第二章:異世界での邂逅《婁アシュビー》2-4 主人公、もしかしてDT?
綺麗なお姉さんから「大切な話」があると言われた、ショタ(疑似)。
真剣な紅い瞳で、ずいっと顔をより近づけて話をされるアシュビーさん。
突然だが、紳士淑女の皆様。同志諸君!お判りいただけるであろうか。甲斐甲斐しく看病をしてくれた絶世の美女が!両手を握って、人払いまでした上で!大切な話があるんです。なんてことを言われた日には!絶対に勘違いをしてしまう。
――ア、コレ、オレニキガアルンダワー。キット、ヒトメボレデシタ、スキ、ケッコンシテー――、と告白されるんだ!
なんて勘違いする。きっとする!と思うのです。
しかし、僕は御年27歳の大人。だから、わかる!
これは、思わせぶりなセリフを吐くけど、本人にその気は微塵もなくて、期待した自分が、空回ったあげく、黒歴史をつくって、湯船につかっているときに思い出して、あーーってなって、どうしようもなくいたたまれなくなる類の場面だと!そんな経験ないけど!そんな不思議な確信がある!
だから、落ち着け。落ち着け、僕。そう、ここは、携帯ショップの店長としてそして、アダルティな大人として、落ち着いて、大人の威厳を示すんだ。あー、やばい心臓ドクンドクン鳴っている。
「ありがとうごじゃ、ございます。……、今後のお話についてですね。して、どういった内容でしょうか。」噛んだー、噛んじまったよ。落ち着いた大人の男にみせようとしたのに噛んでしまったよー。あぁ、もういいや。やめだ、やめだ。普通の自分でいこう。
「はい、まず、第一点目にここが何処なのか。第二点目に私達の目的は、何なのか。第三点目に、これからについて。の計三点についてです。これらは、知っていただく必要性があると判断致しましたので。しかし、それよりも前に――。」
アシュビーさん、噛んだこと流してくれている。うそ、優しい。これが、出来る秘書か。でも、やっぱり大切な話は告白とかではなかったのね。悲しみ。
しかし、確かに。僕は、ここが何処かもわからない。村長さんや、ヘレーさん。落ちた平原の雰囲気からいって、現実的に考えると、海外だろうとは思う。
でも、あんな一瞬で、社長室から海外へ移動できるだろうか。実は、あの社長室にいたどこかのタイミングで、僕が眠らされて海外に運ばれた線はないだろうか。いや、そもそも、だからといって、なんで、パラシュートなしスカイダイビングをさせられなきゃいけないんだ。それに、アシュビーさんが助けてくれなかったら、僕は、あの高さから落ちて、死んでいた。そういや、あの時、アシュビーさん浮いていたような?
そして、仮にも、成人男性である僕、いや、まぁ小さいけれど、それでも!片手で軽々つまみ上げて、姫様抱っこで、村まで運ぶなんて芸当、こんな可憐な女性に簡単に出来るとは思えない。いや、そもそも、アシュビーさんみたいな綺麗な人が、この世に存在することとかありえないかもしれない。
ということは、これは僕のつくりだした夢の世界で――。
「あのー、山田さん? 山田さん、聴いてます?」ハッと、妄想の世界から、意識を取り戻し、アシュビーさんの声に反応する。
「あ、はいはい。大丈夫ですよ。聞いていますよ。」と僕は生返事をしながら、彼女の顔をみると彼女は、頬をぷくーと膨らませていた。
コツコツがんばろう。