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アリスの帰還

「アリス!!」


 突然帰還した妹。アジトのエントランスでその姿を見たとたん、カレンは無意識に駆け寄り、我が妹を抱きしめた。兄として生きていた頃は絶対にする事のなかった行為であるのだが、今の彼女(・・)にはそれが難なく出来てしまった。

 ただ、アリスは嫌がるだろうと予想していた。彼女はゲールに何故か従っていたし、彼の身を案じるような素振りを見せていたからだ。直接ではないにしろ、カレン達はゲールの死の一端を担っていたのは間違いないのだ。


 しかしアリスの反応は、そんなカレンの予想とは反したものだった。


「お兄ちゃん!! 会いたかったよぉ……。あ、今はお姉ちゃんって呼ぶ方が良かったかなぁ?」


 そう言いながらアリスもまたカレンへと腕を回し力を込める。


「ど、どうしたのアリス?! なんか性格変わってない?!」


 戸惑うカレン。それは二人の様子を見ているライラ、シグ、フォンも同じであった。ただ、ステイルとその横に立つキツネ目の男を覗いて。


「アリスは何も変わってないよ。へんなお兄……お姉ちゃん!」


 自分より若い容姿のカレンを兄または姉と呼ぶアリスの姿は誰の目にも奇妙に映ったことだろう。


「わ、わかったから、ちょっと一旦離れようね!! ステイルさん、説明してくれませんか?!」


 頬ずりしてくるアリスをカレンは無理やり引き剥がし、ステイルに説明を求める。


 しかし答えたのはキツネ目の男だった。


「ステイルさんも理解出来てないでしょうから私から説明しますね。

 アリスさんはゲールのマインドコントロールによって彼に依存させられていました。その方法は余りにも凄惨なのでここでは言いませんが、それによって彼女の自我はほとんど壊れていると言っても過言ではない状態です。

 そこで一旦彼女の依存する相手をカレンさん、貴女に無理矢理変更させて頂きました」


「依存先をゲールから私に? どうしてそんな事が可能なんですか?! あなたは一体……」


「おっと、これは失礼致しました。私はカイトと申します。現在の身分は訳あってお話することが出来ないのですが、私は転道者でして、転道前は精神科医をしておりました。ちなみに現在はアムス王の側近をしております」


 言えないと言っておきながら、全てを晒す男の自己紹介に、ライラは我慢出来ずにオイと突っ込んでしまう。


「どうも私、思った事をそのまま言ってしまう癖がありまして……。ついうっかり全て話してしまいましたね。ナイスツッコミです。美しいお嬢さん」


 面と向かって『美しい』などと、ほとんど言われた事がないライラは赤面して俯いてしまった。


 それを見ていたステイルはやれやれと首を横に振る。


「皆、コイツのいう事を真剣に聞くと頭がおかしくなっちまうぜ。自分じゃ何でも話す正直者なんて言っちゃいるが、その実は大嘘つきかもしれないからな」


「大嘘つきとは酷いですね。ま、そう思われても仕方の無い話し方だと自覚してますよ」


 そう言ってカイトもまた首を横に振る。


「話が脱線しましたね。カレンさんは今、何故わざわざ自分へと依存させたのかその理由を聞きたいのですよね?」


 カイトの問い掛けに無言で頷くカレン。


「先程も言った様に、アリスさんの自我は壊れかけています。その自我がなんとか粉々になっていなかったのは、ゲールと言う男に依存してきたからなのです。凄惨な体験を心の奥底に仕舞う為に。

 その依存から解き放つ事は、自らのトラウマと真正面から向き合うと言う事。今の状態では、それこそが彼女の心を砕くとどめとなるでしょう。

 なので今は、新たにカレンさんを依存先に設定し、ゆっくりと心のひび割れを修復していく必要があるのです。

 いつか過去の体験を受け入れられる程にアリスさんの心が回復した時には、本来の彼女が戻って来るはずですよ」


「……言ってる事、難しすぎて全然わかりません」


 カレンが正直に言う。周囲の者達もそれは同感だった。


「ええ、分かると思って説明してないですよ。あっ」


(今『あっ』て言った!!)

(言ったな)

(言ったね)

(言ったわね)

(言いやがった)


 テレパシーを感じながら、誰もがカイトに向けて冷たい視線を送る。それに気付いたのか、彼は居心地の悪さを吹き飛ばすように咳払いをする。


「コホン。簡単に言うと、カレンさんに依存して生活している間に、段々本来の彼女に戻るはずだと言うことですよ」


 カイトの説明中、アリスはカレンの手を握り、不安そうにそわそわしている。そんな彼女の頭を、カレンが優しく撫でてやると、とても嬉しそうにするのだった。


「取り敢えずこんな所で話さず、食事を取りながら話しませんか? 長旅でとても疲れてるので」


 カイトは図々しさなど微塵も感じていない様子でステイルに向って要求する。


「お、おう。そうだな……アリスも疲れてるだろうからな。食事しながら今後について話とするか」


 ステイルはそれに同意し、一同は商業スペース内にあるレストランへと向かうのだった。


「お姉ちゃん! ご飯だって! アリス何食べようかなぁ」


 嬉しそうに話すアリス。そんな妹を見るカレンは複雑だった。生前、妹がこれほど自分へ懐いた事はなく、どう接して良いのかわからないからだ。

 ただ、無事に帰って来た事は本当に嬉しい。カイトの言う通り、その内元のアリスに戻るのであれば、それまでこの娘を守るのは自分の新たな役目なのだとカレンは考えていた。



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