3.やりすぎ注意(ラブラブもね!)
さて、小瓶を作ることになったんだけど…うまく作れるのかちょっと心配……
「早速庭へ行くぞ!」
「おー!」
そんなわけで家の庭へやってきた。
一般的にこの村の家庭は庭が広い。家が隣同士でも、大体横に向いた車3台分空いている。
なので、少しぐらい大きなものを作っても大丈夫というわけだ。
「よし。何すればいい?」
「えっと…まずは『粘土生成』で粘土を作って…」
「土魔法だな!父さんの得意分野だ!『粘土生成』!」
「あっ…!ちょっとまっ…!」
どのぐらいの量を作るか言おうとした途端に、父様が勢いよく作ってしまった……量にして100キロくらい。
うわぁ…使い切れるかなぁ……
「ど、どうだ…父さんの力は…ハァハァ……これで足りるか……ふぅ」
「足りるも何も、こんなに使わないよ…」
「えぇ……父さん頑張ったのに…」
「必要な量を言おうとしたのに、いきなり勝手にやるのが悪いよ!」
「……はい」
「もう。どうするのこれ…」
「どうしましょ」
今のところ、使う粘土の量は窯を作るのにに三十キロ、器に五十キロの予定。十キロぐらいを家用の皿とかにするとして……頑張っても五キロは必ず残るかな…
残りの粘土をどうしようか父様と迷っていると…
「にいさま〜!とうさま〜!ただいまー!」
「旦那様、クリート様。ただいま戻りました」
「おかえり。ミザリー、リベネさん」
「おぉー!愛しのミザリー!お友達とのピクニックは楽しかったかい?」
「うん!いろんなお花がいっぱいあってきれいだったよ!」
僕の妹のミザリーと、メイドのリベネさんが帰ってきた。
ミザリーは僕の二つ下の5歳の妹。とにかくかわいい。もうこれ以上ないってくらいかわいい。あと、頭が良くて運動が得意。魔法も火と水、風の三つが出来ちゃう。
リベネさんは僕の家──薬屋『癒しの薬』の専属メイド。家事から僕たちの世話、父様の薬の手伝いまでなんでも出来る。万能超人。
今日、二人は家の裏にある山にピクニックに行っていた。きれいなお花畑が有名な場所だ。
「リベネ、ご苦労様。帰ってきてすぐで悪いけど、ママの方を手伝ってくれないか?ご馳走を作るって張り切っているんだ」
「分かりました。ではミザリー様、お手を洗いに行きましょう。今日のおやつはアップルパイですよ」
「やった〜!ミザリー、アップルパイすきー!」
「それでは」
ミザリーとリベネさんは家の中に入っていった。
アップルパイか……たしかに美味しいんだよね。パイの皮がパリッとしてて、中のガップルがほんのり甘くて……
……アップルパイって名前違うんじゃ?
───っと、話がそれちゃった。さて、どうしたものか。余っちゃう予定の粘土。
「……ええい!悩んでいてもしょうがない!とりあえず窯と器を作ろう!」
「お?考えるのをやめちゃったか?とりあえず器作りは父さんに任せろ!」
「じゃあ、窯は僕が作るね」
僕と父様で係を分担して、とりあえず作っていくことにした。
「「《粘土操作》」」
簡単に作るにはこれを使わなきゃね。手でいちいち作っていたら時間がかかりすぎちゃう。
で、黙々と窯や器を作っていく事1時間……
「父様、飽きた」
「確かにそうだな」
「窯作りは簡単だったけど、器作りは作業が細かくてめんどくさいです」
「飲み口の部分とか難しいよな」
そう、窯は簡単だったのだ。火を入れる場所と棚を作って、《熱風乾燥》で乾かして固めればいいだけだったから。
問題は器の方なんだ。これがもう大変。《粘土操作》は結構な集中力を使って行使する魔法。流石に僕でも、一度に作るのは5個が限界だ。父様は一度に6個作っている。
流石父様!でもあと二十キロも残ってる…
と思ったら一気に作り始めた。そんなにやったら……ああ、やっぱり…
「クリート〜、パパ〜。あら?なにかしらこれ?」
「か、母さんか…水を……」
「どうしたのパパ!?カラカラのミイラみたいになっちゃってるじゃない!水ね!《水生成》!」
「がボッ!ちょ…!やりす…!」
魔力の使いすぎでカラッカラになって弱っている父様。そこに母様の特大《水生成》が襲いかかる!
