聖黒1
「来ると思っていたわよシグ~。姪っ子ちゃんがとんでもないことをやらかしたみたいねぇ。フォンちゃん心配で来ちゃった。テヘッ」
自分の頭にげんこつを軽く落として下をペロリと出すフォン。それに合わせて大きな胸がぷるんと揺れる。
「どうしてフォンちゃんがこんな所に?」
不思議そうな顔で問うカレン。しかし、その目線はついつい露になっている谷間に向かう。
「マクスウェルさん。それはこっちのセリフよ~。とは言っても私達にはあなた達がここに来た理由はお見通しだけどね」
そう言ってフォンはカレンに向けてウィンクをした。
「俺達の状況が分かっているなら話は早いな。フォン、アイツに会わせてくれ」
「どーしよっかなぁー……ってうそうそ。私もそのつもりであなた達をここまで迎えに来たんだからぁ」
フォンはカレン達に背を向けて岩壁の所まで行くと、そこに手を突き青い単一魔方陣を展開する。
すると目の前に高くそびえ立っていた岩壁の一部がスライドし、馬車が十分に通れるほどの洞窟への入り口が現れた。
「さ、行きましょ」
私達の返事を待たずにスタスタと歩いて行くフォン。そしてシグが無言でそれに続こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ! どういう事なのか全然理解出来ないんですけど?! 」
「大丈夫だ。コイツは信用出来る」
(もう! 相変わらずぶっきらぼうなんだから!!)
少し苛立っていたカレン手に、ひんやりとした柔らかな感触。ライラが彼女の手を取っていた。
「とにかく今はアンタの叔父さんだけが頼りなんだ。ついていこう」
そう言われて二人は手を繋いだまま、岩に空いた大きな穴の中へと入って行った。
(ライラの言う通りだ。私がシグを信じなきゃ……)
二人が洞窟へ入るのと同時に、背後の大穴が大きな音をたてながら閉じた。それにより外から射し込む光が無くなった筈であるが、洞窟の中は驚くほど明るい空間が広がっている。その明かりの源は壁や天井に沢山設置されたランプの様な魔機であった。
入ってすぐの所には二人の見張りの男。そしてシグとフォンはその男達と何やら会話をしている。
カレンとライラが追い付くと、それに気付いたフォンが笑顔で語りかけてきた。
「マクスウェルさんも、コレットさんも無事で良かったわ。まだ分からないことばかりで混乱しているでしょうけどもう少し待っててね。ボスのところでちゃんと説明するからっ」
そしてフォンは二人の頭を抱き寄せ、その豊満な胸を顔へと押し付ける。
「むぐぐぐぐ」
顔が柔らかな肉に圧迫され、息が出来ずバタバタと悶える二人。無理やりフォンの拘束から逃れてなんとか窒息を免れる。
「殺す気か、爆乳凶器!!」
ライラは酸欠で顔を真っ赤にしながらフォンへと怒鳴った。
「ひっどぉーい!! これは凶器なんかじゃなくて皆を包み込む愛の塊なのにぃ……ぐすん」
わざとらしく嘘泣きをするフォンを見て、学園での穏やかな日々が戻ってきたように思えてカレンはクスクスと笑っていた。
「緊張感がないねぇ。ようシグ。お困りのようだな」
緩んだ空気の中、洞窟の奥から男が現れると、シグに馴れ馴れしく話しかけ、次にカレンとライラの方に向き直り自己紹介をする。
「よっ! 綺麗なお嬢ちゃん達。俺はここのボスをやってるステイルって者だ。今回はえらく面倒な事に巻き込まれたちまったなぁ」
まだ何も話していないにも関わらず、フォン同様にステイル名乗った男もまた、全ての事情を知っている様だった。
シグとは対照的にえらく明るい人。それがカレンがステイルに対して最初に受けた印象であった。体格は筋骨隆々、金の髪は左前だけが長く、その下には眼帯が透けて見える。
「こんな入り口なんかで喋ってないで俺の部屋に行こうぜ」
その言葉に従ってフォンを含む四人はステイルの後を追い、洞窟の最奥にある彼の部屋へと向かったのだった。
お盆でドタバタしており、すこし更新が不定期になると思いますがご了承下さい(´・ω・`)
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