23.用件
書く期間が空きながらの物なので前後の話が合っていない可能性があります。誤字・脱字はいつものこと。文法もおかしいかもしれません…
「んん…まぶしっ……」
先ほどまで暗い部屋にいたので夜目になっていた瞳に強い光が差す。
「今度はどんな用で呼ばれたんだ…?」
そう、ここはあくまで呼ばれて来れるところ。一度試してみたら無理やり入れたなんてそんな事は知らない。
この眩しいほどの白一色の世界、ここは神様たちが集う場所────神界だ。
今まで何回もここに来ているのでほぼここのシステムは理解している。
「ここは…ラフィーメ様の部屋か」
女神ラフィーメ。新しく名付き神の一員となった女神。深海での相談役を請け負っており、日々いろいろな神様の愚痴や悩み事を聞いている。
ちなみに読んでいる諸君は知っているかと思うが、この女神が名付き神になるまでにクリートが何度か巻き込まれている。
もはや名付き神にしたのはクリートのおかげとまでも言えるかもしれない。……やっぱ違うか。
「肝心のラフィーメ様がいないけど…探してみようかな。『【呼出】システムウィンドウ』」
ここ、神界では頭の中で想像すればそれを具現化することができる。だが、それは神様たちの専売特許だったようで、何度かこっちに来てやっていたら禁止されてしまった。
なので、他の方法はないかと聞いてみたら【呼出】システムについて教えてもらった。
この【呼出】システムとは、最初に【呼出】と唱えて次に欲しいものを言えば具現可能だった場合に呼び出してもらえるシステムだ。まあ、名前そのままのシステムだね。
「えっと、女神ラフィーメの位置は…え〜っと……」
まあ、この【呼出】システムを教えてもらい色々と試してみた結果、ここ──神界の管理権限みたいなものを獲得してしまったみたいで…システムウィンドウというもので基本的になんでもできるようになってしまった。
管理権限の例の一つが対象の位置情報を確認できるという…まあ、全神についているGPSみたいなものだ。
「あ、意外と近くにいる。位置的には…大風呂かな?」
管理権限の中には色々チート的なものもあるけど、それはまぁ…そのうち話そうかな。
で、肝心の呼び出した女神に関してだけど…
大浴場にいた。
「呼び出しといて自分はお風呂に行ってるのかぁ………勝手にくつろいでおこう…『【呼出】ティーセット』」
僕はラフィーメ様が戻ってくるまでお茶して待ってることにした。
神界のお茶っておいしいんだよね〜。一度飲ませてもらってからお茶にはまっちゃった。現世でもティーセットを揃えるほどに。
そして時間は流れ……
「あ、もう来てた。待たせたわね〜」
約1時間後、ようやく戻ってきた。
「ええ、全く。一時間待たされましたとも」
「え〜?そんなに経ってた?お風呂入ってると時間分からなくなるわ〜」
「そりゃまあ?何千何万年と生きてる神様から見れば1時間なんてすぐですよね。ええ」
「ごめっ、ごめんなさい!こっちに来るにはまだ時間があると思ったの!」
「へ〜…だから呼ぶだけ呼んでおいて自分は優雅にお風呂ですかそうですか」
「それは本当に申し訳ないと思ってるわ!でもあなたもお茶して待ってたみたいじゃない!ティーセットにお茶菓子まで揃えて!」
「それはそれ、これはこれでしょうが!こっちは待たされるから仕方なく暇を潰していただけ!待ってたと待たされてたは別物!お分かり!?」
「ぐっ……今回に関しては何故か強気ね…」
こっちが自分から待つのはいいよ、うん。こっちの用事で勝手に待ってるわけだし?だけど待たされるのはあまり許せない。
そっちから呼んだのに何の声かけもなしに待たせるのはダメでしょ!?まだ何か一言書き置きとか何か言ってくれれば喜んで待ちますとも。1時間や2時間ぐらい入院してた頃の手術待ちに比べればカップラーメンを待つぐらいの感覚ですとも、ええ。
「分かった!?こっちから呼んだなら呼んだ人は待たせない!!いい!?」
「はい…」
「声が小さい!」
「はい!!分かりました!人を待たせないようにします!」
「はい、よろしい」