「ガボボボババボベバ!!」
「きゃ〜!ごめんなさいパパ!今消すから待ってて!」
「はぁ…今日もやった。と…これで連続85日目。お、新記録だ」
いつもは強くて凛々しい母様だけれど、慌ててしまうと普段できる事ができなくなり、てんでダメダメになってしまう。
文字が書けるようになってからは毎日カウントしている。たまに失敗しない日があるので意外と最高記録が短い。
「はぁ…はぁ…死ぬかと思った……」
「ごめんなさい…私ったらほんと慌ててしまうとダメなの…」
「げほっ…大丈夫。ママはいつも完璧すぎるけど、たまに失敗したほうがかわいいんだよ」
「そんな…かわいいだなんて……もう♡」
「ママ…」
「パパ…」
あー…また始まったよ。こうなったら叫んで呼んでもしばらくは気づかない。夕食前の腹減り時にやられてどれほど苦しかった事か…
父様と母様はほっといて、僕は少しでも終わらせておこう。もうこのラブラブを見るのも飽きちゃったよ。
「父様〜早く作ろ〜よ〜」
「……ハッ!私は一体………そうか、いつのまにかラブラブしてたのか。ママ、今はここまでにしよう。やらなきゃいけない事があるんだ」
「そうね。器を作るのに集中しなきゃね」
「え?これは私たちでやるからママはいいよ」
「リベネさんが戻ってきたもの。私がいたら邪魔しちゃうわ。ミザリーは疲れて寝ちゃったもの。ね?いいでしょ。パパ」
「でもなぁ…」
母様が父様にすり寄ってお願いしている。この色目は父様に効果抜群の技だ。
───ようは暇って事なんだな。
「暇なのよぉ〜」
「そっか、暇なのか。ならママにも手伝ってもらおうかな」
「まっかせなさ〜い!」
「母様の魔法は凄いから助かるよ!」
それからは残りの分を終わるのは早かった。
母様が一度に20個もの器を作っていくので、残りの二十キロがあっという間になくなった。
器が出来上がっていく様子は見ていてとてもすごかった。地面の上でも作るのが難しいものを空中に浮かばせて完成させていった。
「母様すごい!一気にあれだけ作っちゃうなんて!」
「ふふ!そうよ!母さんはすごいのよ!」
「また魔法教えてよ!」
「また今度教えてあげるわね。それで、この器どうするの?」
「これから窯に入れて焼いていくんだよ。
窯はクリートがつくってくれてるよ」
「頑張ったよ!母様!」
「すごいわ!クリートにはご褒美にぎゅーってしてあげちゃう!」
わーい…母様のハグだー……しまった、こんな事なら言うんじゃなかった…
母様が勢いよく僕にハグをしてきた。母様の爆発しそうな胸に僕の顔は埋もれる。
いや…嬉しいのは嬉しいんだよ。僕だって男だもん…こんな大きな胸に埋もれるなんて前世では考えられなかったものだよ。でもね…
「…………きゅ〜……」
「あら!?クリート!?どうしましょう!クリートが気絶しちゃったわ!?」
「大丈夫だよママ。いつものことじゃないか」
「クリート………」
僕の母様はハグの要領が悪いんだ……こうして前から抱きつかれてしまうと胸で息ができなくなり、解けないと最終的には気絶するまで抱きつかれたままになってしまう。
気絶してしばらく経った頃…
家の二階で一人が目覚めた。
「……ぷはっ!…………またこの感じか…」
「……やっと起きたわ!」
「にいさまだいしょうぶ〜?」
「…うん。もう大丈夫だよ、心配させてごめんね」
「よかった〜!」
「ごめんなさい……クリート…前も気をつけるって言ったばっかりなのに…」
「母様はいつものことだから別にいいよ。僕も甘えてるもん」
「…そうなの?」
「うん!僕は母様のこと大好きだよ!だからハグだって嬉しいんだ!」
「よかった……」
「にいさまにいさま!ミザリーは?ミザリーはどうなんです!」
「ミザリーのことも大好きだよ」
「わーい!ミザリーもにいさまのことだ〜いすき!」
かわいい……ああ、癒される…
そんなこんなあったけれど、器のことはもう大丈夫らしい。父様が作った器を窯で火に入れてくれていると母様が言っていた。
「奥様、クリート様、ミザリー様。お食事の準備ができました。下でお待ちしておりますので、冷めないうちにどうぞ」
「あら、もうできたのね。ありがとう、リベネさん。すぐにいくわ」
「もったいなきお言葉です」
「にいさまかあさま!はやくいこ!」
「わかったよ。そんなに引っ張らなくてもご飯は逃げないよ」
とは言ったものの、実のところ僕も走っていきたいほどうずうずしている。
「ふふ。みんなでいきましょ」
「「はい!」」
僕と母様とミザリーで一階へ降りていった。リベネさんはいつのまにか下へ降りていた。ミザリーと話していたとはいえ、全く物音がしなかった気がするぞ…?
