6.六大属性適性者
ようやく書き終わりました。途中でもう一つの方の執筆をしないといけなくなったりして話がよくわからなくなったりしました…おかしなところはないと思いますが、もしもあった場合は教えてくれるとありがたいです。
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訂正
『アベル(Abel)』
とルビふりをミスしていたところを
『アベル』
に直しました。
「…リー…様……クリー…様……クリート様。起きてください、朝ですよ」
「むあっ…?レベネさん……?」
ん〜?リベネさんに起こされるなんてめずらしい……
「おはようございます、クリート様。もうすぐで朝食の時間なので起こしに参りました」
「あれ…?もうそんな時間…?」
「昨日はだいぶお疲れのようで。ぐっすりと眠っておりましたよ」
「そう…かな?すぐに着替えるよ。ありがとう、リベネさん」
「いえいえ。それでは私は先に降りていますね」
そう言ってリベネさんは部屋を出て下に降りていった。ミザリーはもう起きてるみたい。起きた時にはベットには居なかった。
「う〜ん…昨日は疲れることなんてあまりしてないんだけどなあ…教会に行って帰ってきただけなんだけど…」
ほかに思い当たることがあるとすれば…
『A.《拡張世界》ですね』
「だよねぇ…」
『A.起動時の頭痛が疲労の原因でしょう。脳にダメージを受けていたので、治すために少し長く寝ていたのだと思われます』
「そっか。じゃあ寝すぎていたのも仕方ない……かな?」
着替えながら《回答者》との会話をする。
脳にダメージか…あんまり実感はないけど、《回答者》がそう言うのなら違いないんじゃないかな。祝福の使用権限管理場とかいうなんか変な場所にも行ってたみたいだから、僕の知らない奥の方のことまで知ってそうだし。
「そういえば、《拡張世界》って常に出してた方がいいのかな?」
『A.いきなりウィンドウが出て驚いたりしないようにするには出していた方が良いと思われます』
「《回答者》もそう思う?僕もそう思うんだけどさ、やっぱりあの痛みがあったから…あまり乗り気じゃないんだ」
『A.……?《痛覚無効》は獲得していますよ?』
「いや、物理的にじゃなくてなんか…こう…精神的に怖いっていうか…また起こりそうで」
『A.……すみませんが私には感情が存在しないので、マスターの気持ちが分かりません』
「そっか…感情はないんだね。…………マスター?」
『A.はい。マスターのことを呼ぶ際に呼び方を決めておかないと不便だと思いましたので、マスターをマスターとお呼びすることにしました。呼び方が気に入らないのならば変更することが可能ですがどういたしますか?』
「い、いや、別に気に入らないってわけじゃないけど……ちょっと恥ずかしいなぁ…ちなみに他の呼び方って?」
マスターか…ちょっと恥ずかしいけど、悪い気分はしないね。他の呼び方が気になる…
『A.そうですね…例えば、『お兄ちゃん♪』とかですかね』
「なにその後ろに音符がつきそうなセリフなのに声は棒読みって…」
『A.すいません。私には声の抑揚の仕方も分からないのです。それでどうしますか?お兄ちゃん呼びにしますか?』
「マスターでいいわ!それに妹枠は天使みたいなかわいさのミザリーがいるからもう満員だよ」
『A.重度のシスコンですね』
「ああ!ミザリーの兄であれるならシスコン呼びだって構わないよ!」
『A.自覚してましたか…』
ミザリーのためなら僕はなんだってできる気がするぞ!……たぶん。
「あ、じゃあさ、僕も呼び方決めていい?」
『A.さりげなく話を戻しましたね。私はマスターの祝福です。決定権はマスターにあります』
「いや、祝福だって自意識があるなら勝手に決めつけるのは良くないよ」
『A.そのようなものですか?』
「そんなもんだよ。でさ、呼び方だけどさ、『アベル』なんてどうかな?」
『A.『アベル』でしょうか?私は構いませんが、なぜこのような名前を?』
なんでかって?う〜ん…ほんとはパッと思いついただけなんだけど…そんなこと言うと変に思われそうだな…
「いつも何か言う時に最初に『A.』ってつけてるでしょ?だからそのAをイニシャルにして『アベル』っていうわけ」
『アベル……アベル、ですね。少し男っぽい名前ですが、気に入りました。これからはアダムとおよびください、マスター』
「男っぽいって…アダムとかよりはいいだろ!」
まったく、せっかく考えてあげたのに失礼しちゃうね!というかなんで頭にそんなのが付くか分かったかって?そりゃあ頭の中に直接流れてきてる時にその文字があるんだもん。分かるに決まってるよ。
「って、変に時間取られちゃった!朝ごはんが冷めちゃう!」
『《拡張世界》を起動しておきましょうか?』
「おねがい!急げ急げ!」
着替えは終わってたのに話すのに夢中で少し時間をかけてしまった。みんなもう食べ始めてるかな!
