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生まれ変わる1

 目が覚めると見たことのない光景が広がっていた。

 真っ暗な天井を照らす赤いシャンデリアは高級品のような形をしている。

 しかも目の前にはどこの誰か知らないきれいなブロンドヘアーをした美しい女性に、真っ黒な服を着た褐色で角の生えたイケメンが立っていた。


 訳がわからず、俺の発した声は、産声に近いものだった。

「貴方、ついに生まれました。私たち二人の子供です」

 目の前に移る綺麗な女性、全体には優しくて安らぎを与えてくれるような感触が伝わってくる。


「よく頑張ったなマリーナ、これが俺の子。可愛い顔してるな」

「私たちの子供ですもの、きっとどこの誰にも負けないほどの美形に育ちますよ」

「そうだな。名前を決めないと」

 

 目の前の二人は自分達の子供が生まれたかのような会話を繰り広げている。

 赤ん坊、そんなものは俺の目には写らない。そしてこの二人は俺の顔を見ながら話しているのだ。


 さて、どういうことなんだこれは。

 俺の事を赤ん坊扱いしているのかこの二人は。おかしい、どう考えても馬鹿だろこいつら

 だって今年で20才を向かえる立派な成人男性だぞ。


 毎日、世間の歯車に従わずにどんなに冷たい目を向けられようとも、家の中で別次元を旅して、様々な世界を救った英雄だ。

 時には恋に悩む乙女たちの悩みを聞き、選択して複数の恋人を作った恋愛マスターである。

 

 よく考えたら立派ではなかったな。


 だけどこんな大人に視線を向けているのは変だ。

「この子の名前は俺のバルレド・ジャングと、マリーナの名前を取って、マレド。マレド・ジャンクにしよう」

 突然男の方に視界が近くなり、さわられている感触が変わった。


「よろしくなマレド」

 そこである異変に気付いた。

 俺は全ての歯が無くなって喋れなくなっていた。


 それだけではない、腕も足も自由に動かせなくなっていて、立つことが出来ない。

 今までと違って視界が低くなっている。 

 

 そして決定的に今までと違うところがひとつだけある。

 それは手足の感覚が短くなっていることだ。

 まるで自分の体が縮んでいる。そんな気がしたのだ。


「あ~、う~」

 言葉を出そうとするとまるで赤ん坊のような声、これら全てが信じがたい真実を物語っていた。

 普通では考えられない事だが、間違いないだろう。


 この二人の赤ちゃんを前にしているような様子。

 異変の起きた俺の体、見たことのない部屋の景色。


 おそらく俺の身に何かが起こって、死んでしまい。目の前にいる夫婦の子供として生まれ変わったのだ。

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