ご馳走はとてもすごかった。テーブルいっぱいに並べられたいろんな料理に舌鼓をうちながら、料理を楽しんでいった。
美味しすぎてちょっと食べ過ぎちゃったよ。あ〜至福のひと時だった。
僕がソファーに座って愉悦に浸っていると。
「それで、これからどうするの?あ、ありがとう。リベネさん」
「とりあえず、器が出来上がったら少しずつ売っていくつもりだよ。ん〜…美味しい」
母様と父様が今後の薬について話し合っている。ちなみに飲んでいるのはコーヒーもどきだ。僕がボソッと一言言っただけでリベネさんが見つけ出し、母様たちがはまって自宅で栽培までしちゃったコーヒーもどきだ。
「値段はどうするの?」
「そうだね。大銅貨5枚程度が妥当かな…」
「まずは村長さんに渡して効果を試してみるのはどうかしら?そしたら薬の信用も出てくるでしょ?」
「そうだな!ママは天才だ!」
「そんなことないわ…パパだってすごいわよ!」
「ママ…」
「パパ…」
はいはい。いつものラブラブに突入ですね……
………………もう寝よ。
父様と母様を置いて僕は二階の自分の部屋へ向かった。
今日はなんか色々あったなー…
よく眠れそうだ…………おやすみ…
ツッコミと魔力を多く使ったので想像以上に疲れていたんだろうか、ベットに入った瞬間に眠りに落ちていった。
…………………………………………
……………………………
………………
…
「ここは…どこだ…?」
僕が気がついたのは一面真っ白な部屋だった。
あれ?僕寝たはずだよな?気がついた?あれ?
状況が理解できず、混乱していると…
「どうやらうまく転生できたようですね」
「あなたは……僕を転生してくれた女神(仮)様!」
「あなたが幸せそうで良かったです。もしも変なことになっていたらと思いましたけれど、その心配は無用だったようですね」
「はい!毎日楽しく生活させてもらってます!」
「どうやら心の傷も癒えたようですね。これは吉兆です」
相変わらず女神(仮)様は光の粒で構成されているので顔がよくわからないが、微笑んでくれているのがなんとなく感じ取れた。
なんか僕のこと心配してくれてたみたいだ……ご心配をおかけしてすいません。
「あの…一つ聞いてもよろしいですか?」
「なんでしょう?」
「転生時のパプニングの後…大丈夫だったんですか…?」
「そのことですか…」
女神(仮)様が屈み込み、指で地面をなぞり始めた。
あ、屈み込んだ。なんか落ち込んでるっぽいな…
「あの後大変だったんですよ…?他の神にバレてとても怒られたし、しかも300年の転生実行権利の剥奪まで食らったんです…せっかく貯めてたポイントも3割持ってかれましたし…」
「さ…300年!?」
「あ、そこはいいんです。私たち神にとって100年なんてあっという間に過ぎますから」
「え…じゃあなんでそんなに落ち込んでるんですか…」
落ち込んでる理由が全く分からない。あれか?ポイントとかいうやつかな?
「私たち神にとって一番取られると痛いのがポイントなんですよ…」
「なぜなんですか?」
「こんなこと言っても使えないからいいでしょう。こほん…えー、私たち神にはそれぞれの仕事をこなすともらえるポイント、『神ポイント』があるのです」
あ、なんか説明始まった。しかも結構長そう…
俺はそれはもう必死に話を聞いたよ。今後使えるわけでもないのに……
なんかさ、かわいそうじゃん?僕のせいでこうなったんだし、せめてものお詫びとして話を聞いたんだよ。いや〜長かったね。二時間くらい説明されたよ。
「───というわけで、私たち神のとってはこの『神ポイント』が大切になってくるのです」
「要約すると…『神様たちにはそれぞれの仕事をこなすともらえる『神ポイント』というものがあって、その神ポイントを使って生活に必要なもの、嗜好品などを揃えることができる。『神ポイント』は一定以上貯めることで神格と交換することができ、多くの神はそれのために頑張っている。しかし、『神ポイント』は貯めるのが難しく、何か違反を起こすとすぐに罰として取られてしまうので神格を獲得できるものはほぼいない』……まぁこんな感じですか?」
「そうよ。他にも色々細かいところはあるけど、そこまで教えても意味がないですからね。あぁ…あと少しで神格まで行けたのに…」
なんか…すみません……
哀愁漂う女神((仮)って書くのめんどくさいからつぎからなしでいいや)様の背中になんだか罪悪感を感じてしまう…
「あの…『神ポイント』をもらえる仕事ってどのようなものなんですか?」
「あー…この際ですし話しましょう。まず、『神ポイント』を獲得できる方法は3つほどあります。まず1つ目に、ただ単にいわれた仕事をこなしていくことです。これは1番もらえるポイントが少ないですが、確実に貯めることができます」
「ふむふむ…普通なら妥当な手段だ」
「2つ目に、10年に一度行われる宝くじを買って当てることです。これはあなた方の前世と同じような仕組みです。ですが、当選確率が格段に低くなっています。詳しくは知りませんが、数の位で不可説不可説転とかまで行くとかなんとか。なので実質当てるのは宇宙のチリぐらいの確率ですね」
「本当に運試しですねー…………不可説不可説転!?10の3721838388197764444130659768784964812895乗の!?」
「よく知っていましたね。というかよく覚えられましたね…」
「いやぁ…前世は寝てばっかりで暇だったもので…」
「え〜…こほん。気を取り直して3つ目です。これは一番いいかもしれない気がするかもしれないと思っているかもしれないでもやっぱいいかもしれないかもの方法です」
「結局『かも』なのね…」
なんか遠回しすぎてわけわかんなくなるな…
大体なんだよ…いいかもしれない気がするかもしれないと思っているかもしれないって…
───めんどくさすぎだわ!
