復活のフォン
ステイルとアリスがアジトから姿をくらませてから、もう一週間が経過していた。一度は帰りを待つのだと決心したカレンであったが、日が経つにつれて焦りの様な感情が芽生え、それが成長していくのが分かった。
一週間の間、アジトから出ることなく生活しており、ストレスが蓄積されていることも一因であろう。
「はぁー……。今日も帰って来なさそうだね」
カレンは、アジト内の喫茶で頬杖をつきながら憂鬱そうに呟いた。
「どうだろうな。だけど、どうしてステイルはアンタの妹を連れていったんだろうね。そもそも何処に行ったのかも、誰も教えてくれないけどね」
ライラがグラスに刺さったストローをくるくると回すと、コーヒーの中で浮かぶ氷がカラカラと音を立てている。
「ライラぁ、その話昨日もしたよ?」
「仕方ないじゃないか。これだけ毎日アンタと座って話してれば話題も尽きるってもんだよ」
二人は明らかに退屈極まりない様子。これ以上待ち続けていては、何をきっかけに溜め込んだストレスが爆発しかねない。
しかし、そんな二人のストレスを吹き飛ばすような出来事が今正に起ころうとしていた。
「二人共、憂鬱そうな顔しちゃって〜。私とお話出来ないのがそんなに辛かったの?」
カレンとライラの座るテーブルに向って聞き覚えのある声が飛んでくる。その声は、おっとりしているのだが、どこか色気を含んだもの。
「フォンちゃん!!」
二人は声の主の姿を確認する前に、テーブルに強く手を付き立ち上がり、声を揃えてその名を呼ぶ。
そう、ドルガによって重症を負わされ、ずっと意識を失っていたフォンがそこには立っていたのだった。
「はーい。皆が大好きなフォンちゃんの復活でーす」
そう言って顔の前で両手でピースサインをするフォン。しかしそれにより身体のバランスを崩した彼女はその場でよろけてしまう。
転げそうになるフォンに駆け寄り、カレンとライラはその身体を両側から支える。笑顔を見せていたフォンであったが、近くでみると額は汗で濡れているのが分かる。
「フォンちゃん意識が戻っただけで、本当は全然復活してないんでしょ?! まだ寝てないと駄目じゃない」
相当辛い状態なのだろう。彼女は肩で息をしている。それでも笑顔は崩さないのだが……。
「ごめんなさーい。目が冷めたら、全然状況が分からなくて、ついあなた達を探して歩き回っちゃった。でもカレンさんもライラさんも無事で良かったわ」
自分がこれほどボロボロになりながらも、未だ二人を心配しているフォン。その強さにカレンとライラは涙が溢れそうになる。
「私達は無事だよ。それにシグも。だからまずはそこに座ろ?」
カレン達はフォンを支えながら近くのテーブルの座席まで行き、そこに彼女を座らせた。
「ありがとう。それで、私がやられた後の話を聞かせてくれない?」
フォンの望みを聞き、ライラが彼女が意識を失ってから今日までの事を説明した。
「そう……ゲールは死んだのね。そしてドルガには逃げられた。いいえ、私達が見逃されたと言う方が正しいのかしら……」
確かにあのまま戦闘になっていれば、聖黒側が全滅していた可能性が高い。
「でも、皆が無事だった事が一番の収穫よ。ステイルなんかは全部の結果をまとめてこう言ってそうよ。『及第点だ』ってね」
店員がフォンの元へ水の満たされたグラスを置く。彼女はそれを一気に飲み干すと、激しくむせてしまった。
「フォンちゃん、そろそろ部屋に戻って休も?」
「ええ、そうね。とっても申し訳ないのだけれど、部屋まで手を貸してもらえないかしら……」
「先生、アタシ達に気を使う必要なんかないよ。さぁ行こう」
二人がフォンを立たせようと手を差し伸べる。フォンはその手を取ると、突然自分の元へ引っ張り二人を豊満な胸元へと抱き寄せた。
「あなた達が元気でいてくれて本当に嬉しい……」
三人は暫くそのままの体勢で抱き合ってから、フォンの部屋へと向かったのだった。
ステイルとアリスはこの翌日アジトへと帰還した。カイトと呼ばれたキツネを彷彿とさせる細目の青年を伴って。
ずっと出張だったので更新が大変遅くなりました……。
あと、誤字報告を初めていただきました!!誠にありがとうございます(*´ω`*)
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