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プロローグ
運命の朝。
僕の前にある鏡の中には一人の美少女が立っている。
少女はくるりと回転してみせる。
光沢のある黒タイツ、可憐に翻るフレアスカート、胸元の愛らしいリボン。これがこれから僕の戦闘服。特注ウィッグの色合いもバッチリだ。
「あ、あー。クリス」
「はい、坊ちゃん」
声を高めに整えて……傍に控えていた専属執事を呼ぶといつものように恭しい返事が返ってきた。
「ここにいる”私”は何者だ?」
「はい、紛うことなき”ご令嬢”でございます」
「そう……なら、”お嬢様”とお呼びなさい」
そう、ここにいるのはどこからどう見ても一人の少女。
自分で言っていて悲しくなってくるが今は悲観するときではない。
「行くわよ!我が戦場へ!!」
「学園ですよ。お嬢様」
僕は今日、魔法学園へ入学する。女として。