十六塁
生きていることを、やめたいと願っていた少年時があった
年が終わる前の最後のひと月
天は桃色と赤を持っていて
だから何?とすべてに対して言えるほど美しかった
遠い昔の人がいて、
その人はやさしい目をしていた
だのに、彼を処刑する人たちがいて、
彼も最後に空を見ただろうか、と考えていた
嘘話の中で、一人ただ一人体だけで泣いている彼
嘘は、優しくてよかったと考えたりもしていた
僕は生きていた
だけど生きているのをやめたかった
別におやつを食べなくても死なないように、
生きていなくてもこの世にいることはできると思っていて
心臓が止まっていても、排泄をしなくても、
友達とは遊べるし空を見られると思っていた
死にたいわけではなかった
生きているのがただ嫌なだけだった
生きているのは、僕には辛すぎた
学ぶことや、遊ぶこと、食べることは嫌いじゃなくて、
死ぬことも当たり前ぐらいに怖くて、痛いのは普通に嫌で、
愛することは分からなかったけど、好きということはわかっていた
僕が嫌だと願う
のは
明日が来る
こと。
明日が来なければ。一週間後が来なければ、
僕は辛くない。
今日のままで世界全部ストップしてください。
本当にそう思っていた
変わらない今日のまま
誰も生まれなくていいから誰も死なないで。
そう、思っていた。
生きる、と決意してしまうのは簡単で、
死のう、と実行に移すのもさほど難しくなかった
生きる、とがむしゃらに努力するのは楽だけど、
生きていること
明日が来ること
は
だめ
なの
生きる、ことは
死んでいて
も
できる
でしょ。
息切れの様に思考が散っていって
最後の言葉を残して
少年時の記憶が無くなって
思い出せた最後の言葉は
だから塾を休みたい。
そう簡単に塾は休めませんでした。