僕は急いで下に降り、ダイニングへと向かう。
「クリート〜?少し遅かったようだけど、なんでなのかしら〜?」
「ひっ…!」
まだ全員食事はしておらず、母様がお怒りの状態だ…どうしよう、何か弁解を…
「リベネさんが呼びに行ってくれたはずだったわよね〜?」
「う、うん!リベネさんはちゃんと来てくれてたよ」
「じゃあなんで遅れたのかしら〜?」
「そ、それは……ちょっと祝福で気になることが出てきちゃって…」
「それは食事の後ででも出来たわよね〜?」
「は、はい……ごめんなさい…」
「はぁ〜…まぁいいわ、研究熱心なのは認めるてあげる。でも、だからって家族の時間に間に合わなくなるのはダメよ?」
「分かりました…」
「さて、ご飯にしましょ?ね、パパ?」
「お、おう…」
急に振られて父様はちょっと焦っていた。
うぅ…弁解出来ず…
母様は怒ると怖いんだ。なるべく怒られないようにしてるけど、うっかり時間を忘れることがあってよく母様は鬼になってしまう…またおんなじ目にならないようにしなきゃ…
そんな重い空気での食事だったが、いつもと変わらずご飯は美味しかった。そして食事が終わる頃には重い空気なんて元からなかったように普段の明るい生活に戻った。
僕は二階の自室に戻ってきてベットに腰かける。
「はあぁ〜…やっちゃったなぁ…」
『A.怖かったですね』
「恐怖は感じるの?」
『A.いえ、私は感情などないので感じるはずがないのですが…なんでしょうか、背筋が震え汗が噴き出すような感覚になりました。これが恐怖というものでしょうか?ちなみに今のは比喩表現なので本当に汗が吹き出たわけではありません』
「はいはい、比喩なのは分かってるよ。でもそうだなあ…人によって違うかもしれないけど、それが恐怖なのかもね…」
『A.そうですか。では、この感覚を【恐怖】として私のデータに載せておきます』
「感情がないのも嫌だけど、恐怖だけあるってそれはそれで嫌」
『A.そんな感情もないので関係ないです』
「うわ、便利だ」
つまり、逆に考えると【嫌】という感情を持ってしまうと他の感情が入るまで全てが嫌になってしまうのでは…というかすでに全てが恐怖になっているのでは…?
『A.何か質問でもありますか?』
別にそんなことはなさそうだね。これはもう深く考えなくていいや。あ、それはそうと聞きたいことがあるんだった。
「ねぇねぇ」
『A.なんでしょう?マスター』
「僕が持っている祝福について聞きたいんだけど。前は途中までしか聞いてなかったからさ」
『A.分かりました。何から説明いたしましょうか?』
「えっと確か後の聞いてないのは…《克服者》と《達成者》だっけ」
『A.あとはその二つですか。では《克服者》からの説明でよろしいでしょうか?』
「うん。よろしく頼むよ」
まぁ、だいたい察しは着くんだけどね。《克服者》が発動した時ので。って思ったけど僕、女神様に教えてもらってるじゃん。昨日のことなのにすっかり忘れてた。
『A.《克服者》とは、所有している本人が壁に当たったと判断した時、その壁を乗り越えることができるとその報酬としてスキル、又はステータスがもらえる祝福となっています』
「うん。そういえば女神様に聞いたの忘れてたよ」
『A.そういえばそうでしたね。私が生まれる前でしたけど』
「生まれる前なのに分かるの?」
『A.マスターの記憶を見させてもらってますから。なんなら今までミザリー様の頭を撫でた回数とかも分かりますよ』
「うわ〜!やめて恥ずかしい!」
『A.回数は…29682「ストップストッープ!」なんですか。まだまだ桁があるのに…』
「そんな恥ずかしいことはいいから!次!《達成者》について!」
『A.撫でた回数が十桁台…』
「いいから早く!」
や、やめて〜!もうその話を聞くのは恥ずかしすぎるから!
