シグとの出会い1
ーーお兄ちゃん
ーー夏蓮
ーーかーくん
家族の声が聞こえる。
これは夢なのか……?
それともまた死んだのかな?
「……あ……りす……」
「目が覚めたか。
あと少しで俺の家だ。
まだ横になって休んでいろ」
背中から伝わる振動でカレンは目を覚ます。先程助けてくれた男は馬を繰り、カレンは馬車の荷台に寝かされていた。
この人が通りかかってくれなかったら自分は今頃どうなっていたのだろう。多分、あの汚い男達の妄想は現実となっていたに違いない……。
そう考えるとカレンはゾッとした。
「あ……あの……。
さっきはありがとうございました……」
カレンは横になったままお礼を言ったが、男からは短く返事が帰ってくる。
「話は後だ。」
その言葉に従い、カレンは再び目を閉じて大人しくする事にした。
(ところでセロはどうしたんだろう。草原から森に入ってから話しかけても反応が無くなってしまったけど……)
(ちゃんといるぞ)
唐突にカレンの疑問に答えるセロの声が頭の中に響く。
そしてその瞬間にカレンは悟った。もしかしてセロもアルティみたいに自分の考えがよめるのでは、と。
(俺とカレンは繋がっているからな。だからこうしてお互いに声を出さなくても会話出来るんだ。
ちなみに慣れれば伝えたい事以外は伝わらないように出来るよ)
(どうしてさっきは反応無かったのよ!)
(すまない。ギフトの封印解除に魔力を使いすぎて、寝てしまったみたいだ)
(セロって肝心なときに役立たずなんだね)
(役立たずだなんて酷い! 俺は魔力が殆ど空っぽになりながらも、カレンの服としての機能はなんとか維持してやってたんだぞ!)
カレンは軽口のつもりだったが、少し拗ねた様な声で自分の苦労を必死でアピールするセロ。
確かにさっきの状態で裸にされては、男達の劣情を増幅してしまって、助けが来る前にどうにかされていたかもしれない。
(う……取り敢えずは助かったし、今回は許してあげる)
(そうか! それなら良かった! エヘヘ)
カレンには、何が良かったのか分からなかったが、セロが自分の元から居なくなった訳ではないと分かってとても安心していた。
よく考えればカレンの服はセロ自身なのだから、居なくなった訳ではないと分かるはず。しかし、森に入ってセロの声が聞こえなくなってから、カレンは不安で冷静では無くなっていたのだった。
(だめだ、ほっとしたら目頭が熱くっなってきた)
人生で初めて暴漢に襲われたのだ。元が男でも恐怖を感じて当たり前だった。カレンの瞳は今にも溢れそうな涙。
しかし彼女はそれを誰にも知られないように指で拭うのだった。
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