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決意

 アジトでの生活にもかなり馴染んだカレンとライラ。最初は洞窟での生活に戸惑ったものの、ここは思った以上に快適だった。


 広大な洞窟にはあらゆる施設が完備されている。個人部屋、会議室、武器庫、大浴場、飲食店や雑貨屋。極めて小規模な集落と言っても過言ではなかった。


 カレン、ライラ、フォンは今、その中の飲食店で食事をとっている最中であった。


「フォンちゃんて今も魔法技学校の先生なんだよね? 私とライラって退学になったの?」


 家を出て以降、二ヶ月間、学校に行けていないカレンは、ずっと気になっていた事を聞いた。


「ちゃんと先生してるわよー。だって私が行かなきゃ男子生徒が悲しんじゃうもん。」


「いや、そこはどうでも良いから……」


 茶化されてカレンがツッコミを入れると、悲しそうにするフォン。


「カレン=マクスウェルとライラ=コレットはちゃんと在学中よ。ただ、今は国外留学中という扱いになってるわ。ライラさんのお父様にも同じ様に伝えてあるわ。あなた達二人が私の担当だから、その辺は上手くごまかすことが出来たの。

 と言う訳で、今回の件の結果次第では学校に戻れる可能性もゼロじゃないのよ。」


「それはとても助かるな。アタシも父の事が気掛かりだったからね。ありがとう先生」


 取り敢えずは父に心配をかける事も無さそうだとわかり、ホッとした様子でライラはフォンに礼を言う。


「ただ、ゲールの手下達があなた達の行方を追っているという情報も得ているの。問題を明るみに出したくないから、あくまでも極秘裏にみたいだけどね。

 ここは知られていないからあなた達二人は良いけど、誘い出すために、働いていたルージュ&ノワールの人達や、ライラさんのお父様に危害を加えられる可能性もあるから、もうあまりゆっくりしている時間はないと考えておいて」


 フォンの真剣な顔。それは普段のおっとり癒やし系爆乳教師ではなく、秘密組織である聖黒の構成員としての顔であった。


「フォンちゃんそれって……」


 俯き少し不安そうな顔をするカレン。


「えぇ、決戦が近いと言う意味よ。その内ステイルから話があると思うわ」


 カレンとライラの実力は、聖黒のアジトに来てからかなりのものとなっている。そしてそれは彼女達自身も自覚しているが、本気の対人戦には不安を感じざるを得ない。普段の模擬戦も、あくまでも魔法を使い、相手の隙きをついて一撃を加えるだけのルールである。


「フォンちゃん、私は戦いで人に魔法を放つことなんて出来るのかな……。死んじゃうかもしれないし……。ライラは自信ある?」


「アタシはアンタを守るためなら、覚悟はしてるよ。だけど、アランから実際に魔法を受けて死にかけているからね。あれを逆に相手に食らわせると思うと、不安もあるね……」


 二人の本心。聞かずともフォンはそれを知っていた。いや、その不安はフォンだけでなくステイルやシグも知っている。何故なら組織で戦う誰もが経験し、乗り越えて来たことだからだ。


「あなた達が不安なのはわかるわ。戦いでは人が死ぬ。いいえ、『人を殺す』と言った方が正しいわね。相手の未来や、その人の家族の幸せを奪うのだもの。躊躇(とまど)いの気持ちがあって当たり前よ。

 だけど、私達は無差別殺人をしているんじゃないし、私利私欲の為に殺すのではないわ」


 二人の目の前に座るフォンからは強い覚悟が滲み出ていた。カレンもライラも声が出せなくなるほどに。


「そして……、私達もいつ殺されるかわからない。簒奪(さんだつ)の魔女リズと戦う組織、『聖黒』とはそういう所よ」


 そこまで言うと、フォンは二人の手を強く握る。とても優しく、二人を本当に大切に思っているのだとわかる表情で。


「私も死にたくない。だけどね……守りたい人や物もある。そして命を賭けないと守れない時がある。だからこそ今回、あなた達を守り、それとこれ以上禁忌の被害者を出さないために、私もシグも戦うの……」


 リズの様な者がいなければ、悪事を働くものがいなければ、誰もが善良で寛容さを持っていれば、命の取り合いなどしなくても良い。しかし、そんな優しい世界ではない。だからこそ、フォンの言うことはこの世界では真っ当なのだ。


「最初から上手く出来るなんて思ってないわ。でも安心して。あなた達の事は私とシグで必ず守るから」


 フォンの言葉を聞いたカレンは涙を流している。これほどまでに自分達の事を想い、行動出来るフォンに尊敬の念を抱きながら。


「シグやフォンちゃんに守られてばかりじゃダメだよね。アランの時だってライラとセロに守られて助かって……私も大切な人達を守るために頑張るね」


「ええ、私やシグもあなた達には期待しているからね!!」


 そう言ってウィンクするフォン。二人の少女はその瞬間言葉を失う。大人の女性として完成された魅力によって。その瞬間のフォンは、カレンの魅力値を上回るかの様だった。


(そうだ。もうアランの時の様にやられているだけではダメだよね。私も戦ってライラを守るんだ。そして強くなっていつか……家族を殺したアイツに復讐を果たすんだから……)


 強く決意するカレン。


 しかし決戦において、彼女はこの決意が揺らぐほどの残酷な現実に直面する事になる。


 妹、アリスとの対峙という残酷な現実と。

昨日はなんとかアップする事ができました。



【お願い】


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 異世界で奮闘するカレンちゃんの応援として、是非とも宜しくお願いします!!


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