『A.ふふっ…え〜、では《達成者》とは…』
「笑ったな…?」
『A.いえいえ。そんなことはないですよ?それよりも説明しなくて良いんですか?』
「くっ……生意気な………お願い…しますよぅ!」
『A.では説明しましょう。《達成者》とは所有している本人が壁に当たったと判断した時、その壁を乗り越えることができるとその報酬としてアイテムがもらえるという祝福です』
「………………え?」
『A.ですよ?』
「《克服者》とおんなじ?」
『A.報酬が違うだけで、発動条件は同じですね』
「だったらひとまとめで説明せいやー!なんでいちいち分けたの!?そのせいで僕がからかわれてるじゃん!」
『A.そっちの方がマスターが理解しやすいかと』
「いや別に分かるけど!?すでに2回目ですからね!《克服者》の説明が!」
いやまずもって一回で充分覚えるからね!?こういうことって!
「そういえば、《拡張世界》を使いっぱなしだけどあまりウィンドウが出てこないね」
『A.最初にも言いましたが、ウィンドウは見たいものを注視すると出てきます。詳しく説明するならば、【視界に入った】ではなく【意識を注いでじっと見る】です。なので基本的には出ませんし、出てもウィンドウに意識を向けなければすぐに消えます』
「へ〜…使うのが怖かったけど、それを聞くと便利だと思えるよ」
『A.なんなら脳をいじってその記憶を無くせますが?』
「遠慮しておきます」
怖くても記憶は自分の大事な一部だよ。それを無くすのはちょっとね。
『A.祝福の説明は全て終了しました。他に何か聞きたいことはありますでしょうか?』
「う〜ん……あるような気もするけど、今はいいや。それよりも《拡張世界》でいろんなものを見てみたいかな」
『A.分かりました。ではまた聞きたいことができたらお呼びください、マスター』
「うん。ありがとね、アベル」
シュン…という音のようなものを残し、アベルは待機モード?らしきものになった。
「よし!とりあえずこの部屋のものを片っ端から見て行こう!このポーションは昨日見たから…じゃあ、この薬!」
[名前:ネッブル薬 効果:解熱 価格:1350ラリス 生産者:バーズ
葉に解熱効果のあるネッブル草をすり潰して水に溶かし、錬成した薬。飲むとゆっくりと効果が出始め、30分ほど経てば熱は引く]
「ネッブル薬って言うんだ…こっちに来てからは一度も病気になんてなったことないから知らなかったや。僕は裏の森で鍛えてるし、家族はもともと頑丈な方みたいだし」
あ、今気づいたけど今日は朝の特訓してないや。寝坊しちゃったからな〜……昨日?昨日は成人の式だから控えていたんだよ。疲れてる状態で行っちゃなんだからね。女神様とも会う約束してたから。
「閑話休題。つ、ぎ、は〜これにしよっと!」
[名前:牙剣 価格:5960ラリス 生産者:バンダンガ 特殊効果:風纏
朱風猪の牙を使って作られた片手剣。剣に鋭いカマイタチが纏われており、斬ると追加でそこをカマイタチが切り裂く]
「牙剣…僕が森の主を倒した証に村の鍛冶屋のバンダンガさんに打ってもらった片手剣。朝の特訓は危ないから木剣でやっていて使ってないんだけど、いつかこの剣で大きい魔物を狩ってみたいな」
あの時は楽しかった…初めての大物との戦いで…って違う違う。その話は今はいいんだ。
「さてつぎは〜……これっ!」
僕はその調子でどんどん部屋のものを見ていった。ミザリーの私物を除いて。部屋のものをほとんど見終わった頃。
コンコン…
「クリート?入ってもいいか?」
「父様?いいよー」
ギイィィ…
「どうしたの?父様。やけに暗いですけど」
「実はだな、クリートはもう成人しただろ?」
「はい。昨日しましたね」
「それでな、クリートにはこの店を継いでほしいと思ってるんだ」
「ほんとですか!」
「お、おう。食い気味だな…それでだ、今日から父さんが知っている薬の知識を教えたいと思いまーす!」
父様の表情が暗い顔から一変。一気に明るくなった。
これは僕に対するドッキリみたいな感じなのかな?どっちにしろ教えてもらえるなら嬉しいけどね。
「全部ですか?」
「ああ!全部だ!父さんの持ってる薬の知識を全部クリートに教えてやるぞ!」
「やったぁ!父様大好きです!」
僕は父様に抱きついて嬉しさを表す。
「グフッ…かわいい…」
その行動は親バカである父様には絶大なダメージであったようだ。
「気を取り直して、早速初めて行こうと思うが、クリートくん!準備はいいかね?」
「はい!バッチリです先生!」
「先生……よーし!張り切っていくぞー!」
「おー!」
うん。自分でも思うけどめっちゃテンション高い。正直乗りすぎちゃったよ。楽しいからいいんだけどね!
