小熊の冬
怖い夢で目が覚めた。
寝ぼけ眼の瞳を擦り、
表へ出てみた、まだ小さな熊の仔は、
一面に広がる銀世界に驚いた。
風は冷たいけれど、太陽の光は暖かく、
高い木々の上では小鳥が歌い、
時折走るウサギは戯れている。
眩しく輝く、白く柔らかな雪以外、
春や夏となんら変わらない世界だった。
居ても立っても居られなくなり、
母熊の寝ている優しい温もりの
穴ぐらと飛び出した仔熊は、
見ていた怖く長い夢など忘れて夢中になった。
斜面を滑り落ちて、
雪の中を転げまわった。
そんな仔熊を白い毛のキツネ達が、
不思議そうに眺めている。
仔熊には、何もかもが冒険、
時がたつのも忘れて遊んだ。
やがて日が落ち、森の動物達も帰った。
冷たい風が次第に強くなり、吹雪となる。
木々や空から笑顔が消え、眠りについた。
森は本来の「冬の姿」を現し始めた。
一変した森の姿に仔熊は呆然。
母熊のいる幸せな穴ぐらへ帰った。
穴ぐらでは母熊が眠っている。
安堵の溜息、再び仔熊も長い眠りについた。
今度は、怖い夢などじゃなく、
楽しい夢をみるだろう。
薄目を開けて、全てを見ていた母熊は、
そっと目を閉じて、春が来るのを待った。