③石川旅
なんで行ったこともない石川県を山下波の出身地に選んだんだよ、過去の自分!!調べながら書くの大変なんだからな!うわあー、石川旅編、時間かかりそー。。。
2024/8/10 今日から土、日、月と3連休。
インドアな俺だが、友達はアウトドア派が多く、今日は石川県の金沢に行く予定を立てていた。
なぜにわざわざ石川なのだ?兵庫(北側)にいるんだから、香住や東浜でいいだろと思ってたが、
そいつ曰く、金沢クルーズターミナルでやるイベントに惹かれたらしい。目当ての内容は応援してるバンドの演奏会。そんな有名じゃないけど大好きなんだと。
てかお盆なのにターミナル営業してんだな。
あともう1人の合計男3人で行くわけだが、現地ではバラバラに過ごして、時間で集合してメシでも行って、ターミナルライトアップ見て、ゲーセン回って、温泉、からの部屋飲み。翌日は帰るだけの1泊2日のプラン。月曜はみんな実家で過ごすらしい。
もう1人のヤツは写真好きなため、風景自体を目的とした行動も盛り込まれている。クルーズターミナルもそのひとつだし、別行動では長町武家屋敷跡や21世紀美術館には絶対行くと鼻息荒くしている。
俺の場合誘われなきゃ出掛けないし、現地で別行動も一緒の時間もけっこう楽しいので、それぞれ結婚とかしちまう前にこういうイベントは積極参加。思い出作りだ。
金かかるから遠出は嫌なんだが、なんだかんだプラン立ててみると、楽しそうで楽しみになってくるから不思議。
地元、兵庫県の香美町を車で出てから京都府福知山でパーキング、福知山→福井県 敦賀まで特急。敦賀から新幹線で金沢。
それぞれの運転の負担よりちょっと高い移動賃で楽したい勢なので公共機関を利用。
金沢着いてからが不便だけど。
新幹線で駄弁ってる内に金沢駅到着。兵庫から約5時間半かかった。実際は福知山でラーメンしばいてるので6時間くらい。ずっと車でも良かったなとか話しながらとりあえず時間は15時前。バンドの演奏もあるしクルーズターミナルへ。
駅西口から出て、バスに揺られ30分ちょい。
到着。建物でか。そしてオープンしてまだ3年らしく、綺麗。
1階で演奏会らしい。まだ開演には時間があるものの、キッチンカーが建物前を占拠している。子連れも多く騒がしくて夏休みらしい。
一旦3人で建物を回り込んで海を眺める。
潮騒とウミネコ?の声がなにか郷愁感を誘う。
大型船が停泊できるらしいが、今は特に何も停まっていない。水平線にでかい船が見えるが、寄港してから拝もう。
2階の広々としたデッキでも展望を楽しめるので、そちらにも上がってみる。高い所から眺めるとまた違った風情がある。
時間もあるので建物内の食堂で遅い昼食を取る。イタリアンぽい。うまいし、日本海眺めながら食べれるのはいいな。さすがにここは事前に予約してた。
写真好きな方(通称うっちゃん)が一眼レフで撮りまくってて、ちょっとウザいが、こんなにテンション高い彼も珍しいので新鮮。
もう1人のバンド目当ての方(通称ハチ)はスマホをいじりながら、何か予定追加できないかみたいな話題を振ってくる。3人揃うの夜しかねぇよ。飲み歩いてもいいけどさ。
ご飯の後、バラけて行動。ハチは張り切って1階へ。
うっちゃんは一度ここを離れて武家屋敷跡に向かうらしい。合流は遅くなるかもと言ってる。まあ回りたいとこ沢山だろう。俺らも好きにやると言って送り出す。
1人になった俺は、改めて建物の外に出た。ガヤガヤとしたキッチンカーや若者たちの間を縫って海側へ。
なんか人が多いな。
そこで面白いものを見た。でかい船が来てたのは食堂からも見てたけど、寄港した船から、新幹線の先頭車両が、バカでかいキャタピラと腕を持ったクレーンにゆーっくりと地上に移されてるとこで、ちょっとした感動と驚きを受ける。
新幹線て、船で運ばれてんだ。すげぇー。
うっちゃんを悔しがらせようと写真撮って送りつける。地団駄スタンプが送られてきた。
しばらくぼーっと眺めてたら、周りにどんどん人が集まり始めたので、一旦退避しようと動く。
その時だった。
「すみません、写真撮ってもらえませんか?」
振り返ると女性3人組。俺とあまり年は変わらなそうだ。クレーンと新幹線をバックに撮りたいのだろう。
「いいですよ」
俺は快諾して、スマホを貸してもらい、自分的にいい感じになるように撮った。
「ありがとうございます!え、めっちゃ良くない!?」
「ナミ顔引きつってるよ?」
「ほんとだ、もっかい撮ろうよ」
「2人とも悪いけど、先に演奏会行ってて」
「え、どしたん?」
そのナミと呼ばれた女性は俺に向き直り、言った。
「いま暇でしたらあたしと一緒にこの辺見て周りません?」
!??