「私の方が立場…上なのに……あれ…?上だよね……?」
熱くなってしまった。入院初期に何度か手術待ちでイライラした記憶があるからつい爆発してしまった。
ラフィーメ様はゆっくりとこっちへやってきて椅子に座った。
「それで、今日は何のようで呼び出したんですか?」
「ようやく解放されたわ…ええとね、今回ここに呼んだことについてなんだけど…」
「はい」
「実は……あの二人についてで…」
「はい」
「その〜…何と言いますか…」
「はい」
「聞いても怒らないでよ…ね?」
「どうせそんなことだろうと思ってましたが?で、内容は?」
「稲葉さんと…夏奈ちゃんの帰還方法が…分かりません……でした…………」
「はぁ…」
僕はため息を吐きながら椅子から立ち上がる。
「違うの!!私も精一杯探したのよ!他の神様にも聞いて回ったりしたの!でもみんな知らなかったのよ!」
「…………」ジト〜
「他の神様もこんなこと体験したことがないって言ってたの!神界にとって初なのよ!だからどうしたらいいのか全然分からなかったのぉ!」
「初めてねぇ…」
「そうなのよ!だからもう打てる手がないのよ…」
「分かった。もうこれについては自分で考えてみるよ」
「ごめんなさい…一応こっちでも探し続けてみるわ…」
これでもう神界で情報を得ることはほぼ無理に近い事が分かった。
とはいえ、結構頑張って探してくれていたみたいなのであまり怒る気もしないしな…
「まぁ、頑張ってくれてたのは伝わってきたよ。ありがとう」
「クリート君…!」
「それはそれとして、見つけられなかったことについて罰を与えないとねぇ?」
「そ、そんなぁ…というか私の立場低くなってるぅ…」
「では、罰を言い渡す。『今行っている調べものを一時的にやめ、休養を取れ』」
「はい……って、え!?今なんて!?」
「だから、今やってる勇者に関する調べものをやめて、休養を取れって言ってるの」
さっきは怒ったけど、ぶっちゃけ女神様の顔を見ると目の下に隈が出来ていたり、少しやつれて細くなっていた。寝る間も惜しんで数多いる神様たちに聞きに行ってくれていたのだろう。
そんな苦労をしてくれたのに仇で返すわけにもいかないし、何より神様といえど休みもなしに働き続けさせているなんて、少し居心地が悪いと思った。
だから何としてでも休んでほしくてこんな形になってしまった。
「これから一ヶ月間、勇者については調べなくてもいい。耳にしたらそれについて教えてくれるぐらいで僕はかまわない。しっかりと休んでそのあとまた過度じゃない程度にまた調査を始めてくれ」
「……分かりました。勇者についての調査は一時的に休みます」
「よし、じゃあもうこの話はおしまい!他に何か報告する物とかはないの?」
いつまでも辛気臭い空気は嫌だからね。話を変えよう。
勇者に関することを探している間に少しぐらい違うことも耳に入ったのではないだろうか。
「あ…うん。そうね、そうしましょう。ついでに上下関係的なのも戻しましょう。ええ。それと、他に聞いた話だけれど……あまり大きなことはなかったわね」
「そうですか…」
「あ、でも少し気になることはあったわね」
「気になること?」
「ええ。あなたの世界と隣の世界線なのだけれど、不穏な噂が流れていてね」
「不穏な噂…?」
それは良くないかもなぁ……たとえ世界線?が違っても神様が言うことだから間違いはないのだろう。
「そうなのよ。なんでもいくつもの街が同時に消えたって話なのよ」
「……?それはあり得なくない話なのでは?」
「普段ならそうなのよ。でも、おかしな点は事前に前兆が全くなかったって点なの。普段はどこかの国が潰そうと会議をしてたり、国を滅ぼれる程の実力を持っている人が行動してるのが神界から分かるの」
「……でも今回はそれがなかったと」
「ええ…こんな事は過去振り返ってもあまりないのよ」
いくつもの街が前触れもなく同時に消える…ちょっとこれは不安だな……
「あまりないってことは過去にもこんな事例が?」
「ええ、5000年ほど前に一度あったわ。その前にも2、3回程度あったみたいだけどその頃まだ私は生まれていないから分からないの」
