持たせ、エリスの子らの訪れを待つだけだったのに。

来たエリスの子はホルコスのみ。ホルコスよ。感謝する。そしてすまぬ。

君の兄弟たちは弱ってしまいもはやここには辿り着けないらしい。

私が強大になればなるほど彼らの存在が消えゆくようだ。

人々に求めたところでこの信仰が止むものでもない。

私の望みは潰えてしまった。



どこぞの私を見ている者よ、私はエルピス。

希望とは呼ぶな。私は希なる望みではない。

願望の成就を司る者である。

そして自らに絶望を宿すものである。

初投稿お目汚し失礼致しました。

説明の度合いや無駄な表現の追加から削除から、書くに連れて、推敲重ねるに連れて主題が呆けていく…

文章って本当に難しいものですね。

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