「えっ、マ!?」
「ミキちゃん開演の前に腹拵えしとこ!」
「あっ、そだね」
「じゃあナミ後でねー!」
あっと言う間に去る2人。
「いやいや、、、え?」困惑する俺。
「来て?いいとこ案内したげる」
彼女は俺の手を取って引っ張り始める。
人生初いや、おそらく初で最後の逆ナンを受けて混乱してしまった俺は、しばらくされるがままに。
「あたし山下波。さっきの親切な物腰に惹かれたのと、単純に顔がタイプなの。あたしけっこう肉食だから!強引でごめんけど、絶対好きになってもらうから。とりあえず着いて来て?後悔はさせない。って焦りすぎたけどカノジョいる?カノジョと来てるとか?」
彼女の顔は真っ赤だ。誘った理由が浅いし。なんか無理してない?てか声に聞き覚えあるのは気のせい?
「いないっすけど、、」
「よしっ。じゃぁ問題なし!」
「いやちょっと待って!、、どっかで会ってない?俺ら」
彼女はビクっと体が揺れたと思うと立ち止まる。俺はつんのめる。
体勢を立て直すと、強く握られた手と手汗で、今更照れが来る。おずおずと振り返った彼女は
「どこで会ったと思う?」
彼女は上から下まで白いワンピースの胸元あたりを暑いのかパタパタと空いた手で風を入れながら、海で鳴いているウミネコに遠い目をやって、俺に視線を戻す。
「たしか、、なんか声だけ、、」
彼女は下からムッと睨むと、わざとらしい笑顔で
「気のせいです。夢の中ででも会ったんじゃないですか?」
と言ったっきり、向き直って速度を速めて歩き出す。
俺は手をぐいぐい引かれるままに、着いていく。
夢の中?夢の中、、はて。なんで彼女の口から自分が俺の夢に現れたとかいう自意識過剰な言葉が出て来た。
思い込むと行き過ぎた行動しそうな片鱗がある気がした。
「ちょっと待て」
またも彼女はビクっとして、立ち止まり、おずおずと振り返る。さっきと全く同じ反応で面白い。
ほんとに肉食かよ、さっきから自信なさげってか何かを悟らせまいとする雰囲気バレバレだぞ。
「思い出した気がする、、母の形見のハンカチ、だっけ?」
「、、、。それ、ウソです。電話の相手はあたしで正解。もう捕まえたからには離しませんよ?」
こんなとこで会うとかどんな確率だよ!?
「なんでそんな嘘を?」
俺はテコでも動かない気持ちで踏ん張る。
「あなたに会うためです」
「なんで?」
「思い出して、くれないから」
「何を?」
「それを伝えてすぐ信じてくれるなら、こんな強引なことしません!」
「ますます怪しいな。とりあえず落ち着いた所で本当の話をきかせてくれ」
「まだダメです。まるっきりあたしを信じてくれてない。むしろ印象マイナス。でもあなたじゃなきゃ、ダメなんです。こんなことしてでも、あなただから、強引にでもなれてるの」
「もうワケわかんないよ?婉曲表現イラつくだけだし。印象悪くしかなってないんだけど」
「ここまでの縁なんて嫌です。毎夜怖くて、、でもわかってくれる人は、、って言っても伝わらないんですよね、、」
「埒明かないよ。本当の話をしてくれ、マジで。」
「、、、とりあえずデートと思って楽しみませんか?いい感じで友達になれそうと思ったら、合図ください。そこで話します。あたしの事少しは知ってもらわないと、信じられないと思います」
「…わかった。そちらがそれでいいなら」
「、、現実ではけっこうガード堅いんだね。ムッツリスケベ?」
「はっ!?」
「知ってるよ?あたしがどこか休憩で部屋借りてお話しようって言ったら、ホイホイ来るでしょ」
「んだそれ。行くわけねーだろ。いま怪しいヤツ判定下ってるから。調子乗んな」
「へえ…。ムッツリスケベは否定しないんだ」
「るせーな。どこ行くんだよじゃあ」
「いいとこ♡」
「からかうんじゃねーよ、、」