「5000年……ちなみに世界線はどこで?」
「そうね…あれは────ん?言われてみればあの世界線……今回の隣……?」
「…っ!5000年前にその事件を起こしたのは!?」
「ある一柱の邪神だったわ。なんでも『証ありしものが存在するならばその証を壊すのが自分の役目だ』とか言って消え去ったわ…」
「もしかして…!その壊された世界、特殊な勇者とかを送ってませんか!?」
もしかすると…嫌な考えが的中してしまうかも知れない。
「え、ええ。それらの世界は当時、特級危険判定を受けていたから性能の高い転生者を送っていたわ」
「その転生者に特別な能力とかは!?」
「確か二つ以上の祝福を与えていたわね」
「それによって何か体に現れる物とかは!?」
「確か、体のどこかにそれぞれの紋章が現れるはずよ。って、さっきからなんなの?矢継ぎ早に質問なんてして…」
「今ので分からないんですか!?力のある者!転生者の紋章!邪神が言った『証ある者』!これだけ言っても分からないんですか!?」
「…………?紋章…証……っ!!大変じゃないの!!」
「ようやく分かりましたか……すぐにでも対策案を考えなければ……」
複数の街が同時に破壊される…ではその壊される街の共通点は…?故郷…?活動している街…?あぁもう!情報がなさすぎる!
僕が何やら深刻そうな顔をして考え込んでいることにラフィーメ様は不思議そうな顔をしている。
「何をそんなに考え込んでいるの?あなたにはあまり関係のないことじゃない」
「え!?女神さまそれ本気で言ってます!?」
「え、ええ。たとえ隣の世界線だろうとあなたはあまり関係がないじゃない」
「はぁ…この人ダメだ…」
「な、何よ!」
この女神、いや、駄女神は自分でやってしまったことをもう忘れているらしい。
思っていたよりも酷すぎて呆れを通り越して悲しみが出てきた……
「女神さま…あなた、僕にやったこと覚えてないので?」
「あなたにやったこと?う〜ん……追加で祝福を渡したとか?」
「それのずっと前です。僕が初めてここに来たとき」
「それってつまり転生するとき…よ…ね……………」
言葉がだんだん詰まっていき、ついには震えまで出てきた。
ようやく自分が置かれている状況が分かったみたいだ。
「どどどどどうしましょう!?こここ、このままじゃまた世界が!!」
「とりあえず落ち着いて下さい」
「おおお落ち着けるわけないでしょう!?」
「起きてしまったことは仕方ないです、これからのことを考えなくては……」
「そそ、そうね…」
とは言っても相手は邪神………普通に考えてかなう相手ではない。だが、何もしないわけにもいかない。
「そういえば、話があっているなら僕にも紋章があるはずだけど……無い」
手や足、背中などを見える範囲で探してみてもそれらしきものは何もない。
「確かにあなたには無いわね…でも祝福は二つ渡してしまっていたし……何か私たちも知らない条件がある…のかしら?」
「紋章って何か魔力などの力で描かれたりするんですか?」
「ええ、でもたとえ魔力反射とかの祝福を持っていても貫通して描かれるはずよ。それに今までの転生者には手の甲や肩に現れていたもの」
魔力によって描かれ、体のどこかに現れる…
僕には紋章は現れていないけれど、あると思って行動したほうがいいかもな…
考え込んでいたその時、手の先が少し薄くなってきているのに気づいた。
「もう朝になるわね。とにかく対策は全神で話し合って探してみるわ。このままあの邪神を野放しにしていてはまずいもの、あなたも何かできそうにないか考えてもらいるかしら」
「もちろんそうしますよ。次の呼び出しはいつぐらいになりそうですか?」
「あまり分からないけれど一月経つまでには呼び出せると思うわ」
「分かりました。ではお願いします」
「ええ。また次の呼び出しまで待っていて頂戴」
そして僕の体は完全に透明となり次の瞬間、意識が飛んだ。
この小説はフィクションです。入院待ちに何時間もかかるなどは作者の想像なので実際とは異なる場合があります。というか作者は手術などしたことなどないので結構適当なこと言ってます