第二章:異世界での邂逅《婁アシュビー》2-9 アタマス家1階にて。《羨ま...けしからん!!》
綺麗なお姉さんに逆お姫様抱っこされる山田の運命はいかに…!
いや、確かに、子どもに間違えられた経験なんて数え切れない位にある。
通勤定期を買おうと列に並んだら、後列の女子高生の弟に勘違いされ定期が買えなかったり、近所のコンビニでお酒を買うにも、毎回、バイトの女子大生店員の弟に勘違いされ止められたり、挙句の果てに、仕事上りが遅くなったら、スーツを着ているのに警察に女性警官の弟に勘違いされ、補導される署に連れていかれる。いやはや、思い出したら、泣けてくる。
なので、子ども扱い、もとい、弟扱いは慣れている。が、事情を離せば、時間はかかるけれど、理解してくれるわけであって。
大抵、そこで、勘違いは収束するのだ。
ましてや、今回僕は、ここで三日も寝込んでいる。その間には、アシュビーさんは、村長さんやヘレーさんとしっかりとお話する機会があったはずで――。
はっ!僕は、二人に向けていた視線を、大きな双丘の向こうに見えるアシュビーさんに向けなおす。
あ、アシュビーさん今、意図的に視線逸らしましたよね。逸らしましたよね!
え、なに、下手な口笛で、ふすふす鳴らして誤魔化そうとしてるの!
あー、嫌な予感が的中した。この秘書、やけに僕と話するときニッコニコで、ボディタッチ多くて、そ、その、膝枕や着替えまで、し、て……。あー、思い出したら顔が熱くなってきた。
今までも、この手の輩には、何度か遭遇したから雰囲気で分かる。
アシュビーさん、きっとショタコンだ!!!
公然と、密着しても不審がられないように僕との関係性を姉弟にしていたんだ!
だって姉弟なら、着替えさせても違和感ないし、抱きかかえていても、不信じゃないもんね!
あー!そうと判ればこの体制でいる訳にはいかない。彼女たちは、恐ろしい。善意で優しくしてくれていると錯覚したが最後、どろどろに溶かされて依存させられる。
いやぁ、あの時は、危なかった。千佳ちゃんに助けてもらわなければ、どうなっていたかわからない――。
思い出すだけで身体が震える…。
ともかく!あんな経験は二度とごめんだ。とにかく、逃げなければ。
僕は、アシュビーさんの腕の中から、逃れようともがいた。「くそっ」「このっ」
しかし、僕の抵抗は、凶悪な柔らかい脂肪に、ふにふにと吸収され、抜け出すことが叶わない。
それに、アシュビーさんめちゃくちゃ力強い……。
ふと、視線を感じ、再度、上を見上げると、やけに興奮したアシュビーさんの視線とぶつかった。
「っっっっ! ~~っ、もう! 耐えられませんっ!」そう言うと、アシュビーさんは、公衆の面前で、僕を、ギューッと強く抱きしめた。
抵抗むなしく、今度は抱きしめられたが、その、
く、苦しい。し、死ぬ。呼吸が……。
巨大な胸と強い力に気道をふさがれた僕は、苦しさのあまり、じたばたと手足を振り回した。
あ、また、意識が遠のく。そんな考えが流れた矢先、救いの声が響いた――。
童顔と垢ぬけてなさって紙一重、だから難しいですよね。この場合の山田は、童顔です。というか、もう見た目子どもです。