そして父様による、薬屋の講座が始まった。
「さて、クリート。知ってるとは思うが、初心に戻ってまた勉強するとしよう」
「はい!」
「いい返事だ!ではまず、薬屋にとっても生活にとっても重要な魔法についておさらいしよう!」
「分かりました!」
父様はどこからか黒板のようなものを引っ張り出してきて、そこに絵を描いていく。
「クリートも使えるから知っていると思うが、魔法には魔力というものがある。この魔力には様々な適性があり、人によって上手く使える魔法が変わってくるんだ」
「はい!父様は何の魔法が使えるんですか!」
「いい質問だクリート。父さんはな、土と風の適性があるぞ!」
「二つですか?」
「ああ。基本的には適性は一つなんだ。二つの適性がある人を『ダブル』、三つの人は『トリプル』のように持っている適性が多くなるにつれ人は少なくなっていくんだ」
「じゃあ父様はダブルなんですね!すごいです!」
「いやいや、父さんなんてまだまだ。ママはもっとすごいぞ!基本属性六つを全部の適性を持っている『六大属性適性者』なんだ!」
「六大属性適性者ですか?」
僕はわざとらしく尋ねる。初心に戻ってるからね。
「そうだ!魔力にはな、火・水・土・風・光・闇・治・呪・無の九つの属性があるんだ。治、呪、無の三つは基本的には適性持ちがおらず、あまり治以外は知られていないことが多いんだ」
「そうなんですか」
「逆に、火や水、他の四種は適性持ちが多く出て存在が広く知られ、研究も進んでいるんだぞ!そしてその六つの属性を適性として持って生まれてくる子が六大属性適性者といわれ珍しいんだ」
そうなんだ。ん…?待てよ、そういえば僕、どれが適性なのか知らないや。
「父様!僕が持っている適性を知りません!」
「お、そうか。そういえばまだだったな。適性を知るにはな、ある魔道具を使うんだ……確かすぐに使えるようにここら辺に…あった!」
父様が部屋の隅の荷物置き場になっているところから何やら水晶の玉のようなものを取り出してきた。
「これが適性を調べる魔道具でな、名前を確か、『マジックフィーラー』とか言うんだっけか」
「マジックフィーラーですか?魔道書入門編で読んだことがあります!」
「はは。たしかに書いてあるな。じゃあ使い方はわかるか?」
「はい!確か、玉に手をかざして魔力を流すと…」
パアァ────!
魔力を流すとそれに反応してマジックフィーラーは輝きだした。
この色は…白?
「父様。なんか白色なんですが…」
「白!?まさか……本当だ。…………クリート」
「な、なんでしょう…?」
「クリート、お前……ママと同じ六大属性適性者だぞ!!」
「…………えええ!?」
僕が母様と同じ六大属性適性者!?思い出してみれば、魔法を覚え始めた頃、何の抵抗もなく全部の魔法が発動できたような…
これは…めんどくさいことになりそうだぞ…
今月中にもう一つ書けるかなぁ…