8.開始
今回ちょっとグロいかもです。さほどではないので皆さんは大丈夫だと思いますが、本当にダメだという人はブラウザバック推奨です。
スキルや祝福のルビ振りは適当です。絶対一回以上は付いてますので…二度目からは確認不足orスルーしたものです。
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訂正
「《鋭利な氷河》…」
がルビ振りミスっていたので、
「《鋭利な氷河》…」
と直しました。
「美味しかったですね〜」
「ああ!クリートの母ちゃんの料理はいつも美味いな!」
「悪くはありませんでしたわ」
「そうだよね!母様の料理はいつ食べても美味しいんだよ!」
僕たちは今、母様の料理を食べ終え僕の部屋へと戻って談笑しているところだ。みんな母様の料理を賞賛している。
何度かそれぞれの家族と一緒になってピクニックなどに行ったことがあるので、みんな母様の料理の上手さをよく知っている。いつもよく食べている僕ですら、美味しくないって思ったことがないぐらいだからね。当たり前だよね。
「さて、昼食前はなんの話をしてたんだっけ?」
「なんだっけ?」
「……はぁ」
「ボクたちが授かった祝福についてですよ。ちょうどみんな発表し終わったところです」
「ああ!そうだったな!」
「それじゃあ続きをしようか」
記憶が飛ぶ。これもよくあることだ。母様はお客がいるといつもより張り切って料理を作ってしまうため、美味しすぎて少し前の記憶が飛んでしまうという現象が起こる人が多い。僕も未だに抵抗ができてない。
「……話すことがない」
「発表した後のことまでは考えていませんでした…」
「どうするんだ?」
「これからの生き方について話すのはどうですの?祝福を授かった今、その祝福に合った道に進むのを考えていくが私たちの義務ですわよ?」
エリスの言う通りだね。祝福を授かった今、やることは自分の祝福に合った将来の道を選んでいくこと。時には全く違う道に進む人もいるけど、多くの人は自分の祝福に合った仕事や親の仕事を選んでいる。
「え〜…俺はなんでもいいよー。特に選ぶことはないしさー」
「そんなこと言ってると、ちゃんとした仕事を貰えないよ?」
「とは言ってもさー…俺の祝福って戦闘系しかないんだもん。冒険者にでもなろうかなぁ」
「冒険者ねぇ…ボクもちょっと興味があるかな。夢が溢れてるよねー」
「冒険者なんて野蛮な奴らばかりですわ。私は当然、お父様のお店を継ぎますの」
「僕も冒険者には興味があるけど、ここの店を継いでいきたいんだ。祝福も薬関係のものだしさ」
みんなそれぞれ決まっていたり決まってなかったり。まだ僕たちには早すぎるのかなあ。
「クリートもエリスもやっぱりそうだよな〜。俺とミカルは農民だからなー。別に継ぐものがないんだよなー」
「親の畑を継ぐってのがあると思うけど…」
「いやいや、あんなの俺には無理だって。あんな地味な作業をチマチマチマチマずーっとやり続けるなんて俺は耐えられないな」
「ボクは一度お母さんとお父さんに言ってみたことがあるんだけど、『無理して継がなくてもいい。ミカルの好きなことをやりなさい』って言われちゃってさ…どうしようか迷ってるんだよね」
「そっちも大変だね。僕と…エリスもそうだろうけど、専門的なものをやるのは大変だよ。大量の知識が必要になるんだから。ゼブルもミカルみたいに一度言ってみたらどうかな?案外好きにさせてもらえるかもよ?」
「母ちゃんがか?ないない!言ったら絶対に『私たちの後を継ぎなさい!そうした方が色々と楽だからね!』とか言うぜ。あ、でも俺の性格わかってるし、継がなくてもいいって言うかもな!」
「それはそれで悲しいよ…」
ゼブルのお母さんならそう言うかもしれない。スッパリと決める人だから…
「でも、みんなで冒険者って言うのも面白そうかもね」
「俺たちパーティーとして結構いいと思わないか!役職も揃ってるしさ!やってみようぜ?」
「そうだね〜。ボクも冒険者になろうかな…」
「僕は店の仕事が入るからあまり出来ないと思うけど、冒険者にはなってみたいかな」
「お!クリートも賛成派か!エリスはどうするんだ?」
「私は…」
僕はたまにお店を休んで冒険者として働いてみるのもいいと思う。この村で病気なんて起こるの少ないし。でもエリスは違う。大商会の娘なんだ。毎日毎日、同職の商人たちと交渉したり、商品の開拓したりしなきゃいけないから、難しいと思う。
「私は……無理ですわ。お父様のお仕事で忙しいもの。冒険者なんて野蛮なこと、やっている余裕なんてないですわ」
「そっかー。残念だな。せっかく回復役に特化した祝福持ってるのになー」
「残念でしたわね。私はサンバルネ商会の一人娘ですもの。もっと立派にするためにも頑張り一筋ですわ」
「それがエリスの決めたことだもんね。ボクは止めたりはしないよ」
「同じ商売人として頑張ろうね。エリス」
「ええ。この領地をもっともっと素晴らしいものにするためにも頑張りますわ!」
さすが大商人の娘。見据えている未来の格が違うなぁ。僕もこの店をもっと素晴らしいものに作り上げていけるよう、頑張ろう!
