カレン VS ライラ
「四重特性魔法、水砲乱弾!!」
ここはアジトの訓練所。カレンは飛来する土竜に向かって無数の水弾を撃ち込む。しかし所詮水弾、人体には十分な殺傷能力がある魔法だが、土と石で出来た土竜、四重特性魔法である龍顎に対しては大したダメージを与えることは出来ない。強いて言うなら土が水を含み少し粘土状になった程度だ。
ライラは、以前アランが行使し自分を絶命寸前まで追い込んだ魔法、龍顎を巧みに操りながらカレンへと叫ぶ。
「どうしたんだいカレン! そんな魔法じゃアタシの魔法は砕けないよ」
「そ、れ、は、おっと!! どうかな?」
襲い来る龍顎を何度もかわしながら、カレンは水弾を撃ち続ける。それによって土竜の表面はかなりの水分を含んだ状態となっていた。
「まさか土を水で濡らして崩そうってのかい? 残念だけどそれは無駄だよ」
そう言うとライラは地面に手を触れ、新たな魔法陣を展開した。それと同時に周囲の土が舞い上がり、それが土竜の体表を覆う。
これにより、先程までドロリと溶けたアイスクリームのような状態となっていた龍顎は元通りになってしまった。
「アハ、やるねライラ。でも、龍顎を新たに作り直した方が良かったかもね」
土竜が再びカレンに向かって飛び掛かる。それに対し、彼女は自身の前方に水弾を集めて防御壁を作るが、土竜は易々と水壁を貫通してしまう。
土竜の口が大きく開かれいよいよカレンに到達する直前、彼女はその美しい声で新たな魔法を詠む。
「火属性、五重特性魔法、爆炎監獄」
その声と同時に、直視出来ないほどの眩い光を放つ炎の壁が土竜の四方を囲む。魔法の効果により、壁の外側の温度はそれほどではないが、その内部は一瞬で数千度にまで達する。
突然の出来事にライラが動揺したのをカレンは見逃さず、更に次の魔法を詠む。
「水属性、六重特性魔法、幻惑霧」
この魔法により、カレンの姿は周囲の景色と同化する。ライラは再びカレンがいた場所に目をやるが時既に遅し。既にそこにはカレンの姿は無かった。
「しまった! 火の魔法に気を取られた隙きに……」
ーースパーン!!
後悔し終わる前にライラの臀部に衝撃が走る。
「ひゃっ」
その衝撃により、ライラはキャラクターに似つかわしくない声をあげてしまう。
そして、その原因を確認すべく後ろを振り返ると、そこには笑顔で振り抜いた手の平を高く掲げるカレンの姿があった。
「私の勝ちだね」
そこで二人の模擬戦は決着した。
「はいはい、悔しいけどアタシの負けだよ」
そんなやり取りをしている間に、炎の檻が効力切れにより消え去り、その内部の状態が明らかになる。
そこには土竜がそのままの姿で固まっていた。
「アンタもしかしてコレを作るために?」
呆れた顔でライラが問いかけると、嬉しそうに答えるカレン。
「そ、置物にしたら格好良いと思ってね。だから一生懸命水で濡らして粘土状態にしたの」
土と石で出来た土竜は魔法が消えた後も、焼き固められる事でその姿を保っているのだった。
「結局アタシはアンタに遊ばれていただけってことなんだね。流石だよ」
「全然余裕なんて無かったよ。格闘戦になったら勝ち目は無いし。でも、ライラも四重特性魔法まで使える様になったんだね。すごいと思うよ!!」
ライラはカレンの褒め言葉を嬉しく思いつつも、簡単にその上の魔法を使いこなす様を見せつけられているため、素直に喜びきれず苦笑いしてしまう。
「上級最上位の六重特性魔法まで使うカレンに言われても……なんか凹むな」
「えへへ」
褒め返されたと勘違いしたのか、カレンは自身の頭を照れ臭そうに撫でながらニコニコしている。
「カレン、さっきの嫌みだからね?」
申し訳ございませんが、明日はアップできないかもしれません。
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