第四章:診療所の主《イアお爺様》4-1 第二の美少年登場。
診療所へやっと到着した山田一行。
――診療所内へ
コンッ、コンッ、コンッ。
「おじゃましまーす」
ギィ、と扉を開いて、洞の診療所内へ入る。
診療所の中は、外の明るい陽射しと打って変わって、薄暗く、静寂が包んでおり、ツーンと香草のような匂いが漂っていた。
「えーと、ヘレーちゃん、ここに本当にお医者様のいらっしゃるんですか?」
人の気配がしないのを不審に思ったんだろう。アシュビーさんはヘレーさんに確認を取った。
「えぇ、確かにここにいらっしゃると思うんですが――。おかしいですね」
ヘレーさんも困惑しているところを見ると、やはり通常の状態では、ないのだろう。
「……、もしかして、ご高齢だというのなら、どこかで倒れていたりしませんかね?」あってほしくない最悪の想定をし、二人に意見してみる。
「いや、でも、……そうですね。少し手分けして探してみましょう」
そういうや否や、ヘレーさんは指示を出し始めた。
……、なんというか、こういうの手慣れているよな。この子。うちの店でチーフとかになってくれないかぁ。なんて、ことを考えながら、彼女の話を聴いていた。
「じゃぁ、私は、二階から四階まで、見てきますので、アシュさんは一階をお願いします。ヤマダサンは、大人しくしていてくださいね」
そういってヘレーさんは上階へ向かった。
え、いや、「大人しくするって何? 僕は、子どもじゃないんだよ?」
「うふふ、ぼくー大人しくしてまちょうねぇ~」
ほら、そんなこと言うと、こうやって、アシュビーさんが、すぐ調子乗るから。今朝、家を出た時よりも、若干小さくなった手のひらで、アシュビーさんのおでこを叩く。
ペチンッ!
「いたーい。もう、冗談じゃないですかぁ」
そんなことを言いながら、彼女は、スッと床に僕を下ろした。
「ともかく、山田さん。今の身体で、うろつかないでくださいね。サイズ感とか、思いっきり幼児なんですから。危ないですよ?」そう言いながら、彼女も、探索を始めた。
しかし、女性二人に探させて、自分ひとり探さないのは気が引ける。
身体の感覚が、魔素流出の影響なのか、いまいちはっきりしなくなってはいるが、僕もよたよたと探索を開始した。
実際、僕の身長は今何センチほどなんだろう。
元の身長より更に縮んでいる、ような気がする。床が近くなるにつれ、消滅という恐怖が近づいてくる。
ブルブル
ダメだ、ダメ。弱気になってはいけない。
それにしても、10cmって結構変わるんだな。周りの大きさが段違いだ。
でも、この身長も考えようだよな。もし、ここのお医者が倒れていたのなら、この視点の方が探しやすいから。
そんなことを考えながら、椅子をどかして机の下をみてみたり、ベッド下を探したりしてみた。まぁ、こんなところにいるとは思えないが。捜せども、捜せども、見つからない――。
かれこれ、30分は捜していると思うがいない。というか、この診療所、外観と中の広さ釣り合って無くない?どこまで奥あるの?30分歩いて、回り切れないってどういうことですか。
とりあえず、歩き疲れたこともあり、一息つこうと、ベッドに飛び乗った。
「ふがっ!」
え、今の音何?なんか、子どもの声のようなの聞こえたよ?
というか、このベッドなんか膨らんでないですかね?そんなことを考えていると、飛び乗った時に腰を下ろした辺りの掛布団がもぞもぞし始めた。
え、え、え、
「うわぁぁぁぁぁっっっ!」気付いた時には、大きな悲鳴を上げていた。
「どうしました!!!」すっごい速さで飛んできてくれたアシュビーさん。
「い、いた、ゆ、ゆ、幽霊!」ベッドから床へ転げ落ち、しりもちをついた状態で、震えながら、膨れ上がる掛布団を指さす。
そんな僕を他所に、少し不思議そうな顔をして、ツカツカと掛布団の近くへと歩いていくアシュビーさん。
「――、幽霊ってこれがですか?」等言うや否や、掛布団を引きはがした。
はぎとられた掛布団の下からは、なんとも見目麗しい、褐色肌の金髪碧眼の子どもが出てきた。
いや、キューティクルすごっ。さらっさらだ。見た目、7.8歳くらい?
でも、どうしてこんなところに子どもが?あ、もしかして、お医者のお孫さんか!いや、じゃぁ、肝心の、そのお医者のお爺さんはどこへ行ったんだ?
頭に疑問が飛びまくっていた。
そう、その子どもが口を開くまでは――。
「なんじゃぁ、お前ら。勝手にワシの診療所に入ってきおって! その上、ワシの貴重な睡眠まで邪魔しおって! 怪しい奴らじゃ。泥棒か、人攫いか、どっちなんじゃい!」
およそ、子どもに似つかわしくないしゃべり方に、しばし、二人思考が停止した。
なんだこの外見とミスマッチすぎる、すんごい残念な感じの話し方は。
「あー、そこの坊主。お前じゃな、ワシの上に突然、のしかかってきたやつは! 姉弟で日中から盗みを働くとは、なんと不届きな! 躾しなおしてくれるわ!」
また、弟と間違われるのね。もういいや。
「あの、いえっ、僕たちはその、ここにいらっしゃるお医者様を探しに来てですね、――」
人の話も聞かず、そういうや否や、
金髪碧眼の美しい子どもは、僕にとびかかってきた――。
やっと、四章に突入できたーーー!!!(三章が短いのは…、うん、しかたない!)