「それで、クリートは冒険者の登録はするのか?」
「あ、そうですね。ボクとゼブルはほぼ確定ですけど…」
「うん、僕も冒険者登録はするよ。あまり一緒にはできないけど、頑張ろうね」
「よし、決まりだな!登録はいつ行く?」
「今日はもう無理そうですし、また今度みんなで集まった時にしましょう」
「だね。その時はエリスも一緒に行こう?登録はしなくても、商人として冒険者ギルドは見ておくといいかもしれないからね」
「そうですわね。冒険者にものを売るのも私たち商人の仕事の一環。どのようなものが良いか調査してみるのもいいわね」
「じゃあ次にみんなで集まった時だな!そんなのそう遠くないだろ!」
「ですね。よく遊んでいますし、すぐでしょう」
「その時に向けて頑張って行こ〜!」
「「おー!」」
「元気ですわね…」
というわけで、僕とゼブル、ミカルの三人で冒険者になることになった。僕は冒険者として働くのは店があるから少ないけどね。
次またみんなで揃うのはそう遠くない未来だろうな。楽しみ!
それからはみんなでくだらないこと話したり、遊んだりして一日を楽しんだ。いつも通りに僕たちが集まった時のように。
日が暮れ始め、みんなが帰る時間に。
「今日も楽しかったな!」
「だねー。いつも通りの楽しさだったよ」
「また息抜きに遊びに来ますわ」
「うん!今日はありがとう!」
「じゃあな!」
「それではボクらは」
「お暇しますわ」
「バイバーイ!」
僕はみんなが帰るのを見届け、みんなの姿が見えなくなったら僕も家に戻った。
「あら、クリート。今日はどうだった?楽しかったかしら?」
「うん!」
「それは良かったわね!何して遊んだの?」
「いつもと変わらなかったよ。追いかけっこしたり、模擬戦したりしてたよ!」
「うんうん。子供はやっぱりお外で遊ぶのが一番ね!」
「あ!それとね、みんなと冒険者になろうって約束もした!」
「冒険者に?それはなぜなの?」
「みんな一緒に冒険するの!みんなで協力して凄い奴を倒したりとか!」
「それじゃあ、クリートがみんなを守ってあげなきゃね。クリートはみんなよりも強いんだから、大切なお友達を守らなきゃだめよ?」
「うん!みんなで頑張るよ!もちろんこのお店のこともね!」
「いい意気込みね。もうすぐ夜ご飯ができるわ。手を洗ってらっしゃい」
「はーい!」
手を洗いに洗面台の方へ。歩いているとふと、何か違和感を感じた。
「……あれ?なんか変な感じがする…」
あたりを見回してみたが、別に何も変わったところはない。いつもの僕の家だ。じゃあこの違和感は一体…?そんなことを考えていると…
『A.警告!所属不明の集団が敷地内へ近づいて来ています!すぐに戦闘準備をしてください!相手は武装しています!』
いきなりアベルが警告を出してきた。
「な、なに!?いきなりどうしたの!?」
『A.裏山から武装した集団が近づいて来ています!動き方からするにこの家を狙っています!すぐに他の方にも連絡を!』
「う、うん!分かった!母様!」
僕の感じていた違和感は裏山の気配だったのだ。普段から気配の察知を鍛えていたから最近は裏山全体まで気配察知の範囲内であったのだ。そして感じたのは異様なほどの人の数。そしてこの敵意を持っているような気配…
僕はアベルの言っていることと、己の気配察知を信じ、母様に伝えに行く。
「母様!大変です!」
「あら、どうしたのクリート?石鹸が切れてた?」
「違います!裏山から武装した集団がこの家に向かって近づいて来ています!」
「何ですって!?こうしちゃいられないわ!すぐにパパにもすぐ伝えて!守る準備をしなきゃ!」
「リベネさんは…」
「ここにいますよ。話は聞いていました。旦那様への連絡は私がいたしますので、奥様は準備をお急ぎください」
「ありがとう!リベネさん!クリート!家にあるだけの武器を持ってきておいてちょうだい!パパが使うだろうから!」
「はい!母様!」
母様に伝えると同時に一斉に対策の準備が始まった。それにしてもリベネさんは一体どこから現れたのだろうか…
母様は汚れてもいい服に着替え、父様は武器の確認をしている。リベネさんは家の安全を確保するためにバリケードを作って回っている。
あれ…ミザリー……?
