第二章:異世界での邂逅《婁アシュビー》2-5 かわいい正義と衝撃
アシュビーさんは、頬をぷくーと膨らませながら、「山田さん? 人が、二回はい、はい、と返事をする時は大抵、話聴いてない時です。」と語った。
え、あざとい。でも、そんな顔もほんとかわいい。
って、だめだ、だめだ、見蕩れている場合じゃない。
「いえいえ、そんなことないですよ。ちゃんと聴いていましたから。」
尚も聞けていなかったことを隠そうとする僕は、そう言いながらも、無意識に鼻をかいて、おまけに、自身の口元を触っていた。
そんな僕を今度はジトーした目で観察しながら、
「鼻をかくのは、ウソをついて、鼻の粘膜が乾き始めるから。口元に手を置いているのは、ウソをついている口元を隠したいから。なんですよ? 山田さん?」と行動の解説をされてしまった。
これは、まずい。こういう場合、これ以上ごまかすのは、愚策だと僕の経験が告げている。
そもそも、誤魔化すこと自体僕らしくなかった。ということで、僕は、素直に謝った。
アシュビーさんがあまりにも綺麗で、この世界が本物か考察をしてしまっていたこと、アシュビーさんに見蕩れていたこと、アシュビーさんは可愛いと思ったことなどなど、素直に伝えた。
アシュビーさんは、話途中くらいから、少し、そわそわしだしたり、むふーっと息を吐いていたが、「ま、まぁ、そういうことなら良いです。」とお許しをくださった。良かった。
でも、なぜアシュビーさん顔赤くなっているんだろう。大丈夫かな?
「アシュビーさん、顔赤いですが大丈夫ですか? アシュビーさんも僕の看病で疲れてしまったんじゃないんですか?」そういうと、ますます赤くなった……様な気がする。
「大丈夫! です! ……、これ以上は、自制効かなくなるから……」
後半何を言っているか聞き取れなかったが、結局、怒られてしまった。やっぱり、仕事上では、クレームなんて出さないのだけれど、プライベートになると、途端に女性に怒られる頻度が高くなる。気がする。不思議だ。
「で、そろそろ、お話の続きしても良いですか?」と顔をパンパンと叩き、アシュビーさんは気を取り直したのか、僕に尋てくれた。断る理由などないので、大丈夫です。と返答した。
「まず、再確認ですが、この世界での店舗の運営。嫌では、ありませんか。今回の辞令は、目的を達成するまで、山田さんの世界へは帰還できないものですが、それでも、大丈夫ですか?」と心配そうにアシュビーさんは、尋ねてくれる。
「もちろん、大丈夫ですよ。」他の、辞令ならいざ知らず、今回は、アシュビーさんと一緒なのだ。もちろん、こんな美人な方と働けるのもとっても楽しみだ。
が、真面目な話、アシュビーさんが一緒に仕事をしてくれるのは戦力的に、とても大きいと僕は感じている。出会って数日(体感的には数時間)しかたっていないけれど、言動や、身振り手振り、あと、仕事上数多くの人をみてきた勘でわかる。普通の雇われの会社員ではない。とてつもなく優秀な、大企業の社長のような、下手すると、国を治められそうな、そんな桁違いの優秀さを持っている。
しばらく帰国できないのが少し厳しいけれど、母さんは、僕が店長になってからは、第二の人生を謳歌していて、ここ数年、暇もなさそうだし、友人たちも、仕事やら、結婚やらで、あんまり会う時間もない。つまるところ国に帰っても、することが無いのだ。で、あれば、この国で働くのに、大きな支障はなさそうなのだから、肯定するほかないのである。
思いのほか、すぐに返答した僕に、アシュビーさんは、少し驚きつつも、ほっとした顔をした後に、「ありがとうございます。」と嬉しそうに言いながら抱きつかれた。
この身長差だと、彼女の腕にすっぽり収まる自分が情けない。
それにしても、と思考を巡らす。アシュビーさんって思いの外、ボディタッチが多いんだな。
やはり、名前や外観からして、出身は海外なのだろうか?それとも、ハーフなのかな?
しかし、それ程、感謝されることでもないと思うのだけれど、いや、でも、よく考えてみれば、突然、見知らぬ異国の地へやられ、一緒にきた男性が突然気を失い、三日も眠り続けたんだ。そんな目にあった人間ならば目覚めて、途端に帰国を言い出すかもしれない。不安になるのが普通だろう。
コホンッと咳払いをし、「では、」と彼女は、語りだした。
「まず、ここが、山田さんの住む世界と違う、異世界なのは、出発時に社長から聴かれていたお話ですので、割愛しますがよろしいですか?」
え?異世界?ナニソレ…?
サブタイトルって何をつければ良いんですかね?