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初陣3

「え?」


 音速の一線は、人を斬る感触なく走る。

 アリスはかつての兄を両断した筈だった。しかし、その直後兄の姿はぐにゃりと歪み、水となり跡形も無く消えてしまった。


 その場にいる誰もが、何が起きているのか分からず攻撃の手を止めて唖然としていたが、そこでアリスの部下達に隙が生まれる。


 そしてその隙を聖黒の三人は見逃さなかった。シグとフォンはともかくとして、真剣勝負であれば勝ち目は薄いと思われたライラでも、意識が逸れた相手を無力化する事は難しくなかった。


 ライラは一瞬で龍脈陣(ドラゴンエナジー)を展開し身体強化すると、小手を装着した右手で相手の腹部を殴りつける。


「ごはぁっ!!」


 強化された拳の一撃を受けた敵は簡単に吹っ飛び、屋敷の壁へ激突して意識を失う。


 シグ、フォンも同様に相手の無力化に成功しており、残るはアリスだけとなる。その様子を見ていたゲールは怒りで顔を歪めながらアリスを叱責した。


「こんな雑魚共に何を手こずっておるのだ!! ワシはさっさと殺せと言ったんだぞ役立たずが!! また一から教育されたいのか?!」


 『教育』それはアリスがゲールの下へ来た時に行われた、痛みや恐怖で従属心を植え付ける洗脳とも言える行為。


 ゲールの言葉によって、アリスは自らに行われた残虐な行為の数々を思い出す。


「嫌ぁ……嫌ですっ!! ゲール様、私ちゃんとコイツらを殺しますから、終わったら沢山ご奉仕もしますから!!

 だから教育は嫌ぁぁぁ!!」


 発狂し叫ぶアリス。顔と装着した仮面の隙間からは涙が流れ落ちている。


 泣きじゃくりながらアリスは再び刀を構える。その殺気は、カレンを斬ろうとした時とは比較にならない。自らの保身の為に全力でゲールの意向を達成しなければならないと考えていたからだ。それほどに『教育』の効果は絶大だった。


 そんなアリスの姿を見てゲールは勝利を確信していた。これまでも『教育』と言う言葉をトリガーに、彼女が鬼神の如き強さを発揮してきたのを何度も見てきたからだ。


 こうなったアリスには並の魔法使いであろうと、簡単に斬り伏せてしまうと知っていた。


「ガハハハ!! お前ら終わったぞ。あの世でたっぷりワシに楯突いた事を後悔するが良い。

 まぁ、そうじゃなぁ。そこの男はいらんが、姿を消した娘とそこの二人の女は、アリスの様に服従を誓うなら命は助けてやらんでもないぞ。

 その代わり、最初はしっかりと『教育』してやるがな。それが嫌ならここで殺して血を採取してやろう。」


 嬉しそうに大笑いするゲール。


「息子と同じくベラベラと勝手な事を……」


 ライラは拳を強く握りしめながら、怒りの余りゲールに飛び掛かりたい衝動に駆られる。しかし、アリスの殺気に脚がすくみ動けずにいた。


「そんな事させない!!」


 突然、姿を消したカレンの声が辺りに響く。


「アリスは連れて帰る。シグ、フォンちゃん、ライラにも手は出させない。お前の好き勝手になんかさせない!!」


 その直後、カレンが二階に立つゲールの背後に姿を現し、思い切りゲールの尻を蹴り上げた。それによりゲールは壁の穴から屋敷の外へ落下する。


「ひぎゃっ」


 なんとも情けない声を出して背中から地面へと叩き付けられる太った男。


 それと同時にシグとフォンがゲールの方へ向かって駆け出す。


「カレン、コイツは任せておけ!!」


「させるかぁ!!」


 シグとフォンを阻止すべく、アリスが脚に力を込める。しかし、彼女は飛んできた火球(ファイヤボール)を刀で受けとめた為に足止めされてしまう。


「アリス、アナタの相手は私達だよ」


 魔法を放った後、二階から飛び降りアリスに向かうカレン。それを視認するアリス。


「アタシも忘れないでよ」


 アリスの背後から顔に向かって、ライラの高速の回し蹴りが飛んでくる。


「くっ……」


 彼女は身を屈めてギリギリの所で躱し、反撃をしようと考えるが、更に飛んで来た火球(ファイヤボール)の受け流しを強いられる。


 しかし、カレンとライラの波状攻撃に最初は防戦一方であったアリスも、少しずつ反撃を繰り出し始める。


(二人掛かりでも全然歯が立たないじゃない! どんだけ強いのよアリスは!)


(そうかな? それはアリスの間合いで戦うからじゃないの? 確かに君の妹は剣術の天才みたいだけど、カレンはそうじゃないだろ。カレンの得意な事はなんだい?)


 徐々に押され始めたカレンの頭の中にセロの声が響く。カレンの得意なモノ。それを問う声は何処か楽しげだ。


(私の得意な事なんて一つしかないじゃない。……とてつもなく可愛いって事でしょ?!)


(う、うん。それは俺が言いたかった事とは違うね……)


 姿は見えないが、この時のセロはベタにコケていたに違いない。


(……コホンっ。カレンは魔法の天才だろ? 俺がアリスの倒し方を教えてあげるよ)


 そう言ってセロはカレンにアリスを止める方法を教示した。


(そんな魔法、私使った事ないんだけど……)


(大丈夫。カレンは大精霊である俺の加護を受けているんだから、きっと上手くいくさ)


 セロの太鼓判。それをどれだけ信用して良いのか。だが今のカレンはそれに賭けるしかなかった。アリスを傷つけずに止める為には。

投稿が遅くなり申し訳ございません。

仕事がぁ……。はい、言い訳ですね。ゴメンナサイ……。


【お願い】

もしよろしければご感想、もしくはご評価を頂けますと嬉しいです!!


 異世界で奮闘するカレンちゃんの応援として、是非とも宜しくお願いします!!


(このまま下にスクロールして頂くとフォームがございます)




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