「母様!ミザリーがいません!」
「ミザリー!?どこへ行ったの!!」
「お嬢様ならお庭の花畑で遊んでいると…!」
「クリート!ミザリーを連れてきてくれ!父さんたちは手が離せない!」
「分かった!」
「私も行きます!」
僕とリベネさんは家の裏にある花畑に向かった。そこはちょうど裏の山からの近くで…
ミザリー!どうかまだ無事でいてくれ…!
「はあ…はあ…ミザリー!夜ご飯の時間だよー!」
「……っは!そういうことですね!お嬢様ー!冷めてしまうので早くお戻りになられてくださーい!」
山にいる集団にバレないようにご飯と偽装してミザリーを呼ぶ。するとすぐにリベネさんも意味を理解してくれて、一緒にやってくれる。
「ミザリー!」
「お嬢様〜!」
何度か呼んでいるが、返事がない。これは最悪のパターンかも…
「返事がありません…」
「ちょっと魔法で探してみるよ!リベネさんは山の方を見張っててもらえる!」
「分かりました!」
「どうか無事で…《範囲探索》!」
無属性魔法の《範囲探索》で周りの生命反応を探していく。
……………………あった!
「リベネさん!ここから左前に300!そこにミザリーらしき反応がある!」
「左前に300、山の中ですね!はっ!」
僕がミザリーらしき反応の場所をリベネさんに伝えるとその場所へ向かって即座にリベネさんが走っていった。
僕は続けて《範囲探索》でミザリーらしき反応の付近を他に反応がないか重点的に探す。
「近くには……なし。それじゃあ近づいてきているものたちは……30?ううん、違う…45!45人も来てるの!?」
ミザリーらしき反応の近くにはほかに怪しいものはなかった。なので今近づいてきている武装している集団の方を探してみることにしたらなんと…来ている数が思っていたのと違った。
「流石に対処が…!」
「クリート様!見つけてまいりました!」
「あ!にいさま!ただいまー!」
「よかった…おかえりミザリー」
「急いで戻りましょう!」
「そうだね!」
リベネさんがミザリーを抱えて戻ってきた。すぐさま家に戻る。すでに家はバリケードだらけになっており、応戦準備が完了きている状態になっている。
「母様!」
「ああ!クリート!ミザリーは見つかったのね!」
「なんでしょう?」
「よかった…クリート!すぐに武器を取るんだ!外の補強に向かうぞ!」
「はい!」
「リベネさんはミザリーと一緒に地下に行っててくれるかしら?」
「分かりました。奥様…ご無事で」
「え〜?なになに〜?どこにいくの〜?」
リベネさんはミザリーを連れ安全な地下へ避難、僕は父様と一緒に外へ出て魔法で家の補強と直接戦闘をする。母様は家の補強と中から魔法の援護。
「クリートは魔法結界を張ってくれ!父さんは壁を作る!」
「分かりました!」
僕は家の柱の一本に埋め込まれている魔道具に魔力を流して起動し、家の周辺に魔法の結界を張っていく。
「父様!終わりました!」
「こっちももうすぐ終わる!敵は今どこにいるか分かるか!」
「探してみます!」
再び《範囲探索》でこちらへ迫ってきている集団を探してみる。
距離は……あれ?さっき探したときと変わってない…?
先ほどミザリーを探すときについでに確認しておいたときとほぼ変わらない位置にいた。
「父様!ここから距離500のところにいます!動いている気配はありません!」
「分かった!これは夜の闇に紛れて襲って来るつもりだな…クリート!今のうちに罠を作りまくるぞ!」
「はい!」
家から距離500のところに奴らはいる。裏山は埋め尽くされていると言っていいほど木が密集しているので、これだけ離れていればもう僕らの様子は見えない。見るためには斥候を出すしかないけど、魔法結界を張るときに視覚阻害の魔法も組み込んだので、一見するだけでは僕たちは見えなくなっている。
僕と父様で奴らが来る前までに出来るだけ多くの罠を作って設置した。罠の脅威レベルは最大にし、かかったら最低でも足の骨が折れるぐらいのばかりだ。最高?言わなくても分かるよね?