「この方法はあなたが実際に体験したことです」
「と、言いますと…転生ってことですか?」
「飲み込みが早くて助かります。はい、その通りです」
よっしゃ、あってた!……でもなんで転生がいいかもなんだろう?
「転生とは魂に刻まれた記憶をそのままに、新しい体に宿すこと。その新しい体に宿らせる時、私たち神は少し力を使うのです。異世界に転生するのならなおのこと。そして、その転生したものが世界を救うなどの大きな功績を挙げると、そのものに宿っている神の力を逆探知し、転生させた神を見つけ出してポイントを渡すのです」
「へぇ〜…そんなことが」
なんか色々あるんだなぁ…神様にも。
「ですが、この方法には欠点があります」
「え?なんですか?」
「それは、上級神からしかこの方法を使えないということ」
「なぜですか?」
「それはそうよ。もしも下級神がこれをできるようになってしまったら、いたずらに転生させる神が増えるわ。ただでさえ、下級神は神精から成長したばかりの子供なんですから。もしもできるようになったら大変なことになるわ」
「なるほど…」
確かにそうだね。子供の神が人の魂を使って遊んでしまったりでもしたら世界が大変なことになってしまう。
「上級神でさえ転生の許可をもらうまでは大変なのよ。まぁ、私は一発で手に入れることができたけど?他の神なんて500回落ちたとか言ってたわ」
「うわぁ〜……そこまで落ちるか」
「そんなことするならコツコツと仕事して貯めればいいっていう話よね。ほんと」
「確かにコツコツと貯めたほうがいいですよね。受けるのにもポイント使うんでしたっけ」
「そうよ。500回とか、もう神格まで10分の1までいってるじゃないの」
500回で10分の1か…結構大変なんだな……
というかだんだん女神様の話し方に威厳がなくなってきている気が……なんか友人と話してるみたいになってきてる…
「はぁー…気長に溜まるの待とうかなぁー」
「頑張ってください…」
「あ、もう朝になるわね。色々話し込んじゃったけど、このことは秘密にね」
「分かりました。でも、なぜ僕はここに呼ばれたのです?」
「あれから7年経つし、どうなってるか診断よ。死亡時よりも断然明るいし、大丈夫だったからおしゃべりの方になったけれど、暗いままだったら色々聴きこむ必要があったのよ」
「なるほど。分かりました、また会える日が来ますのでしょうか?」
「そうね…15歳くらいにまた呼んでみるわ。それまで頑張ることね」
「はい。それでは頑張って生きさせてもらいます。女神様にもらった新しい命で」
「そう、頑張りなさいな。あ、ついでに来年成人でしょう?祝福をあげるわ」
「いいんですか?」
転生するときに間違えてやって怒られたばかりでしょうが。大丈夫なのかな?
「いいわ。どうせ今の私は注意喚起だけで済むもの。手が滑ったとでも言えばなんとかなるわ」
「そんな簡単な嘘で…」
「まぁ、とりあえず。祝福はあげるわ。成人の時に確認することね。もう日が明けるわ元気でね」
「はい!女神様、ありがとうございました!」
「最後に女神らしく一言、あなたの出会いに幸あらんことを。それじゃあね〜」
女神様の言葉を最後に白い部屋がさらに白くなっていった。
そして僕は現実の世界で目が覚めた。本当に朝だ。
「成人の時がたのしみだ!」
そして来年の成人の式を目指し、今日もまた新しい一日を始めるのであった。
全然最終話とかじゃないですからね!流石に3話で終わるのは早すぎる!まだまだ続けますよ!是非とも呼んでくださるとありがたいです!
不可説不可説転をわからない人はネットで調べてみるといいかも。ちなみに作者もネットで調べました。こんなものがあるとは知らなかった……
誤字・脱字がありましたら、その話数と訂正場所を描いてくださるとありがたいです。
感想、コメントも書いてくれると作者が喜びます。ぜひよろしくおねがいします。
それではまた次の投稿で!
(月2で投稿になっちゃうかなぁ…)