そして夜が訪れる…
あたりが闇に包まれ、静まり返った頃。奴らは動き出した。
「父様、動き始めました」
「よし、作戦開始だ。罠から抜けてきたやつは自分で対処するんだぞ」
「分かりました…!」
僕らも撃退するために動き出す。闇に紛れるために黒いマントを被って。
奴らが動き出し始めて数分…ついに裏山から集団の一人が出てきたのを視認できた。
「…………来た」
対策は万全。準備もしっかりしてきた。何も恐れることはない。けど……
「震えが…涙が…止まらないよ……」
手の震えが止まらない。怖くて涙が止まらない。そりゃそうだろう。平和な国で平和に暮らしてきたんだ。襲われるなんて恐怖味わったことなんてない。
『死』という体験をしたときは一瞬すぎて頭が追いつかなかったが、今は違う。『死』そのものを浴びているのだ。どうなるかわからない自分の命、相手の命がかかったこの瞬間。まだ青年だった彼には到底耐えられないものだ。
「怖い……怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い………………怖いよ」
怖い…でも、僕がやらなきゃ、僕自身でやらなきゃいけないんだ。本当は逃げ出してしまいたい。でも…みんなを守らないと。父様、母様、リベネさん、ミザリー。誰かに甘えっぱなしなんてダメだ。
もしも父様や母様がいないときにこんなことがあったら?誰が守ってくれる?誰もいない。この世界では自分の身は自分で守るのが普通。頼ってばかりじゃダメなんだ。たとえ、恐怖だろうと絶望だろうと乗り越えていかなきゃいけないんだ。誰だって通る道。僕だけ避けて進むなんてできない。だから…!
「やってやる…!絶対にこの家を…家族を守ってみせる…!」
泣くのはもうやめだ!くよくよなんてしてたら守れるものも守れなくなる!僕は…!乗り越えてみせる!
『報告。祝福《克服者》による克服を達成。祝福《勇敢心》を獲得』
『A.よく成長…しましたね…』
恐怖を乗り越え、立ち向かおうとする志に祝福が答えてくれた。
「なんだろう…心が…満たされていくような…」
《勇敢心》によって心に蝕んでいた【恐怖】という感情が【勇気】へと移り変わっていく。それによって【恐怖】という名の穴が【勇気】という強さで埋め尽くされる。
「震えが…涙が…止まった…?これなら…!」
強さで満ちた心は身体へと影響を及ぼす。震えも涙も恐怖の副産物なのかもしれない。ならばそれがなくなってしまえば…
「「「うおぉぉぉぉ!!」」」
「怖くなんか!ない!!」
裏山から奴らが雄叫びをあげて突っ込んでくる。
「……!?うぎゃぁぁ!!」
「なんだぁ!おい!!罠だらけだぞ!」
「足がぁ!俺の足がぁぁ!!」
「腕がぁ!!ああぁぁぁ!!」
「お前ら!うるせ……え…?」
突っ込んできたやつからどんどんと罠にかかっていく。足が折れた者、腕が消し飛んだ者、何か言ってる最中に頭が切り落とされ、わけもわからず死んだ者…もうここは阿鼻叫喚の地獄となっていた。
「漏れ無し…作動確認…使用済み把握…」
僕はもう一心に敵を観察してどこの罠にかかったか、そしてどの罠がまだ使われていないか。全てを頭の中に叩き込んでいった。
「おい!お前らは裏から回れ!俺はここを突破する!うおりゃぁぁ!」
時には力技でどうにか突破してくるものもいるが…
「残念だったな。おさらばだ」
「は………?」
ザシュ!ゴトン…
闇に紛れて動いている父様に首を刈られてあっけなく死んでゆく。落ちた首はとぼけた顔で固まっている。血を撒き散らしながら…
「こっちだ!こっちには罠がないぞ!」
「進めぇ!」
「乗り込めぇ!」
裏に回って正面方向から侵入してくるやつも…
「《鋭利な氷河》…」
「行けぇ!ぇ…?ガフッ……」
「ゴフッ…!」
「ガッ!ガ…ァァ……!」
母様の魔法によって心臓を貫かれて力なく死んでゆく。
「死亡…32…残り13…頭と思われる者の死亡無し…」
死んだ人数と残っている人数を数えていく。討ち漏らし、殺り残しがないように。
残っている13人も罠や父様、母様の手によって次々と亡き者になっていき…残りは3人となった。
「残り3…?ここから近い…僕が殺るしかない…」
身を伏せ隠れていた場所から立ち上がり、得物を持って残りに近づいていく。絶対的な殺意を持って…
距離のところはメートル換算だと思ってください。この世界では数字だけで判断する感じです。
それにしても深夜テンションで書くとものすごいことに…途中眠たくなって壊滅的なところもありますが、できるだけ直したつもりなんで勘弁を…
次回はクリートが活躍?瞬殺?するかもです!お楽しみに!
コメント、感想、待ってまーす!(眠気の限界